猫の飼い主が秋に気をつけたほうがいいこと5つ

猫の飼い主が秋に気をつけたほうがいいこと5つ

秋は心地よい季節です。それは猫にとっても同じであり、よく食べて活発になるシーズンです。しかし、思わぬ落とし穴があることに注意が必要です。今回は、秋に多い猫の健康トラブルや健やかに過ごす方法について紹介させていただきます。

涼しくなっても油断は禁物!!秋のトラブル5つ

秋の景色を楽しむ猫

厳しい暑さから解放され、過ごしやすくなる秋。この時期は、人間だけではなく猫にとっても快適なシーズンです。しかし、油断は禁物です。猫と暮らす飼い主さんにとっては、秋の過ごし方が愛猫の健康を左右してしまうことがいくつかあります。ここでは、猫が抱えやすい秋のトラブルについて紹介させていただきます。

1.「食欲の秋」は猫にもある!

猫の晩餐会

快適に過ごせるこの時期は、食欲が出てきます。そう「食欲の秋」です。これは人間にのみに限定された言葉でなく、猫にも共通して言えることです。猫が秋になると食欲が増すのには次のような理由が挙げられます。

  • 夏バテから回復する時期だから
  • 寒さが厳しい冬に向けての体力作り

連日の猛暑で食欲が減退してしまっていた猫も、この時期になると回復してきます。体調が良くなり、自然と食欲が増加するのです。

猫の肥満に注意

また、これからやってくる冬に向けての体力作りを兼ねて、秋になると他の季節以上に食事を要求してくるようになる猫もいます。これは本能的なものなので、欲しがること自体は自然の行動です。しかし、家庭で暮らす猫にとって冬は、蓄えた脂肪で生きていかなければならないほど過酷な状況にはなりません。だから、欲しいままに食べさせることは避けなければなりません。

肥満は生活習慣病の原因になります。万が一糖尿病になってしまうと、人間以上に厳しい現実が待っているのです。よって「食欲の秋」という言葉に騙されず、食事の管理をするようにしてください。また、食べ過ぎは消化不良の原因になります。この頃下痢をすると感じたら、普段よりも多く食べていないか意識してみましょう。食事量の改善によって消化不良も解消されれば心配ありません。

2.秋バテに気をつけて!

暖を取る猫

夏バテという言葉はとても身近な言葉でしょう。では秋バテはどうでしょうか?あまり馴染みのない言葉かもしれません。近年は夏の暑さがとても厳しく、その暑さが落ち着いても尚体調が優れない状態を秋バテといいます。

猫は砂漠で暮らしてきた動物であるが故に、比較的暑さには慣れています。しかし、湿度が高い日本の夏の暑さは猫にとっては酷なものです。それと残暑が厳しいとなると、秋になったからといってすぐには元気に過ごせない猫もいます。秋バテは夏バテから延長してくる厄介な現象です。食欲が増す猫がいる一方で、この時期は体調が不安定になる猫も存在します。秋バテには主に以下のような症状が見られます。

  • 食欲不振
  • 元気消沈
  • 下痢や嘔吐

先ほども紹介したように、本来ならば本能的に食欲が出てくる季節になります。それにも関わらず、逆に食欲がなくなってしまう場合は体調不良のサインかもしれません。更に元気がない、下痢や嘔吐が見られるなどの異変があれば動物病院を受診するようにしましょう。

3.ブラッシングを強化しよう!

毛繕いをする猫

秋は「換毛期」です。換毛期は被毛が生え変わるタイミングのことで、この時期は夏の被毛から冬の被毛へも変化します。この変化の過程で、一時的にこれまで以上に毛が抜け落ちるのです。猫は綺麗好きなので、基本的には自分で毛繕いをすることができます。しかし、換毛期の猫には飼い主さんの手によるブラッシングが欠かせません。特に長毛種はブラッシングを怠ると、毛玉ができてしまったり、「毛球症(もうきゅうしょう)」になるリスクがあります。

毛球症とは?

