赤や緑は見えにくい?猫の『見えている世界』にまつわる知識5つ

赤や緑は見えにくい?猫の『見えている世界』にまつわる知識5つ

同じ哺乳類でありながら、人は感覚の約8割を視覚に頼っているのに対し、猫は2割程度です。どうやら同じものを見ても同じようには見えていないようです。猫には、この世界がどのように見えているのでしょうか。まだ未知の部分も多いですが、猫の視覚について分かっていることを整理してみました。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の見ている世界

猫の目

人と猫は同じ哺乳類ですが、人は感覚の8割を視覚に頼るのに対して猫は2割程度でしかありません。猫には、同じものがどのように見えているのでしょうか。

猫の見ている世界をある程度理解できれば、愛猫と飼い主さんの双方にとってより快適な共同生活を送れるかもしれません。猫の視覚に関して分かってきている知識を整理しました。

見るしくみ

ピントの調節

眼の構造

「見る」しくみをごく簡単にまとめると、「虹彩が瞳孔の大きさを調節して適量の光を取り込み、水晶体を通して網膜上に像を映し、それを知覚した視細胞の情報が視神経を通して脳に伝達される」ということになります。

網膜に映す像のピントを調節するのは水晶体で、前面の厚みを変えて屈折力を変化させ、ピントを調節します。

杆体と錐体

網膜にある視細胞には、「杆体」という暗い時に働く「明暗のみ」を知覚する細胞と、「錐体」いう明るい時に働く「明暗と色」を知覚する細胞があります。

人の錐体には短波長を知覚するS錐体、長波長を知覚するL錐体、中波長を知覚するM錐体の3種類があり、このような色覚を3色型色覚といいます。

ただし、各錐体の分光応答度特性や感度は動物種毎に異なるため、同じ3色型色覚の動物でも同じように見えているとは限りません。

色覚の進化

チンパンジー

動物が最初に獲得した視覚能力は、近紫外〜青辺りの波長域の知覚でした。これがS錐体の原型です。

脊椎動物は進化の過程で紫外線まで知覚できる4色型にまで進化しましたが、哺乳類は恐竜が栄えた中生代に夜行性に変わり、「S錐体」と「L錐体」のみの2色型へと進化しました。

恐竜の衰退後、昼行性へと戻った霊長類の祖先のサルに「M錐体」を持つものが現れ、それが人に受け継がれたと考えられています。

猫の視覚にまつわる知識

1.視野

猫の顔

視野には、片目で見える単眼視野と両眼で見える両眼視野、両方を合わせた全体視野の3種類があり、脳は両眼視野内の対象物に対し、右目と左目の像のズレから距離を正確に測定できます。

全体視野は猫の方が少し広いですが、両眼視野は共に120度程度です。

2.視力

猫は動いているものを認識する動体視力に優れています。主な獲物である小動物のスピードに対して最適化されています。

対して静止物に対する視力は人の1/10程度です。少量の光を多く取り入れるために水晶体が大きくなったためだといわれています。

3.色覚

プリズム

色覚の進化で紹介した通り、哺乳類は「2色型色覚」になりました。薄明薄暮性の猫もそのまま現在に至っているようです。新たな発見の研究報告もありますが、いずれにしろ赤と緑はあまり識別できていないようです。

なお猫の杆体は人の約3倍あり、かつ網膜の下に光を反射するタペタム層もあるため、暗い場所でも高感度で撮影した夜景のように明るく見えています。

4.光の点滅

猫の目は光点の点滅を識別できる能力が人よりも高く、蛍光灯の光やテレビの画像がチカチカした点滅に見えていると考えられています。

5.眼球運動

猫の眼球は素早く動く対象をとらえるのに適した動き方をします。そのため、目の前をゆっくりと通り過ぎる物を見る場合も、時計の秒針のようにカチッカチッとした動き方をします。

まとめ

猫の後ろ姿

猫の視野は人と同程度ですが、視力は近眼の人程度にぼやけ、昼間は赤と緑が識別できず、夜は高感度で撮影した夜景程度に明るく見えているようです。

猫が見えている世界が分かると、一緒に遊ぶおもちゃは青色の方が良さそうだとか、赤く着色されたドライフードは人へのアピールだということに気付けます。

猫は人ほど視覚に頼りませんが、それでも猫が生活環境をどのように見ているのかを知ることで、改善点が見つかるかもしれません。

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