ごあいさつ
今回、まずは5回にわたって連載を書かせていただくことになりました幹細胞研究者・ビジネスモデルアドバイザーの古江美保です。しばらくお付き合いいただければと思います。
愛猫との出会い
2020年の11月に、チンチラゴールデンの4歳の女の子を里子として引き取りました。猫を飼うのが小さい頃からの夢でしたが、ようやく念願がかないました。
▲引き取って最初頃の様子。トイレの影に隠れてこちらをうかがっている様子。
引き取って最初の1週間は、ケージに入れたトイレの影に隠れて顔も見せてくれませんでした。今では私のカウチの真ん中に横たわり昼寝をするという女王様ぶりです。そんな我ままぶりもまた猫の魅力ですよね。
仕事が終わって、夜に愛猫の背中を撫でていると、仕事の疲れ、人生の疲れを癒してくれます。持病のメニエル氏病の症状がある時でも、愛猫を撫でていると良くなっていきます。
「うちに来てくれてありがとう」と言いながら、喉を撫でると、ごろごろと喉を鳴らして応えてくれます。猫には癒し効果がありますよね。おそらく、同意してくださる方は多いのではないかと思います。
▲引き取って1年が過ぎ、カウチを占領している様子。
世界のネコの飼育状況
現代社会において、ペットは世界中の人々にとってなくてはならないものになっているのではないでしょうか。どのくらいの人が猫を飼っているんでしょう?
そこで、どのくらいの人が猫を飼っているのか調べてみました。
欧州ペットフード連盟(FEDIAF)が2020年に発表した年間数値によると[1]、EUにおいては世帯の38%にあたる8800万世帯が少なくとも1匹のペットを飼育しています。
猫約1億1000万匹、犬約9000万匹、鳥約5200万匹、小型哺乳類約3000万匹、水族館約1500万匹、爬虫類約900万匹と報告されています。
日本ではどうでしょうか。
環境省の「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」のページ [2] によれば 、日本全国で飼われている犬や猫の数は平成29年は約1,845万頭、 うち猫が約950万匹、犬は約890万匹と推定されているようです。
ただ、平成29年度の1年間に 自治体の保健所や動物愛護センター等に 引き取られた犬や猫の数は年間およそ10万6百頭、飼い主に返還や譲渡されたのが年間およそ5.76万頭。まだ全部の子たちが譲渡されるのではない状況で、悲しいデータですね。機会があれば、世界の状況も調べてみたいと思います。
2010年の世論調査では、34.3%の家庭でペットを飼っており、そのうち猫は30.9%という結果が発表されています。(参考サイト:動物愛護に関する世論調査 調査結果の概要|内閣府)
パンデミックの影響
未曾有の新型コロナウィルス感染症が拡大する中、1年以内に新しく猫を飼い始めた数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以前の2019年に比べ、2020年、2021年ともに増加していると報告されています。
ですが、国内外で様々な規制に強いられた生活を余儀なくされ、ペットライフにも影響を与えていることは想像に難くありません。
スペインの調査結果
スペインのバルセロナ自治大学のBowen博士は、スペインでのCOVID-19流行抑制のためのロックダウンがペットの犬猫の行動に与える影響と、ペットが飼い主に与える影響についてアンケート調査した結果を報告しています[3]。
ソーシャルメディアやペットの飼い主、動物病院、アニマルシェルター、オンラインフォーラムで、アンケートが配布され、1297件のアンケートをまとめたものです。
「ロックダウン前に比べて、ロックダウン中にペットにどの程度助けられたか」という質問には、
- かなり助けられた:18%
- ペットに適度に助けられた:約29%
- 少し助けられた:27%
- 変化がない:25%
- ペットからのサポートが減少した:0.7%
と回答しています。
つまり、4分3である74%の人がペットに助けられた感じていることになります。
興味深いのは、犬の飼い主は、約26%の人が体重が増えたと答えている一方、猫の飼い主は7.4%と答えています。散歩に行けなかったという犬の飼い主が約62%、猫の飼い主は3%であることによるかもしれません。
ロックダウンが及ぼす影響は、猫と犬では異なるようです。
猫の生活の様子について
- 良くなった:57.3%
- 悪くなった: 8.4%
猫との関係について
- 変わらない:52.1%
- 良くなった:46.3%
- 悪くなった:1.6%
犬の生活の様子について
- 良くなった:19.3%
- 悪くなった:62.1%
犬との関係について
