猫の『治らない病気』とは?注意したい5つの病気と予防策

猫の『治らない病気』とは?注意したい5つの病気と予防策

猫には悲しいかな、「治らない病気」が存在します。動物医療の発達した今でさえなお、治療法が確立されていない病気があるのです。それはどのような病気でしょうか?予防策と合わせて確認してみましょう。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

1.猫エイズ

診察

猫エイズは治らない病気です。感染力は弱いものの濃厚な接触がある感染してしまうため、キャリア(猫エイズに感染している)猫を飼うのをしりごみしてしまう人が多い、という現状があります。そのため里親が見つかりにくいのです。

エイズというと怖いイメージがありますが、実情は異なります。

発症してしまった場合はさまざまな病気にかかり、大変になります。ですが感染だけで発症しないまま、一生を終える猫は多いのです。

実は感染症ではあるものの、よほどひどいケンカをしなければ感染もしません。交尾で移るケースもありますが、子猫の頃に不妊手術をしてしまえば安全でしょう。

治らない病気ではあるものの、発症しないように免疫力を高める生活を送らせてあげれば、実はさほど怖い病気ではないのです。

2.FIP

動物病院

FIP(猫伝染性腹膜炎)は、致死率が高い治らない病気として、長い間恐れられてきました。1歳に満たない子猫や老猫に発症しやすいといわれています。

コロナウイルスが原因なのですが、このウイルスは多くの猫が感染したことのあるウイルスです。通常であれば免疫によって退治できるため、治らない病気にはなりません。ただ何かの拍子に変異し、強毒性のウイルスになってしまうのです。

子猫や老猫は免疫力が弱いため発病しやすいのでしょう。これまでは治らない病気だったため、発病したときには泣く泣く諦めるしかありませんでした。

しかし、今この病気に一筋の光が差し込もうとしています!まだ国内では未承認の薬(MUTIAN(Xraphconn))で費用もべらぼうにかかりますが、使用すればFIPの完治が望めるのです。

よく、愛猫がFIPを発病してしまったため、治療費をクラウドファンディングで集める飼い主さんが見受けられます。治らない病気だったFIPは、治療費さえあれば治る病気へと変わってきているのです。ただ未承認薬であることに変わりはないため、効果や副作用についてはっきりしていないことは、念頭に置いておかなければなりません。

3.腎臓病

治療

猫がかかりやすい腎臓病も、治らない病気のひとつです。しかも、他の動物に比べ猫で突出して多い死亡原因でもあります。

猫は元々泌尿器系の病気にかかりやすく、一度かかると腎臓機能が回復しない傾向がありました。それは長年の謎だったのです。そして最後には、重度の腎不全になり、死に至ってしまいます。

しかし、東京大学の宮崎徹教授の研究グループが、「AIM」というたんぱく質が猫の腎臓病の治療に貢献できる可能性があることを発見しました。

猫以外の動物では、このAIMが腎臓内のゴミを掃除し、腎機能を回復させます。猫が腎不全になりやすいのは、なぜかAIMがあるにも関わらず掃除をサボっているからだと分かりました。

そこで、居眠りをしないきちんと働くAIMを雇って投与すれば、腎臓機能が回復する可能性があるのではないかと考えられています。腎臓病が治れば猫の寿命が飛躍的に伸び、将来的には30歳くらいまで生きられるのでは?と期待されています。

AIMがちゃんと働いてくれれば、大好きな愛猫と、一緒にいられる時間が今より倍くらいに増えるときが来るかもしれません。

4.猫白血病

検査

猫白血病も治らない病気といわれています。ケンカや食器の共有、グルーミングなどで感染します。

猫白血病により、リンパ腫など重大な病気にかかる場合もあり、注意が必要な病気です。感染しないよう完全室内飼いを徹底しましょう。

猫を保護したときには必ず動物病院で検査を受けてください。先住猫がいる場合、もし新入りが感染していると移してしまう可能性があります。

猫白血病を完治する方法は現状ではないため、基本的に対症療法しかできません。かかりつけ医に相談しましょう。

だがしかし、今この病気に一筋の光が差し込もうとしています!と言いたいところなのですが、残念ながら…。猫さんがのびのびとすごせる環境を整えてあげるのが今の一番の予防策です。

5.ライソゾーム病

病院

ライソゾーム病とは、不要な脂質や糖質を分解する酵素が欠けて、その結果老廃物が細胞内に蓄積し細胞の機能がうまく働くなり病気になってしまう病気です。「ライソゾーム」とは細胞の中にある小器官のひとつ。

生まれてすぐは何の症状もでないものの、生後2ヶ月くらいから動作に異常が現れ、盲目になったり意識障害が起きたりして、生後1年くらいで死亡してしまいます。

原因は、遺伝子の異常。遺伝性の病気です。ただ、発症するのが生後から少し経ってからのため、ブリーダーや獣医師が見落としやすい傾向があります。

もし可能なら、猫を迎える前に家族猫にライソゾーム病が出ていないかを、確認するとよいでしょう。

この病気は知名度が低く、知らない飼い主さんも多いのではないでしょうか?実は筆者も初めて聞く病名でした。猫にはこのような病気もあるのだと知っておくと、今後何かの役に立つことがありそうです。

まとめ

抱っこされている猫

治らない猫の病気…もし愛猫がかかってしまったら、ショックで立ち直れないかもしれません。筆者だったらかなり落ち込むと思いますが、一部の病気では治療法が確立されつつあるという現状もあります。希望は捨ててはいけないのです。

かかったときのことを考え不安になるより、今愛猫に何ができるかを考える方がよいのではないでしょうか?少なくとも、健康的な暮らしは予防につながるはずです。愛猫との貴重な時間を思う存分味わえるようにしていきましょう!

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