毛繕いをすると、多少の被毛を飲み込んでしまいます。少量であれば自然と排泄されるため心配はいりません。しかし、換毛期によって多くの被毛を飲み込んでしまうと排泄が追いつかず、胃や腸に被毛が溜まってしまいます。この状態を毛球症といいます。これは重症化すると腸閉塞を引き起こし、手術が必要になったり、最悪の場合は命をも落としかねない危険なものです。

長毛種のほうが圧倒的にリスクのある症状ですが、換毛期においては短毛種も要注意です。長毛種の場合は毎日、短毛種の場合は最低でも週に一度、撫でてみて抜け毛が多いようであればもう少し頻繁にブラッシングをするように心がけましょう。

4.発情期の管理をする

アプローチする猫

猫の恋の季節というと、春を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろん春は恋の季節です。しかし春と同様に秋も猫の恋のシーズンになります。そして、この時期には発情が起こりやすくなります。猫にとっては発情は体に大きな負担がかかってしまいます。繁殖を望まない場合は尚更です。麻酔がかけられないほどの持病がなく、将来的に子孫を残さない場合は避妊・去勢手術をすることをおすすめします。

また既に手術が済んでいても思わぬ危険が潜んでいます。それは、予期せぬ脱走です。メス猫にアプローチする権利をかけた命懸けのバトルが、オス猫の世界では繰り広げられています。そこへ万が一迷い込んでしまった場合、喧嘩に巻き込まれてしまう危険性があります。冷房が必要だった夏とは異なり、窓を開けると心地よい季節は脱走のリスクを伴います。よって、日頃から完全室内飼育をしているご家庭でも注意するようにしましょう。

5.風邪に気をつけよう!

寝転がる猫

猫は寒さに弱い傾向にあります。一見快適な季節のように感じやすい秋ですが、季節の変わり目であるこの時期は、寒暖差が生じやすく体へのダメージが懸念されるときでもあります。夏バテ、秋バテの延長上には猫風邪が潜んでいることを忘れないでください。ワクチンにも猫風邪を引き起こすウイルスへの対策が含まれています。しかしこれだけで万全とはいいきれません。衣替えとともに、猫の寝具も冬仕様のものを準備するようにしましょう。室温の管理や食事の管理も意識するようにしてください。

秋も色々と注意が必要

秋は、以上のようなトラブルが多い季節になります。熱中症が恐ろしい夏が過ぎ去っても、まだまだ油断はできないということです。季節の変わり目は、人間にとっても体に負担がかかります。まずは、飼い主さん自身が健康に過ごせるように、日々の生活の中で工夫してみてください。そうでないと愛猫を守る余裕がなくなってしまいます。

そして愛猫も元気に過ごせるように、お手伝いしてあげましょう。この時期に多いトラブルの中で紹介した「猫風邪」については、次の項目で詳しく説明させていただきます。

猫の風邪と人間の風邪は全く違う!!

診察される猫

健康な人間が風邪をひいた場合、しっかりと栄養を取り、休息することで徐々に快方へと向かいます。もちろん油断は禁物です。人間の場合は、大抵の風邪は確実に治るものという認識があるでしょう。だから猫も風邪であれば、それほど心配ないのではないかと思われがちです。

しかし、猫の場合は人間のそれとは大きく異なります。それは治療しなければ治らないこと、更に一度感染すると一生涯にわたりウイルスが体内に残り続けるケースもあるということです。ここでは、決して軽く考えてはいけない猫風邪について紹介していきます。

猫風邪のウイルス

猫風邪を引き起こすウイルスは主に次の3種類が代表的です。

  • ヘルペスウイルス
  • カリシウイルス
  • クラミジア感染症

この3つのうち、「ヘルペスウイルス」「カリシウイルス」は一度感染してしまうとウイルスが体内に残り続けます。この2つに関しては、症状が落ち着いている寛解(かんかい)という状態を維持していくことが目標となります。免疫力が低下すると再びそのリスクに晒されてしまうのです。

猫風邪の症状

先に述べたウイルスに感染した場合、主に次のような症状が現れます。

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 目ヤニ

鼻炎のような症状をイメージすると分かりやすいかもしれません。これが代表的な症状です。そして更に、発熱や食欲不振などを呈する場合があります。

動物病院を受診するタイミングは?

