猫の主となる感覚は『聴覚』
人は、五感の内の8割を視覚に頼っていますが、猫の視覚は五感の内の2割を占める程度にしか過ぎず、主となるのは4割ほどを占める聴覚だと言われています。
そのため、猫の聴力は人を遥かに凌駕する優れた能力を持ち、それをいろいろなこと、特に狩りに活かしてきました。その能力は、自力で狩りをする必要がなくなった現在でも引き継がれています。
今回は、猫の聴覚に焦点を当て、その優れた能力や役割をご紹介します。
猫の耳の優れた能力と役割
1.広い可聴範囲の高音キャッチャー
頭から飛び出している三角形の部分を「耳介」と言います。耳介で拾った音は外耳道を通り鼓膜を振動させ、さらに中耳内の耳小骨に伝わり内耳へと運ばれます。
内耳の中の蝸牛で聴覚情報に変換され、聴神経を通して最終的に脳へと伝えられます。
耳が音として感じ取れる周波数帯域を「可聴域」といいます。低周波数が低音、高周波数が高音です。
人も犬も猫も、低音は20Hz程度と言われており、あまり聞き取る能力に差はありません。
差が見られるのは高音です。概ね人は2万Hz、犬は4万Hz、猫は10万Hz程度までが聴こえると言われています。
猫の獲物となるネズミの声が7万Hz程度なので、狩りをするためには必要不可欠な能力だったといえるでしょう。
2.広範囲をカバーする集音器
猫の聴力の凄さは、可聴域の広さだけではありません。耳介にはとても多くの筋肉があり、左右の耳介を別々に180度の方向に動かすことができます。そのため、非常に広範囲の音を拾うことができるのです。
3.獲物のいる方向や距離も正確に捕捉する音声レーダー
猫の耳は、とても広い範囲から音を拾えるだけではありません。左右それぞれの耳に音が届くまでの時間の微妙な差から、獲物までの距離や方向を非常に正確に把握できるのです。
例えば、人が音の方向を感じるときの誤差が4.5度なのに対し、猫の場合はわずかに0.5度の誤差しか生じないと言われています。
音の発生源の方向と距離を正確に把握することで、猫は狩りを成功させてきたのです。
猫の耳に関する豆知識
最後に、聴力とは直接関係ありませんが、猫の耳に関する豆知識をご紹介します。
1.猫は生後2週間までは聞こえない
非常に高い能力を持ち、五感の4割ほどを占める聴覚ですが、実は生まれて間もない子猫は聞こえていません。
生後2週間以降に耳の穴が開いて外耳道が通り、やっと音が聞こえるようになるのです。
そのため、子猫は母猫とのコミュニケーションを声ではなく、喉をゴロゴロと慣らす振動により行っています。
2.お手入れには要注意、人とは異なる耳の構造
耳道は垂直に下がり、途中でL字型に曲がって水平方向に進み、鼓膜に達します。
途中でL字型に曲がっている耳道を持つ猫の耳のお手入れには、注意が必要です。綿棒を奥まで入れて掃除をしようとすると、かえって汚れが奥に詰まってしまうからです。
猫の耳のお手入れは、見える範囲だけに留めましょう。
3.優れたバランス能力は内耳の能力
猫は人や犬とは異なり、ある程度の高さから落下しても、空中で姿勢をうまく変更して上手に着地できます。
これは、体の回転や頭の傾きを敏感に察知し、その情報を反射中枢に伝える能力が優れているからです。
この体の回転や頭の傾きを察知する器官が、内耳にある前庭器官や三半規管です。猫は、これらの器官が他の動物よりも発達しているのです。
4.重要なコミュニケーションツール
犬はとても表情が豊かですが、猫はあまり表情を変えません。そのため、猫の感情を読み取るのは難しいのですが、耳を見ることでおおよそ理解ができます。
耳は、猫にとってしっぽや姿勢と同じくらい大切なコミュニケーションツールでもあるのです。
まとめ
猫の聴覚における優れた能力と役割を中心に、耳にまつわる雑学をご紹介しました。
五感の働かせ方が異なるため、同じ世界で暮らしていても、人間が感じている世界と猫が感じている世界は、かなり異なっていると考えた方が良さそうです。
そのため、猫が暮らしやすい環境を考える際には、猫の感覚についても理解した上で工夫することが必要です。