猫の終末期医療。飼い主にできることとは?

猫の終末期医療。飼い主にできることとは?

愛猫が最期まで愛猫らしく過ごせるようにケアをする「ターミナルケア(終末期医療)」を望む飼い主さんが増えてきています。自宅でのターミナルケアは飼い主さんの心と身体に大きな負担がかかることもあり、愛猫の介護や看護に不安を抱く飼い主さんも多くいらっしゃいます。今回は【愛猫のターミナルケア】について解説いたします。

「ターミナルケア」とは?

花とチェアにいる猫

「痛みや苦しみの緩和」という選択肢

「ターミナル」とは終末、終着駅という意味があります。「ターミナルケア」とは終末期医療のことで、末期症状の人やペットの「心」に重きを置いたケアです。

愛猫に体調不良がある場合、通常なら動物病院で受診し投薬による治療や手術によって積極的な治療をします。

しかし、

  • 治すことが難しい病気
  • これ以上の治療で治る見込みがない
  • 高齢で積極的な治療に耐えられない

などが理由で、積極的な治療だけではなく「痛みや苦しみの緩和」に重きを置き、愛猫らしい生活を守るためのケアを選ぶという選択肢もあります。

最期まで愛猫らしく生きるためのケア

私たちには通院して治療をすることは「病気を治すため」ということが理解できます。しかし、猫にとって通院してたくさんの治療を施すこと自体が、大きなストレスとなることもあります。

ターミナルケアは「愛猫が最期まで愛猫らしく生きること」を目的としたものです。猫のターミナルケアは、痛みや苦しみを軽減する治療をし、慣れ親しんだ自宅で、お気に入りの場所で、ご家族と一緒に、できる限り愛猫が今まで過ごしてきたように、最期の時まで過ごすという方法が一般的です。

飼い主さんやご家族が愛猫の介護や看護を行う必要があるということも、ターミナルケアを選択する際に理解しておきたい重要な点です。

1. 食べたがるものを選ぶ

ごはんを食べる猫

食欲がなくなってしまった時に

老化や病気の悪化によって食欲がなくなり、今までのごはんに口をつけなくなることも多くあります。歯周病や口内炎などでドライフードを食べると痛みが出て食べたがらないということもあります。このような時に無理に今のフードを食べさせるのではなく、猫ちゃんが食べたがるものを与えるという選択肢もあります。

食事を楽しめるようにすることが目的

猫は香りが強いごはんの方が食欲がかき立てられやすいので、ドライフードの場合でも少し電子レンジで温めてあげると香りが立ちやすくなります。

また、食べやすいようにふやかしてあげると食べてくれることがあります。ウェットフードの方が好んで食べるという場合には、猫ちゃんのお気に入りのものを与えてあげるのも良いでしょう。

このように食事内容を工夫して、できる限り猫ちゃんが食事を楽しむことが目的となります。

獣医師と相談しながら食事を決めよう

猫ちゃんの病気によっては

  • 食べさせてはいけない食材
  • 控えた方が良い食材
  • 無理に食べさせない方が良い場合

などがあるため、必ず獣医師に相談しながら食事内容を決めていきましょう。

2. 身体を拭いてあげる

猫の顔をコットンで拭く人

セルフグルーミングをしなくなった時

猫は自分で自分を舐めてきれいにする「セルフグルーミング」をする動物です。しかし、高齢になったり病気で身体が辛くなったりすると、セルフグルーミングをする気力がなくなってしまいやすいです。口内にトラブルがある場合も、痛みによってセルフグルーミングができなくなってしまうこともあります。

猫ちゃんができるだけ快適に過ごせるように、優しくブラッシングをしたり身体を拭いてあげることもケアの1つです。猫ちゃんの身体に無理がないように、優しくグルーミングを行ってあげてください。

スキンシップの時間としても大切

ターミナルケアにおいて最も大切なのは「一緒にいる時間を大切にすること」です。愛猫の身体を拭いてあげながら優しく話しかけてあげたり、身体をマッサージしながらなでてあげるなどのスキンシップの時間として一緒に過ごすことも大切です。飼い主さんのなでる感触や優しい声で猫ちゃんも安心することでしょう。

3. 1人で頑張らない

円陣を組む手

ターミナルケアは飼い主さんの負担が大きい

ターミナルケアは飼い主さんご自身で愛猫の介護や看護をする必要がありますので、飼い主さんの負担がとても大きくなります。

猫ちゃんの病状が悪化すると、長時間見守らなくてはいけないこともありますし、トイレに間に合わなくなって介護が必要になったり、認知症によって徘徊して鳴き続けたりすることもあります。

そして、つきっきりでお世話することの身体的な負担だけではなく、弱っていく愛猫の姿を見守ることの精神的な負担もとても大きいものです。

力を借りられる人を見つけておこう

ターミナルケアで重要なことは「1人で頑張らないこと」です。飼い主さんが笑顔をなくしたり、体調を崩してしまうことを猫ちゃんは望んでいません。

ターミナルケアは飼い主さんお一人で頑張るのではなく、

  • かかりつけの獣医師
  • 往診可能な獣医師
  • ご家族
  • 信頼する知人
  • 介護の経験と知識があるペットシッター

など、力を借りてチームで行うことが大切です。

ご家族や信頼できるお友達のほか、力を借りられる専門家もいます。インターネットで調べてみると、地域によってはターミナルケアを専門としている獣医師が自宅まで往診に来てくれるサービスや、ペット介護の経験と知識があるスタッフが在籍しているペットシッティングサービスもあります。

ターミナルケアをする際には、力を借りられる人を探しておくことも大切です。

ともに幸せに過ごすことが最重要

ターミナルケアはお一人でずっと頑張るのではなく、飼い主さんがしっかりと休んだり息抜きすることも大切です。不安なことは相談し、心の負担も軽減しましょう。

ターミナルケアは、飼い主さんと猫ちゃんが幸せな時を過ごすことが目的です。猫ちゃんだけでなく、飼い主さんも幸せでなくては意味がないのです。

まとめ

猫の頭をなでる手

ターミナルケア(終末期医療)は「愛猫が最期まで愛猫らしく過ごすこと」を目的とした緩和ケアです。病気による痛みや苦しみを和らげる治療をし、慣れ親しんだご自宅で、お気に入りの場所で、飼い主さんやご家族とともに過ごす猫ちゃんの「心」に重きを置いたケアです。

ターミナルケアを始める前に、まずは力を借りられる人を見つけることが大切です。ターミナルケアは飼い主さんご自身で愛猫の介護や看護を行うことや、弱っていく愛猫を見守る不安感などで、飼い主さんの負担は心身ともにとても大きくなりやすいです。

飼い主さんが体調を崩してしまったり笑顔になれなくなってしまっては、猫ちゃんも安心して過ごすことができません。愛猫だけではなく飼い主さんも幸せに過ごすことが目的のターミナルケアは、ひとりで頑張るのではなくチームで行うことが大切です。

積極的な病気の治療という選択肢のほかに「ターミナルケア」という選択肢も心に留めておくことで、愛猫と飼い主さんが共に幸せに過ごす方法の可能性が広がります。

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