猫の『耳』はスゴい!知られざる優れた役割3つ

猫の『耳』はスゴい!知られざる優れた役割3つ

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を五感といい、猫も犬も人も、この五感を働かせて外界からの情報を得、状況を把握します。しかし、それぞれの動物種により五感の使い方は異なっており、人は視覚、犬は嗅覚、猫は聴覚を主としています。今回は、人より優れた点を多く持つ猫の耳の能力や役割に焦点を当てて紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の主となる感覚は『聴覚』

耳を澄ます猫

人は、五感の内の8割を視覚に頼っていますが、猫の視覚は五感の内の2割を占める程度にしか過ぎず、主となるのは4割ほどを占める聴覚だと言われています。

そのため、猫の聴力は人を遥かに凌駕する優れた能力を持ち、それをいろいろなこと、特に狩りに活かしてきました。その能力は、自力で狩りをする必要がなくなった現在でも引き継がれています。

今回は、猫の聴覚に焦点を当て、その優れた能力や役割をご紹介します。

猫の耳の優れた能力と役割

1.広い可聴範囲の高音キャッチャー

ネズミを狙う猫

頭から飛び出している三角形の部分を「耳介」と言います。耳介で拾った音は外耳道を通り鼓膜を振動させ、さらに中耳内の耳小骨に伝わり内耳へと運ばれます。

内耳の中の蝸牛で聴覚情報に変換され、聴神経を通して最終的に脳へと伝えられます。

耳が音として感じ取れる周波数帯域を「可聴域」といいます。低周波数が低音、高周波数が高音です。

人も犬も猫も、低音は20Hz程度と言われており、あまり聞き取る能力に差はありません。

差が見られるのは高音です。概ね人は2万Hz、犬は4万Hz、猫は10万Hz程度までが聴こえると言われています。

猫の獲物となるネズミの声が7万Hz程度なので、狩りをするためには必要不可欠な能力だったといえるでしょう。

2.広範囲をカバーする集音器

耳介のアップ

猫の聴力の凄さは、可聴域の広さだけではありません。耳介にはとても多くの筋肉があり、左右の耳介を別々に180度の方向に動かすことができます。そのため、非常に広範囲の音を拾うことができるのです。

3.獲物のいる方向や距離も正確に捕捉する音声レーダー

猫の耳は、とても広い範囲から音を拾えるだけではありません。左右それぞれの耳に音が届くまでの時間の微妙な差から、獲物までの距離や方向を非常に正確に把握できるのです。

例えば、人が音の方向を感じるときの誤差が4.5度なのに対し、猫の場合はわずかに0.5度の誤差しか生じないと言われています。

音の発生源の方向と距離を正確に把握することで、猫は狩りを成功させてきたのです。

猫の耳に関する豆知識

猫の親子

最後に、聴力とは直接関係ありませんが、猫の耳に関する豆知識をご紹介します。

1.猫は生後2週間までは聞こえない

非常に高い能力を持ち、五感の4割ほどを占める聴覚ですが、実は生まれて間もない子猫は聞こえていません。

生後2週間以降に耳の穴が開いて外耳道が通り、やっと音が聞こえるようになるのです。

そのため、子猫は母猫とのコミュニケーションを声ではなく、喉をゴロゴロと慣らす振動により行っています。

2.お手入れには要注意、人とは異なる耳の構造

耳道は垂直に下がり、途中でL字型に曲がって水平方向に進み、鼓膜に達します。

途中でL字型に曲がっている耳道を持つ猫の耳のお手入れには、注意が必要です。綿棒を奥まで入れて掃除をしようとすると、かえって汚れが奥に詰まってしまうからです。

猫の耳のお手入れは、見える範囲だけに留めましょう。

3.優れたバランス能力は内耳の能力

飛び降りる猫

猫は人や犬とは異なり、ある程度の高さから落下しても、空中で姿勢をうまく変更して上手に着地できます。

これは、体の回転や頭の傾きを敏感に察知し、その情報を反射中枢に伝える能力が優れているからです。

この体の回転や頭の傾きを察知する器官が、内耳にある前庭器官や三半規管です。猫は、これらの器官が他の動物よりも発達しているのです。

4.重要なコミュニケーションツール

犬はとても表情が豊かですが、猫はあまり表情を変えません。そのため、猫の感情を読み取るのは難しいのですが、耳を見ることでおおよそ理解ができます。

耳は、猫にとってしっぽや姿勢と同じくらい大切なコミュニケーションツールでもあるのです。

まとめ

耳のアップ

猫の聴覚における優れた能力と役割を中心に、耳にまつわる雑学をご紹介しました。

五感の働かせ方が異なるため、同じ世界で暮らしていても、人間が感じている世界と猫が感じている世界は、かなり異なっていると考えた方が良さそうです。

そのため、猫が暮らしやすい環境を考える際には、猫の感覚についても理解した上で工夫することが必要です。

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