「忘れてはならない東日本大震災の教訓」〜大切な人と愛猫を守るためにできること〜#知り続ける

「忘れてはならない東日本大震災の教訓」〜大切な人と愛猫を守るためにできること〜#知り続ける

東日本大震災から11年。平和な日常が戻る中で懸念されるのが風化です。「あの日を忘れない、風化させない」「未来へと繋ぐ」をテーマに、大切な人と愛猫を守るためにできることをアンケートを交えてご紹介いたします。

突然襲ってきた大災害

青空

11年前の3月11日、その災害は突如発生しました。そう、東日本大震災です。

テレビで流れる現地の様子には目を疑うことしかできませんでした。当時被災地から遠く離れた場所にいた筆者でさえ、今でもあの瞬間のことは走馬灯のように蘇ってきます。

映像では丘や山、そしてビルなど高い場所に避難する人々の姿を何度も何度も見かけました。

中には猫や犬などのペットを飼っていた方も多く、一緒に避難したという飼い主さん達もたくさんいました。

やはり急な災害だったこともあり、色々と事前の準備が足らず避難の際に「困ったこと」が多かったそうです。

今回は、そんな災害時に家族である「猫」との避難で「苦労したこと」や「事前に準備しておくべきこと」など、実際に被災してしまった飼い主さん達に伺ってみました。

震災の被害者は人間だけではない

犬と猫

大きな災害が起こると、その焦点はどうしても人間に当てられます。しかし、震災の被害者は人間だけではありません。動物達もまた被害者であり、犠牲者なのです。

今回は動物の代表として「猫」にフォーカスを当てていきます。

地方ならではの猫事情

都市部では防犯のための施錠が欠かせません。玄関はもちろん、窓の鍵も意識しているでしょう。これが結果的に、猫の脱走防止に役立っています。

ところが、地方ではそのような習慣がないこともしばしば。ご近所さんが玄関のドアを開けて声をかけてきたり、庭先で談笑することが当たり前です。

この穏やかな生活環境が、災害時には裏目に出てしまいます。事実、東日本大震災でも、地震に驚いた猫が咄嗟に家の外へと飛び出して行方不明になったというエピソードが多数挙げられています。

室内で行方が分からなくなるケースも

外に飛び出してしまった猫がいる一方で、室内で行方不明になったというケースもあります。これには猫の習性が関与しています。

猫は何かに驚いたり、恐怖を感じると狭い場所や高い所に隠れる習性を持っています。愛猫の行方が分からず、一緒に避難できなかった飼い主さんも多かったと伺っています。

「備え」がなかった後悔

猫の避難においても、備えがなかった後悔が後を絶ちませんでした。まず、一緒に避難しようにもキャリーケースがなくて断念した飼い主さんもおられました。

避難所に移動した後も、猫用の飲料水やフードが届かずに苦労したというお話もありました。致し方ないことですが、災害現場では人命が優先されます。

「私と猫の被災体験」〜ねこちゃんホンポアンケートより〜

猫と女性

ねこちゃんホンポでは、被災地の猫の飼い主さんを対象にアンケートを実施いたしました。各質問に対して多かったご意見をランキング形式で紹介いたします。先ほどの項目と照らし合わせてご覧ください。

Q1:愛猫と一緒に被災した中で、一番困ったことは何でしたか?

  • 1位:ねこのご飯を用意できなかったこと
  • 2位:ねこのトイレが無かったこと
  • 3位:地震に驚いて家からいなくなってしまった
  • 3位:他にも人がいるので避難所に行けない

猫はこだわりが強く、環境の変化そのものが苦手な動物です。所定の場所のみで排泄するという習性も、非常事態においては困ったことでしょう。生きるために欠かせないフードが手元にないことも、大きな不安になったと思います。

その他にも、停電になって猫が室内で行方不明になってしまったこと(安否確認が困難だったこと)や、避難所の利用を断念したなどの困りごとがあったようです。

Q2:愛猫と一緒に被災した中で、役に立ったモノは何ですか?

  • 1位:買い置きのキャットフード
  • 2位:猫自身(一緒に居て癒された)
  • 3位:ストーブや毛布などの温められるもの
  • 3位:キャリーバックなど猫を運べるもの

キャリーバッグはまさに、先ほどの後悔に通ずるものです。避難するとなると、やはり猫が入れるケースは必須アイテムになります。

食料や防寒具は人間と同様ですね。やはりこの2つは必需品です。その他にも、ご自宅で避難生活を送る中でキャットタワーが余震時の避難場所として役立ったとのご意見もありました。

こういう非常事態では精神的な負担も大きくなります。猫の癒しに救われたというご意見からは、その存在の大きさと絆の深さを感じますね。

Q3:愛猫と一緒に被災した中で、備えておけば良かったと後悔したものは何ですか?

