猫が触られたくないと感じる体の部位
機嫌の良し悪しに関係なく、撫でるといつも愛猫に叱られてしまう。「私のこと嫌いなのかな」というお悩みを抱えている飼い主さんはいらっしゃいませんか?
それは飼い主さんが嫌いなのではなく、「撫でる部位」の問題かもしれません。猫の体には、触れられることに苦手意識を持つ部位が存在します。
これから紹介するのは、いずれもデリケートな部位です。警戒心が強い猫にとっては撫でられることを好まない部分として理解してあげましょう。
1.お腹
腹部は、内臓に近い部位であることから急所になります。たとえ信頼している飼い主さんであっても、積極的に撫でてほしいと感じるポイントではありません。
しかし、苦手意識が強い部位であるのにも関わらず猫は時々お腹を見せてゴロンと転がる仕草を見せてくることがあるでしょう。これは警戒心が薄れ、撫でてほしくなったということなのでしょうか?
残念ながらそうではありません。これは「遊ぼう」と誘うサインになります。あくまでも遊んでほしいという意思表示であり、お腹を撫でてほしいわけではありません。
また、暖かい室内で眠っているときに仰向けになる「ヘソ天」も、安心している証ではあるものの触れてほしいサインではありません。
2.しっぽ
しっぽの周辺には神経が集中しています。さらに脊髄と直結しており、負傷すると想像を絶するような痛みに襲われます。また、一歩間違えると内蔵や後ろ足に障がいを負う可能性があるほどデリケートな部分になります。
むやみに触れないように意識し、誤って踏んでしまうことがないように注意しましょう。そして、お子様がいらっしゃる場合は強く掴んだり、引っ張ったりしないように気をつけて見守るようにしてください。
3.肉球
人間には存在しない肉球は、ぷにぷにとした独特の感触を持ち我々を魅了します。また、肉球が放つにおいも特徴的で、まるでポップコーンのようであると表現されます。
人間にとって肉球は癒しの要素が強いですが、猫にとっては生きるうえで欠かせない大切なパーツになります。その主な役割は次のようなものが挙げられます。
- 足音を消す
- 唯一汗をかく部位
- マーキングする
- 衝撃を和らげる
- 滑り止めなど
猫が、気配もなく忍び寄ることができるのは肉球のおかげです。この能力は、厳しい野生の環境を生き抜くうえで重要になります。そして、汗腺を持たない猫が唯一汗をかくパーツは肉球になります。適度に汗をかき、肉球が潤うことで滑り止めやクッションの効果を発揮します。
4.足(特に後ろ足)
猫の足に触れると、さり気なく引っ込めるという様子が見受けられます。これは、まさに触れられることを嫌がるサインです。また、後ろ足の場合は、しつこく触れることで蹴りを入れられることがあります。
足に触れられことを拒む理由は、肉球を守るという意味合いが含まれています。クリームパンのような足先も、肉球も猫好きには癒しのパーツですが、猫にとっては大切なパーツになります。触れてみて嫌がるようであれば、しつこく触れることは控えましょう。
とはいえ爪を切る際に、足先には触れなくてはなりません。眠っている間に触れてみたり、一日一回爪の出し入れを行って慣れさせるようにしましょう。
5.背中
背中は撫でられることを好む猫がいる一方で、嫌がる猫もいます。背中を撫でたとき、そのまま撫でさせてくれる場合は撫で続けても問題ありません。しかし、何度も振り向くようであれば嫌がっている可能性が高いので要注意です。
背中にはしっぽと同様に、大切な神経が集中しているポイントです。嫌がるようであれば無理をせず、他の部位を撫でるほうが無難です。好んで撫でさせてくれる場合でも、強く叩くのはよくありません。優しく撫でるようにしましょう。
比較的撫でやすい部位
先ほど紹介した部位とは反対に、比較的撫でやすい部位があります。ある程度人馴れした猫であれば、うっとりした表情を見せてくれることもあります。
撫でるときは、まず人差し指を鼻に近づけて挨拶しましょう。好意を抱いている相手であれば、猫のほうから頬ずりしてくれるかもしれません。この行動が持つ意味合いは後で紹介しますが、撫でても問題ない状況なので、こちらも優しく撫ではじめましょう。
頬
頬には臭腺があり、人間に対して頬ずりすることで自分のにおいをつけることができます。一種のマーキングです。猫は好きな人にマーキングをすることで、自分の縄張りに取り入れます。
先ほど紹介したように、自分から頬ずりしてくれることもあります。そうではない場合も、優しく頬の辺りを撫でることで、うっとりした表情を見せてくれることがあります。これは素直に気持ちいいと感じていると受け取って大丈夫です。
頬をなでる際は、ヒゲを引っ張らないようにしてください。猫にとってヒゲは、平衡感覚を保つ・空気の流れを読む・動くものを検知して天敵から身を守るなど重要な役割を果たします。自然と抜け落ちる場合を除き、故意に抜いてはいけません。
おでこ
人馴れした猫であれば、額は比較的撫でやすい部位になります。親指や人差し指などで優しく撫でましょう。
この部位には人間のようにツボがあります。撫でることで自ずとマッサージ効果を発揮し、血行促進に繋がります。嫌がらずに身を委ねてくれるようであれば続けてみましょう。
耳の後ろ
耳の後ろ側は、前足で手入れすることはできるものの直接グルーミングすることができない部位にあたります。これは、その他にも撫でられて嬉しいと感じる部分に共通していえることです。
耳の後ろは、優しく掻くように撫でても喜びます。撫でられ方にはそれぞれ好みがあります。愛猫の好みの撫で方を探ってみましょう。
顎の下
