1.行動診療科は何を診てくれるのか
最近、行動診療科という言葉を聞くことが増えて来ました。人間の病院の精神科に相当することはなんとなく分かっても、具体的にはどういう症状を診てくれるのか、行動診療科のある病院はどこにあるのかなどと思っている方も多いのではないでしょうか。
行動診療科とは、飼い主が困るすべての行動(問題行動)の原因を究明し、改善方法を診断、コンサルティングする科です。
欧米では以前から専門医が治療にあたっていましたが、日本で行動診療科の認定医制度ができたのは2013年と最近のことです。しかし、徐々に定着し始めています。
2.問題行動とはどのような行動なのか
では、実際に診療の対象となる猫の問題行動にはどのようなものがあるのでしょうか。
前述の通り、問題行動とは飼い主にとっての問題であって、猫には正常な行動である場合が多いです。しかし、その行動の発現要因が猫のストレスなどに起因している場合は、それを理解し、環境を改善し、適切な行動療法で改善することができます。
実際に行動診療科で治療を行った猫の症例には、次のようなものがあります。
- 不適切な場所での爪研ぎ
- 同居猫とのトラブル
- 不適切な場所での排泄
- 恐怖や不安を異常に感じやすい
- 攻撃的な行動
- 常同障害(同じことを延々と繰り返す)
- 布製品などの異物を食べる
- 大きな声で鳴き続ける 等
では、代表的な2つの行動について、どのような要因がストレスを発現させ得るのかをご紹介します。
3.猫によくある問題行動2つのストレス要因
不適切な場所での爪研ぎ
爪研ぎは猫にとっては正常な行動であり、やめさせることはできません。しかし、下記のような要因がストレスとなっている場合もあります。
- 爪の伸び過ぎ
- 気持ちよく爪を研げる許された場所がない
- 過密な状態での多頭飼育
- 模様替えや引越しなどによる環境変化
隠れたまま出て来ない
猫は仲間同士の争いを回避しようとする習性を持っていますので、一時的に隠れるのは正常な行動です。しかし、過剰な不安による隠れっぱなしの状態は問題行動と言えます。猫が不安や恐怖を感じる要因には、下記のようなものがあります。
- 遺伝的な気質
- 捨てられたり何度も飼い主が変わったりという経験
- 生後2〜7週齢時の社会化不足
- 過去の嫌な経験(留守番時に怖い思いをした等)
4.こんな時は行動診療科を受診しよう
愛猫の行動が、飼い主さんが我慢できないほどエスカレートしたり、異物を食べるような命の危険につながる場合は、行動診療科の専門医がいる病院を探して相談しましょう。行動診療科の専門医がいる病院は、「日本獣医動物行動研究会」のサイトが紹介ページを用意しています。
このサイトでは、2019年現在、日本にまだ9名しかいない獣医行動診療科認定医の他にも、行動診療を実践している獣医師の情報(氏名、病院名、病院の連絡先)が掲載されています。お住まいの近くの病院で問題行動を治療してもらえる病院が見つかると思います。
まとめ
今日のねこちゃんより:ポンちゃん♀ / 3歳 / サビ猫 / 3.8kg
犬と違い、猫の飼い主さんは精神的なケアについての相談先が分からず、悩んでいる方もおられることでしょう。専門書等で勉強しても、素人療法ではかえって愛猫のストレスを増やす結果になることもあり得ます。
この記事を参考に、行動診療科のある病院を探し、相談してみてください。専門家の指示の下、安心できる生活環境への改善と適切な行動療法で、愛猫を楽にしてあげましょう。