- 変わらない:65.4%
- 良くなった:28.8%
- 悪くなった:5.8%
ロックダウン中、猫の生活の様子は良くなり、猫と飼い主との関係が良くなったと答えた人が多い一方、犬の生活の様子は悪くなり、犬と飼い主の関係が悪くなった人が猫の飼い主の3倍以上いたということになります。
犬の悪化した問題行動としては、迷惑な発声や過剰な発声(24.7%)、大きな音や予期せぬ音に対する恐怖(16.9%)となっています。
最近、猫は家の中だけで生活するご家庭も多いのでロックダウンの影響はさほど受けなかったのかもしれませんが、犬は散歩にでたり、他の犬と交流することができなかったロックダウンは大きく影響を与えていたのかもしれません。
ポーランド・イギリス・アメリカ(共同)の調査結果
ポーランド、イギリス、アメリカの研究者も共同でCOVID-19パンデミックが各国の愛猫に与える影響についての調査結果を発表しています[4]。
アンケートは、英語、北京語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語、オランダ語、ポーランド語で記載され、猫の行動と健康、パンデミックによる家庭内の変化、飼い主と猫との関わり方等に関する21の質問のオンラインアンケートを25か国に配布して324人の調査をまとめています。
その結果、COVID-19のパンデミック時にペットの猫を飼うことは、動物病院等に行くのには多少の困難があることを除いて、特に大きな問題を生じさせなかったようです。
猫の様子はどうでしょうか?
- 変わらない:67.3%
- 近くに寄ってくるようになった:21.6%
- より遊びやすくなった: 12.3%
- よく鳴くようになった: 10.5%
- より静かになった: 7.7%
また、84.6%の回答者が、猫を飼うことのメリットを感じていると回答しています。パンデミック時、最も多く挙げられたのは、猫の存在によって自分自身の精神的な緊張が緩和されたことだったとのことです。
まとめ
新型コロナウィルス禍の影響で、猫との生活から癒しを求めたり、猫も家族内でのコミュニケーションを深めている傾向がうかがえます。COVID19パンデミックがいつ最終的に収束するのか、わかりません。また、新しいウィルスが出てきてしまうことも危惧されています。
不便な生活が続いていますが、猫と人が一緒に暮らすことにより、猫も人も少しでも幸せな生活が送れますように願っています。
参考文献
[1]FACTS & FIGURES 2020 European Overview. https://www.fediaf.org/who-we-are/european-statistics.html
[2] 環境省「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」 現状と推移 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/project/status.html
[3]Jonathan Bowen, Elena García, Patricia Darder, Juan Argüelles, Jaume Fatjó. The effects of the Spanish COVID-19 lockdown on people, their pets, and the human-animal bond, Journal of Veterinary Behavior, Volume 40, 2020, Pages 75-91, ISSN 1558-7878, https://doi.org/10.1016/j.jveb.2020.05.013.
[4]Jezierski T, Camerlink I, Peden RSE, Chou J-Y, Sztandarski P, Marchewka J (2021) Cat owners’ perception on having a pet cat during the COVID-19 pandemic. PLoS ONE 16(10): e0257671. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0257671
幹細胞研究者としてヒトES/iPS細胞や間葉系幹細胞の研究やビジネス化に従事。2022年1月からベンチャー企業・株式会社セルミミックの代表として、ライフサイエンスからライフスタイルまでのコーディネートおよびコンサルタントを行う。著書「本当に知ってる? 細胞を培養する方法(出版社 : じほう)」
《twitter》@mihofurue