猫の死因として多い病気
猫が罹りやすい病気を知り、その予防に努めるのは大切なことです。特に死に直結する病気を知っておき早期発見に努めることは、愛猫の健全な生活に有意義だと言えるでしょう。
アニコムどうぶつ白書によると、猫の死亡原因の上位5疾患は下記となっています。
(1) 0歳:死亡割合約2%
感染症(43.8%)、呼吸器(10.0%)、消化器(6.2%)、循環器(3.3%)、血液(2.9%)
(2) 5歳:死亡割合約1.5%
泌尿器(38.1%)、循環器(16.7%)、腫瘍(16.7%)、血液(9.5%)、呼吸器(4.7%)
(3) 12歳以上:死亡割合約8%
泌尿器(32.7%)、腫瘍(15.9%)、呼吸器(8.5%)、循環器(5.7%)、内分泌(4.9%)
そこで、若齢時の感染症から猫伝染性腹膜炎(FIP)、泌尿器系疾患から腎臓病、腫瘍からリンパ腫、循環器系疾患から肥大型心筋症の4つを選択し、概要をご紹介します。
1. 猫伝染性腹膜炎(FIP)
(1) 原因
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)。
イエネコが通常持っている弱毒性のウイルス(FECV)の突然変異により強毒化。
(2) 分類と症状
- ウェットタイプ:腹膜炎、胸膜炎、腹水、胸水など
- ドライタイプ:ブドウ膜炎、肝機能低下、腎機能低下、神経症状など
- 両タイプ共通:元気食欲の低下、発熱、体重減少(発育不良)など
(3) 治療
臨床症状の改善や延命を目的とした治療のみ。
(4) 予防
ワクチン等の確実な予防法なし。強毒化の要因となる猫のストレスの低減が有効。
2. 腎臓病
(1) 原因
直接腎臓がダメージを受ける他、腎臓以外の臓器が原因となることも多い。尿管結石から急性腎不全に進行するケースもある。
(2) 分類と治療
急性腎臓病:治癒の見込みあり。早期発見が重要。
慢性腎臓病:治癒の見込みなし。進行遅延、QOLの維持を目的とした治療のみ。
(3) 予防
十分な水分補給および定期的な健診よる早期発見。
(4) 死へ繋がる病態
腎機能の低下による尿毒症や高カリウム血症。
3. リンパ腫
(1) 原因
不明。胸腺型リンパ腫は猫白血病ウイルス(FeLV)感染との関連性が高い。
(2) 分類
消化器型、鼻腔型、皮膚型、縦隔型、その他(脳・眼球内・腎臓など)など様々。部位により症状も異なる。
(3) 治療
外科手術、抗がん剤、放射線治療から病態や状態により選択。
(4) 予防
確実な予防法なし。
胸腺型についてはFeLV感染の予防(ワクチン接種)が有効。
飼い主の禁煙も有効。
4. 肥大型心筋症
(1) 原因
遺伝性の素因が関連。好発種はアメリカンショートヘア、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、スコティッシュ・フォールドなど。後天的要因は不明。
(2) 症状
進行に伴い徐々に活動性が低下し疲れやすくなる。初期症状ははっきり現れず気付かれにくい。
(3) 治療
内科的な対症療法が中心。
(4) 予防
有効な予防法なし。定期検診による早期発見が重要。
(5) 死へ繋がる病態
心臓内に停滞した血液が血栓となり全身の血管(特に後肢)に詰まる危険性あり。
まとめ
愛猫の健康管理のためには、健康時の愛猫の様子や飲水量、尿量、呼吸数などを把握しておき、定期健診と共に早期発見に努めることが大切になります。
また、ストレスはウイルスを強毒化させる突然変異の要因となったり、愛猫の病態を悪化させる要因になりやすいので、飼い猫の生活環境をストレスフリーにすることも心がけましょう。