猫風邪の多くは、抵抗力の弱い子猫に見られます。その場合、自然治癒を期待してはいけません。特にカリシウイルスは重症化すると、肺炎を発症する可能性があります。子猫の場合、肺炎になると命を落とす危険性が高まります。普段の様子とは明らかに異なる、くしゃみや鼻水が気になるほど出ていると感じたら、その時点で受診することをおすすめします。

治療期間や費用の目安

猫風の治療にはおおよそ1~2週間程度時間がかかります。この期間でしっかりと治療しなければ、更に時間がかかり費用も高くなります。通常の猫風邪であっても、費用は数千円~1万円程度はかかります。たかが風邪と甘く見ていると、命の危機だけではなく思わぬ出費に繋がるのです。

主な治療法

猫風邪は次のような方法で治療します。

  • 投薬治療
  • 点眼薬や点鼻薬
  • 吸入
  • インターフェロン注射
  • 点滴など

治療は対症療法を行う形で進められます。その時々の症状に適した治療薬を投与して様子を見ます。薬を投与する際に、気道や肺まで薬が届くように吸入という手段を用いる場合もあります。そして、目や鼻の炎症には点眼薬や点鼻薬を使います。

更に、ウイルスの増殖を防ぐ意味でインターフェロン注射を使用することも一般的な治療法になります。脱水や食欲不振が見られ、なかなか改善しない場合には点滴治療も行われます。猫風邪の治療は想像以上に大掛かりなものなのです。

このように、猫風邪は時間も費用もかかります。風邪をひきやすい季節の変わり目は、風邪をひいてから治療すると甘く考えず、予防に努めることが愛猫にとっても人間にとっても最良になるでしょう。特に子猫や高齢の猫と暮らす飼い主さんは栄養のある食事、適度な運動、睡眠など、猫にとって規則正しい生活が送れるようにサポートしてあげてください。また、ストレスもリスクファクターのひとつです。愛猫がストレスを抱えてしまわないように注意してください。

秋に気をつけたい植物

彼岸花

この時期に危険を及ぼすものは、秋バテや風邪だけではありません。植物も猫にとっては大変危険なものが存在します。特に秋という季節に限定すると、「ヒガンバナ」が代表的になります。

ヒガンバナは秋を代表する植物のひとつです。「再会」「また会う日を楽しみに」などの素敵な花言葉と、鮮やかな色合いが魅力的な花です。実はこの花には毒があり、動物にとっては非常に危険な植物になります。この毒を逆手に取り、動物避けとしてヒガンバナを利用することもあるのです。ヒガンバナ科の植物は以下のようなものが含まれます。

  • 彼岸花
  • スイセン
  • アマリリス

これらは全て猫にとって危険な花です。万が一食べてしまうと次のような症状が出現します。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 腹痛
  • ヨダレを垂らす
  • 血圧低下
  • 心不全

このように重篤な症状を呈し、摂取量によっては死に至る場合があります。これらの症状を引き起こす原因は、ヒガンバナ科の植物に「リコリン」という有毒成分が含まれているためです。もしも愛猫が摂取してしまった場合は至急、動物病院に相談してください。

秋の健康法

かぼちゃと猫

愛猫が健やかに秋を楽しむために、次のようなことを意識して過ごしましょう。

  • スキンシップを楽しむ
  • 運動をさせる
  • 寒さ対策をする
  • 食べ過ぎに注意しつつしっかりと食べさせる

暑い夏は距離をとっていた猫も、涼しくなるとそばに寄り添ってくれるようになることが多くなります。猫のほうからスキンシップを求めてきたときは、できるだけ応じてあげましょう。この時期に嬉しいことは、猫と触れ合う頻度が自然と増えることです。優しく撫でたり、話しかけたり、想い想いの時間を楽しんでください。

そして、元気に過ごすためにも運動は欠かせません。愛猫が楽しめるお気に入りのおもちゃで遊ぶ機会を増やしてあげましょう。こうすることで肥満を予防し、食事以外の楽しみに目を向けることができます。ただし食べ過ぎは禁物でありながら、しっかりと食事することも重要です。これは、風の予防や暑さで弱った体の回復に役立ちます。

まとめ

くるみ

秋は快適に過ごせる一方で、気をつけたいことも多い季節です。厳しい暑さが過ぎ去り、油断する時期でもあります。猫は本能的に忍耐強く、少々の体調不良は我慢してしまう傾向にあります。この特徴を理解して、気にかけるようにしてください。

そして、愛猫との触れ合いを楽しんでください。猫を撫でる行動は、猫と人双方にオキシトシンという物質を生成させるはたらきを持ちます。このオキシトシンは別名「幸せホルモン」と呼ばれています。その名の通り、幸福感が増しストレスを軽減させてくれます。秋の心地よい陽射しを感じながら、愛猫と窓辺でまったりと過ごすのも良いかもしれませんね。

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