免疫とは
体内に侵入してきた異物を排除する体の仕組みを「免疫」といいます。
異物とは、ウイルスや細菌などの病原体や、体内で異常に増殖したがん細胞などを指します。つまり病気に罹らないように自分の体を守る仕組みが免疫で、免疫細胞と呼ばれる複数の細胞が血液と一緒に体内を循環してその役割を担っています。
免疫には、侵入してきた異物を食べる自然免疫と、特定の異物に対する抗体を作り、その異物に感染した細胞を殺す獲得免疫の2種類があります。自然免疫は昆虫などの無脊椎動物も含むさまざまな生物に備わっていますが、抗体を介した獲得免疫は人間や猫を含む脊椎動物が持っている能力です。
免疫力が低下すると病気に罹りやすくなりますが、免疫亢進といって強すぎてもアレルギーや自己免疫疾患になってしまいます。つまり、免疫力は低すぎても強すぎても健康を維持できません。今回は、免疫力を乱す影響のある要因を「免疫力が落ちる要因」として、ご紹介します。
免疫力が落ちる要因
1.合わない食事
完全肉食性である猫には、良質な動物性タンパク質が非常に重要です。逆に、炭水化物はあまり必要ではありません。このような猫にふさわしい栄養バランスではない食事や、その子の体質に合わずに消化不良を起こしてしまうような食事を長く続けると、免疫力を低下させてしまいます。
実は、免疫細胞の約70%は腸内に集中しています。猫の腸内にも善玉菌、悪玉菌、日和見菌がバランスよく腸内フローラを形成しています。猫にとって必要な栄養素を摂取できず腸内環境を乱してしまうことで、免疫に大きな影響を与えることになると考えられます。
2.運動不足
運動不足も、免疫力を落とす要因になります。犬のように毎日の散歩が必要なわけでもなく、1日の大半を寝て過ごしているように見える猫ですが、身体のつくりはハンターで、しなやかで柔軟性のある筋肉と俊敏性を備えています。
長時間の運動は必要ありませんが、毎日遊びとして擬似的な狩りを行わせることで、筋力を始めとした身体能力を維持させることが大切です。維持できないと代謝が落ち、血液循環が悪くなって免疫力が下がってしまうのです。
3.ストレス
ストレスも、免疫力を落とす要因の1つです。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、これらがバランスを保つことで、免疫機能を始め生きていく上で必要なさまざまな機能を有効に働かせています。
強いストレスがかかると、この自律神経が乱れてしまいます。猫は非常に縄張り意識が強く、環境の変化に神経質です。些細な変化もストレスの要因となってしまいますので、飼い主さんの配慮がとても大切になります。
4.加齢
動物である以上加齢は避けられないことですが、残念ながら免疫力を落とす要因の1つです。
免疫機能は、異物の認識から始まります。しかし老化でその能力が衰えてしまい、異物を異物と認識できなくなってくるのです。また老化した身体は、レベルは低いですが慢性的に炎症が続いているような状態になります。こうした状態も、免疫反応を起こりづらくする要因になっているといわれています。
5.睡眠不足
呼吸によって体内に摂り込んだ酸素の一部は、活性酸素という普通よりも活性化された状態になります。白血球から産生される活性酸素も、免疫機能の中で重要な役割を担っています。
しかし活性酸素の量が増えすぎると、正常な細胞まで傷つけてしまうようになります。それを防ぐために、動物には抗酸化防御機構というものが備わっていて、活性酸素の産生量が過剰にならないようにバランスを取っています。
活性酸素の産生を促す要因には、紫外線、放射線、大気汚染、煙草、薬剤などの他に、過度な運動やストレスも含まれます。そして、抗酸化防御機構を働かせるために必要なのが、バランスのとれた食事や適度な運動、そして十分な睡眠です。
猫には人間以上に長い睡眠時間が必要です。最近は飼い主さんの在宅時間が非常に長くなり、睡眠不足になりがちな猫が増えているともいわれています。愛猫には、落ち着いて寝られる場所を提供してあげましょう。
免疫力が低下した時にあらわれやすい症状
季節の変わり目は、激しい寒暖差等により免疫力が低下しやすい時期です。愛猫に下記のような症状が見られる場合は、免疫力が低下しているかもしれません。食事、ストレス、適度な運動、十分な睡眠などに配慮してあげてください。
- 口内炎ができている(固いものを食べたがらない)
- 柔らかい便が続いている
- 鼻水、くしゃみ、咳、目やになどが出る
まとめ
動物が生きていくために欠かせない自己防衛機構が、免疫です。感染症を予防するために定期的に接種しているワクチン注射も、この免疫の仕組みを応用した予防医療です。
免疫力の低下要因の1つに「加齢」があります。生きている以上、加齢は避けて通れません。愛猫に長く健康でいてもらうためには、この免疫力をできるだけ長く良い状態に保つことが大切です。
今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ愛猫の免疫力を維持できる暮らしに配慮してあげてください。