  • 1位:ねこのエサ
  • 2位:トイレ猫砂
  • 3位:水

この質問に対するご意見は、人間と共通する部分が多いです。特に猫の場合は、キャドフードが変わると食べてくれないという問題もあるので、いざという時に備えたいものです。

今では、猫用の簡易トイレも売られています。車で避難することを想定している場合は、予め収納しておくと良いでしょう。

避難所において、猫用の飲料水は入手が困難になります。ペット用の天然水もネットで購入可能なので、参考にしてみてください。

その他にもハーネスというご意見がありました。ハーネスというと犬のイメージがあるかもしれませんが、災害時にはキャリーバッグと連結させておくと脱走防止に役立ちます。

猫を取り巻く避難所の現状

キャリーに入る猫

先ほどのアンケートの中で「避難所の利用を控えた」というご意見がありました。災害時のマニュアルには「ペットの同行避難」を原則にしているものの、実際は現場の判断に委ねられていることが現状です。

ちなみに「同行避難」とは、ペットも一緒に避難所に連れていくことを許可することです。ただし、居住スペースは別々になります。

居住スペースも一緒になる「同伴避難」に比べるとハードルが低くなるように思えますが、猫が苦手な人やアレルギーを持つ被災者への配慮を考えると厳しい部分があるのかもしれません。

東日本大震災では、盲導犬ですら拒否されてしまったという痛ましいケースがありました。幸い、盲導犬に詳しい避難者による必死の訴えで事なきを得ることができました。いかに現場が追い詰められていたかが伺える事例といえるでしょう。

猫がいるご家庭では、避難所の位置だけではなく、ペットに関するシステムも確認しておく必要がありそうです。

同伴避難を可能にするヒント

テント

岩手県大船渡市では、実際に同伴避難を導入しました。予定では同行避難という方針でしたが、ペットを連れてやっとの思いで避難してきた被災者を目の当たりにして、同伴避難へと切り替えたそうです。

ここではテントを活用して、ペット飼養者・非飼養者を分ける対策を取りました。この取り組みは、他の災害においても役立っています。

「テント」というアイテムが、ひとつのキーワードになりそうですね。

猫と避難するうえで必要なもの

猫の避難対策

猫の防災グッズとして、優先的に揃えておいたほうが良いものを紹介いたします。(同行避難を想定
)

  • 頑丈なキャリーバッグ(積み上げることも)
  • ハーネス(脱走防止)
  • キャリーバッグを覆えるもの(猫が安心する)
  • フード特に療法食と水(5日分を目安に)
  • 常備薬
  • 食器(紙皿でも良い)
  • 飼い主さんと猫の情報(紙媒体が良い)
  • 愛猫と飼い主さんの写真(万が一に備えて)

猫は暗くて狭い場所を好み、安心します。少し余裕のある大きさのキャリーバッグと、それを覆えるブランケットがあるとパニックを防ぐことができます。(防寒具にもなります。)

尚、ウールサッキング(毛布を食べてしまうこと)を予防するために、中にブランケットやおもちゃを入れることは控えたほうが良いでしょう。普段はやらないという猫でも、ストレスがかかる環境下においては何が起こるか分かりません。

日頃の生活でできること

鼻を舐める猫

大切な愛猫を守るため、日頃の生活でできることを紹介いたします。

キャリーバッグに慣れさせる

通院時もそうですが、キャリーバッグを見ただけで警戒する猫も珍しくありません。有事に備えて、キャリーバッグも生活の一部に加えておきましょう。

中におやつを仕込んだり、トンネルのようにして遊ばせるだけで「楽しいもの」という認識を持つようになります。

首輪に慣れさせる

アンケートにもありましたが、猫の安否や居場所が分からずに困ることが想定されます。鈴は音が小さもので構わないので、できるだけ首輪に慣れさせておきましょう。

迷子対策をする

たとえ完全室内飼育でも、やはり迷子対策をするに越したことはありません。ネームプレート付きの首輪でも良いですが、確実なのはマイクロチップの導入です。

注射器を使用して器具を入れるため、少し抵抗があるかもしれませんが扱えるのは獣医師のみですし、安全性も担保されています。(その後のレントゲン、CT撮影にも影響しません)

避妊・去勢手術を受けておく

被災地において深刻だったのが、野良猫や野犬の増加です。これを防ぐ手立てとして有効なのは、やはり避妊・去勢手術です。

オス猫はスプレー行為や前立腺腫瘍、メス猫は乳腺腫瘍の予防にもつながります。繁殖を望ないのであれば、前向きに検討してみてください。

あの日の痛みが繋ぐ未来を信じて

紙飛行機

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というように、穏やかな日常が戻るに連れて悲劇的な出来事の記憶も薄らいでしまうものです。

世論調査の結果からも分かるように、風化の進行は進みつつあります。不思議と自然災害というものは、そういう油断につけ込んで来るものなのです。

せっかく建てられた石碑も、語り部が語る話も、忘れてしまっては意味がありません。「もう同じ悲しみを誰にも味わってほしくない」という願いを次に繋ぐことが大切なのです。

報道で特集されるような大きな活動ができなくてもよいのです。

「あの日を忘れない、風化させない」という意識を持ち、身近なところでその教訓を生かすこと。それだけて十分なのです。震災を知らない世代のお子様がいらっしゃれば、優しい表現を使いながら是非話してあげてください。

災害時には人命が優先され、フォーカスも人間に当てられがちですが、猫と暮らす飼い主さんにとって愛猫は大切な家族の一員です。普段の生活の中でできることを積み重ね、いざという時に守ってあげられるようにシミュレーションを行っておきましょう。

最後にあの日の出来事、味わった苦しみや痛み、そこから学んだ教訓が、未来永劫語り継がれていくことを願います。

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