信頼している相手であれば、顎の下は好んで撫でさせてくれます。その理由として、撫でられるときに人間の手が下から来るので恐怖を感じにくいことが挙げられます。
また、顎の下の臭腺は汚れやすく痒みを感じやすい部位でもあることから、撫でられると気持ちいいのです。猫が撫でられて嬉しいポイントを捉えることで、さらに信頼関係が深まります。
顎の下は人間でいうニキビができやすい場所です。撫でながらニキビができていないかもチェックしてみましょう。もしできているようであれば、潰すことは避けましょう。温めたタオルをあてたり、清潔なコットンなどで優しく拭くようにしてください。
猫を撫でるコツ
猫を撫でる際は、苦手な部位に気をつけることはもちろん、他にもいくつかポイントがあります。撫で上手になって猫との絆を深めましょう。
好む部位は個体差がある
撫でられて嬉しいと思う部位や、苦手意識を持つ部位は個体差があります。平均的に好むといわれる場所でも嫌がることがあります。
その逆で、一般的に苦手意識を持つとされる部位でも、撫でさせてくれる猫もいます。しっぽや背中など、大事な神経が関与している場所には注意が必要ですが、基本的には愛猫が好む場所を撫でてあげることが喜びに繋がります。
撫でながら健康チェックをする
スキンシップは絆が深まるだけではなく、さり気なく健康状態をチェックすることができます。改めてチェックするよりも自然な形になるため、愛猫にストレスをかけることなく行うことができます。
健康状態を確かめるポイントは以下の通りです。
- 不自然な腫れがないか
- 怪我や脱毛、フケがないか
- 撫でて痛がる素振りを見せることがないか
- 普段は平気な場所を極端に拒むことがないか
日頃から適度にスキンシップをはかることで、異変に気づきやすくなります。特に、いつもは喜ぶ部位に触れられることを急に拒むようになったり、痛がる素振りを見せたら要注意です。時間を置いてから再び触れてみても同様であれば、一度動物病院を受診しましょう。
優しく声をかけながら撫でる
撫でるときは単に撫でるだけではなく、優しく声をかけることも大切です。幼い頃から人間と暮らす猫にとって、飼い主さんの声は安心感を得られます。
コミュニケーションの一環として、撫でるときは声をかけながら撫で続けても良いか気持ちを確かめるようにしましょう。
しつこくしない
ある程度の信頼関係が築かれていれば、愛猫以外の猫でも撫でさせてくれるでしょう。しかし、一般的に猫はしつこくされることを嫌います。
撫でている最中は、次の項目で紹介する拒否の仕草に注目しながら触れ合うようにしましょう。そして、猫が「もういいよ」という意思表示を示したら速やかに解放するようにしてください。
猫のペースに合わせる
解放するタイミングはもちろん、触れても良いかどうかは猫次第です。犬は基本的に呼べば来て、その場で撫でても喜んでくれることが多いでしょう。
しかし、猫の場合は常に撫でてほしいと望んでいるわけではありません。猫の場合は、猫のほうから求めてきたときがチャンスです。しつこくしないように気をつけながら、喜ぶ部位に触れてあげましょう。
猫が撫でられることを拒む仕草
猫は日常でよく耳にする言葉を理解することができます。しかし、自分の気持ちを言葉にすることはできません。そこで、猫が拒否の姿勢を示す仕草を、我々人間が理解してあげることが大切です。
これを理解することにより、猫が不快な思いをしなくて済むと同時に人間も怪我を回避することができます。
イカ耳になる
猫は、警戒したり拒否の姿勢を示す際に、イカ耳と呼ばれるサインを出します。これは、耳を後ろに倒す仕草になります。このときのシルエットがイカのように見えることからそう呼ばれています。
撫でる前も、撫でている最中もイカ耳になっていないことを確かめるようにしましょう。イカ耳は、拒否の姿勢を示すサインの中でも比較的分かりやすい仕草になります。触れ合うときは耳の動きに注目しましょう。
しっぽをバタンバタンと床に叩きつける
猫は、気持ちよく撫でられていたかと思うと、突如攻撃をしかけてくることがあります。あまりに一瞬のできごとに驚く方も多いでしょう。
しかし、この攻撃には前兆となる仕草があります。それが独得なしっぽの動きです。猫は何かを拒むときや、継続を望まないときにしっぽを床や飼い主さんの腕に叩きつける仕草を見せます。
この行動は、イカ耳に比べるとやや分かりにくい仕草になります。だから襲撃に遭ってしまうのです。まずは、猫が突然攻撃してくるわけではないことを理解してあげましょう。そして、触れ合うときはしっぽの動きも確認してみてください。
唸る
唸り声をあげるのは犬だけではありません。猫も唸ります。猫が怒りを表現する最も分かりやすい鳴き声は「シャー」という特有の威嚇方法でしょう。
実は、この威嚇の前に唸ることが多いのです。ひとつ残念なのは、この唸り声は小さく聞こえにくいことです。周囲が騒がしいと余計に聞こえにくくなります。よって、先に紹介したような仕草を手がかりにするほうが分かりやすいでしょう。
ただし、唸り声は分かりにくいものの、触れていると振動することがポイントです。些細なサインではありますが、振動を感じたら触れることをやめ、表情を確認してみてください。しかめっ面をしていたら不機嫌になっていることを表しています。
まとめ
猫は束縛を苦手とする動物です。しかし、だからといって人との触れ合いを嫌っているわけではありません。
触れられると不快に感じる部位に注意しながら、スキンシップをはかりましょう。愛猫の好むポイントを理解してあげることで、より一層良好な関係を築くことができるでしょう。