犬よりも猫の方が怖い?猫の『フィラリア症』

犬よりも猫の方が怖い?猫の『フィラリア症』

フィラリア症は「犬の病気」だと思ってはいませんか。実は、生前には見つけづらいだけで、10頭に1頭の割合で猫がフィラリアに感染していたという国内調査報告もあるくらい、決して少なくはない病気です。猫のフィラリア症について、犬との違いを交えながら症状や治療などについて解説します。

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記事の監修

北里大学獣医学科卒業。埼玉県内の動物病院で勤務医をしながら教育・研究にも携わっており、大学では『伴侶動物の鉄代謝』をテーマに研究しています。『猫は小さな犬ではない』という格言のもと、何よりも猫ちゃんの健康と福祉の向上を一番に考え、日々の診療に励んでおります。

思っている以上に多い猫のフィラリア感染

呼吸困難な猫

猫の飼い主さんにとって、フィラリア症とは「犬の病気」と認識されている方が多く、動物病院でもあまり猫のフィラリア予防の話を聞くことは少ないかもしれません。

しかし猫のフィラリア症は見つけるのが難しいだけで、実際には猫の10頭に1頭がフィラリア幼虫に感染していたという国内の調査報告も出されています。

また猫のフィラリア感染報告は、北海道から沖縄まで全国で見られ決して他人事ではありません。

そこで今回は、猫のフィラリア症について解説します。

猫のフィラリア症の感染経路

蚊のアップ

猫のフィラリア症も、犬と同様に蚊を媒介として、犬糸状虫(フィラリア)に感染することで発症します。その感染経路は下記の通りです。

1.フィラリアに感染している犬を蚊が吸血し、フィラリア幼虫が蚊の体内に入る
2.フィラリア幼虫を体内に持つ蚊が猫を吸血し、幼虫が猫の体内に侵入
3.猫の皮下組織や筋肉で幼虫が成長(2〜3ヵ月)
4.幼虫が血管の中に入り、血流に乗って肺や心臓の血管へ移動
5.多くは未成熟のまま死滅するが一部は成虫となり肺や心臓の血管に寄生する

猫のフィラリア症の特殊性

咳をする猫

猫はフィラリアの本来の宿主ではありません。そのため、実際に幼虫に感染しても猫の体内の免疫反応によって死滅してしまい、殆どは成虫になりません。

フィラリアにとって運良く生き延びられたとしてもその数はごくわずかで、犬には数十匹寄生することもありますが、猫の場合は1〜3匹程度だと言われています。

犬の場合は、成虫となって心臓に寄生した段階で様々な症状を引き起こします。しかし猫の場合は、幼虫の段階で死滅しほとんどが成虫にならないという事情から、犬のフィラリア症とはだいぶ異なる症状を示します。

猫のフィラリア症の症状と治療

フィラリア感染に起因する症状

診察を受ける猫

猫のフィラリア症は「糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)」と呼ばれる呼吸器疾患を引き起こします

未成熟のフィラリア幼虫は肺に入り、そこでそのほとんどが死滅します。その際、肺の血管や肺組織に炎症を起こし、咳や呼吸困難を引き起こします。

治療の中心はこの症状を和らげるための対症療法しかなく、生涯に渡って治療が必要となるケースも少なくありません。

またフィラリア成虫の寄生が判明しても、外科手術による摘出や駆除薬の使用による駆除は難しく、成虫が自然に死滅することを待つ場合が多いです。

フィラリア成虫死滅後に起きる症状

フィラリア成虫が死滅すると死骸が心臓や肺の血管に詰まり、血液循環が阻害されて突然死を引き起こす危険性があります。

猫の突然死はその原因がわからないこともよくありますが、フィラリア感染によるものも多いと言われており、死後の解剖で初めて感染が判明します。

猫のフィラリア症が見つかりづらい理由

採血される猫

フィラリア感染の検出には、抗原検査と抗体検査がありますが、いずれの方法も偽陰性がありますので、検査による正確な検出は難しいのが現状です。

さらにHARDの症状には該当する他の病気が数多く存在するため、フィラリア症は見逃されてしまうことが多いのです。

まとめ

飼い主と遊ぶ猫

猫のフィラリア症は、特異的な症状がないので発見しづらいですが、突然死も引き起こす怖い病気です。

しかし、しっかりと予防をすれば防げる病気なので、かかりつけの獣医師とよく相談の上、期間中にしっかりと継続的に予防を実施し、愛猫を守りましょう。

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