猫は自分の死期を悟るから姿を隠すのか
昔から、「猫は自分の死期を悟ると姿を隠す」と言われてきました。
それは、愛猫の姿が見えなくなったと思ったら、数日後に縁の下や庭の隅などの人目につかない場所でひっそりと亡くなっている猫の姿を目にすることが多かったからだ、と言われています。
本当に、猫は自分の死期を悟るから隠れようとするのでしょうか。そもそも、猫は「死」という概念的なものを認識できるのでしょうか。
学者や有識者の説、そして死期が近づいてきた猫によくみられる症状や行動について整理しました。
専門家の見解
隠れて静かに息を引き取った猫達の行動の理由
以前日本でも話題になった「裸のサル」の著者デズモンド・モリス氏は、犬、猫、馬などの身近な動物の研究でもよく知られている動物行動学者です。
モリス氏は、「猫は自分自身の死という概念を持っておらず、自分の死を予測できない」と言っています。
猫だけではなく多くの動物も同様で、病気や怪我による不快感に対して、敵から威嚇された時の不快感へと同じような行動を取り、身を隠すのだということです。
そして体調が回復しなければ、そこでそのまま死を迎えることになるという訳です。
室内飼いが普通になった現代の猫達
ヒトと動物の関係学会で長く監事をされたこともあり、特に猫に関する著作の多い動物ライターの加藤由子氏は、「現代の猫は室内飼いでずっと子猫の気持ちを持ち続けているため、あまり一人になりたがらない傾向がある」といいます。
また、「静かで安全な場所に隠れていたいという本能は残っていても、現代の猫達にとって静かで安心できる場所とは、家の中の自分のお気に入りの場所になるのだ」ということです。
たしかに、まだ母猫に甘えて暮らしている子猫にとっての安心できる場所は、母猫の側に違いありません。
つまり、現代の猫達にとっては、飼い主さんの側で静かに息を引き取ることができれば、それが一番幸せな形なのかもしれません。
猫のお別れが近づくと見せるサイン
飼い主を母猫のように思い、いつまでも子猫の気持ちを持ち続けている現代の猫達が見せる、死が近づいてきている時の体の変化や行動についてみていきましょう。
闘病中や高齢な猫がこれらのサインをみせるようになったら、心の準備も進めておきましょう。
1.いつもと違う声で甘えたり大声で鳴くようになる
鳴くという行動は、子猫が母猫に、成猫が人に対して行うコミュニケーション方法です。
痛みや苦しさなどの不調や、不安で側にいて欲しいということを飼い主に訴えているのかもしれません。弱りきってしまうと大きな声が出せないなど、声色の変化が出ることもあります。
2.室内でも安全な場所に隠れようとする
室内の環境や一緒に暮らしている家族構成にもよりますが、室内でも静かで安全な場所に隠れようとする場合があります。特に多頭飼いの場合は、その傾向が強いかもしれません。
部屋の隅や少し高いところで四六時中じっとしている時は、もしかしたら何かあるのかも?と気にかけてあげましょう。
3.目に力がなくなり無表情になる
体力や気力がなくなると、焦点が合わなくなる、目がくぼんでくる、全身の力がなくなる、無表情な顔つきになるといった変化が表れます。
4.一旦回復したように見える場合もある
まれに、短い間だけ元気な様子を見せる場合もあります。飼い主さんが喜ぶのもつかの間、翌朝には息を引き取るといったケースです。
死の概念はなくても、必死に生きようとしている猫が、最後の気力を振り絞って飼い主さんと過ごそうとした結果なのかもしれません。
まとめ
猫の行動を擬人化して勝手に人の感情を投影しようとは思いませんが、前述の一瞬回復したように見える現象のように、科学的には説明できない不思議な現象もあるようです。
いずれにしろ、愛猫を看取るのは飼い主の宿命です。必ずやってくるお別れの時に、なるべく後悔することがないように、予め心の準備や苦痛を和らげてあげるための努力など、色々と準備をしておきたいと思います。