猫白血病ウイルス感染症とは?
この病気はウイルスによる感染症です。「白血病」と名が付いていますが、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染することによって白血病だけでなくリンパ腫、貧血、免疫不全などを起こす恐れがあります。感染すると免疫力が低下するため、他の病気を引き起こし重篤化しやすくなります。
猫白血病ウイルスに感染しても自分の免疫力によってウイルスを排除できることもあれば、ウイルスが体内に残って持続的な感染状態になる場合もあります。
感染初期の症状
猫白血病ウイルスに感染した直後は
- 発熱
- 元気がなくなる
- 体重の減少
- 下痢
- リンパ節の腫れ
- 貧血
- 鼻炎
などの症状が見られることがあります。感染初期は「急性期」と呼ばれ、1週間から数ヶ月ほどこのような症状が見られます。猫によっては白血球や血小板の減少が見られることもあります。
ウイルスを排除できて一過性に終わることも
この急性期を過ぎて自分の免疫によって体内からウイルスがいなくなると、今後は発症せず一過性に終わることもあります。
成猫の場合はウイルスが排除されて回復に向かうことも多いです。感染しても体内からウイルスを排除できた場合は、感染から16週間以内に検査で「陰性」が出ます。
しかし初期症状がおさまり回復したように見えても、実は増殖を抑えられているだけでウイルスを排除しきれていない場合もあります。
持続感染に見られる病気
ウイルス感染から4ヶ月以上陽性の状態が続くことを「持続感染」と呼びます。
持続感染となり発症してしまうと骨髄内でウイルスが増殖し、
- 悪性リンパ腫
- トキソプラズマ症
- 慢性腎不全
- 猫伝染性腹膜炎
- 貧血
- 口内炎
などを引き起こす恐れがあります。白血球が減少することで免疫機能が低下し、感染症にもかかりやすくなります。
猫白血病ウイルスの予防法
完全室内飼育をする
猫白血病ウイルスは猫同士で感染を起こします。
猫白血病ウイルスに感染している猫の
- 唾液
- 涙
- 排泄物
などに含まれたウイルスが他の猫の体内に入ることで感染が起こり、母子感染によっても感染します。
いちばんの予防法は「猫白血病ウイルスに感染している猫と接触しないこと」ですので、完全室内飼育を徹底することが大切です。
そしてまだ断定はされていないものの、ウイルスを保有している猫の血を吸ったノミからもウイルスが確認されているため「ノミ予防」も重要であると考えられています。
ワクチンを接種する
猫白血病ウイルスにもワクチンが存在します。しかし人間のインフルエンザワクチンと同様に、ワクチンを接種しても100%感染を予防することはできません。
しかしその予防率は80〜90%と言われ、決して低い効果ではないと言えます。
猫のワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に分けられます。コアワクチンは「全ての猫に接種することが推奨されているワクチン」で、3種混合ワクチンはコアワクチンであることが一般的です。
しかし猫白血病ウイルス感染症のワクチンは「ノンコアワクチン」とされ、混合ワクチンの場合は4種以上のワクチンに含まれています。
猫白血病ウイルスのワクチンは単体でも接種することができますが、愛猫が接種しているワクチンに猫白血病ウイルスが含まれているかを確認しておきましょう。
猫白血病ウイルスのワクチンは、その猫が「陰性」の場合に接種することができます。陽性であった場合、ワクチンを接種しても病気の発症を押さえたり、進行を遅らせることはできませんので、白血病のワクチン接種は行いません。
猫白血病ウイルスのワクチンを接種する場合は、接種前にウイルス検査を受けて陰性であることを確認してからとなります。
ワクチン接種は接種部位に肉腫ができるなどの副作用が出る場合もあるため、かかりつけの獣医師と相談の上で接種を検討すると安心です。
キャリアの子とは生活を分ける
猫白血病ウイルスが陽性の状態の子と陰性の子を多頭飼育する場合、陰性の子への感染を防ぐよう注意する必要があります。
両者をできるだけ接触させないことが最も効果的な予防策となり、飼い主さんがウイルスを運んでしまわないように消毒を心がけることも大切です。
猫白血病ウイルスは体の外での活動は不安定となり、消毒剤や熱による消毒、日光でも感染力を失います。
室内では数分から数時間で感染力を失うと言われていますが、トイレシーツや湿気のある場所では感染力が維持されやすいため注意しましょう。
まとめ
「白血病」と名前が付いていますが、猫白血病ウイルス感染症で持続感染から発症する病気は白血病よりも悪性リンパ腫であることが多いそうです。
成猫の場合は、感染しても自己の免疫によってウイルスを排除し、一過性に終わることも多いのですが、子猫の場合では持続感染になることが多いので注意が必要です。
そしてウイルスを排除できたかのように病状が回復しても、実はウイルスを保有し続けている潜伏期間である恐れがありますので、ウイルス検査で陰性が確定するまで注意する必要があります。
持続感染となっても発症せず10年過ごせるケースもあれば、感染確認後に平均3年で腫瘍が発生するというデータもあります。まずは室内飼育の徹底やワクチン接種などで、感染を予防することが大切です。