猫に手術を受けさせる時の費用や注意点、術後のケアまで

猫に手術を受けさせる時の費用や注意点、術後のケアまで

猫を飼育している中である日突然猫が怪我をしたり、病気になって手術をしなければいけない事が少なからずあるかもしれません。猫がどんな時に手術をしなければいけないのでしょうか?去勢・避妊手術とともに猫が病気や怪我した際に受ける手術やそれぞれかかる費用面、注意点や手術後のケアについて紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫が手術を受けるのはどんなとき?

病院で手術を受ける猫

避妊、去勢

子猫の頃は追加ワクチン接種などで動物病院に行く機会があり、そのときに獣医師から「去勢(避妊)手術受けた方がいいですよ」と勧められると思います。猫の去勢手術や避妊手術は猫の成長期が終わる生後6か月ほどから受けることができます。

しかし中には猫の体に傷をつけたくない、手術自体が怖いと思う方がいると思います。去勢(避妊)手術も猫に麻酔をかけて行うため100%安心と断言できませんが、必ず手術する前に猫の一般状態を確認した上で手術を行っています。

猫に去勢手術・避妊手術を勧める理由は、猫は交尾することで排卵する動物なので、非常に妊娠確率が高くなるからです。去勢手術・避妊手術を受けることで望まない妊娠を防ぐことができます。

また発情期特有の行動(尿スプレーや甲高い鳴き声など)を減らし、生殖器系の病気(精巣腫瘍や乳腺腫瘍など)の予防にも繋がるからです。

猫に多い尿石症などの病気

ある日猫が「トイレに何回も行くがオシッコの量がが少ない」「トイレする時間が長く、辛そうな声を出す(排尿痛)」など、ふだんトイレをしているときと違う。そのような場合は泌尿器系の病気にかかっている可能性があります。尿路閉塞など命に関わる緊急性が高い場合は緊急手術をすることがあります。

特にオス猫の方がメス猫と比べて尿道が細長い構造のため、尿道閉塞をおこしやすいです。オシッコが全く出ないと腎臓に障害を受け、急性腎不全や尿毒症を発症し2〜3日ほどで命を落とす危険性があります。

尿道閉塞をおこした場合、一般的にはカテーテルを尿道に入れることで原因である結晶を除去しますが、カテーテルが入らなかったり、結晶の集まりである結石になってしまったりした場合は、外科的手術を行う必要があります。

骨折などの怪我

「猫が高いところから誤って落下し足を痛めている」「2階の手すりから1階に落ちて足をひきずっている」など足を庇って歩いていたり、明らかに歩き方がおかしかったりする場合は、骨折している可能性があり、手術をする必要があります。

室内飼いだから猫が怪我をすることはないと思われがちですが、室内飼いでも怪我をすることが少なからずあります。元々猫は高い所を好み、柔軟な体をもっているため優れたジャンプ力で楽々に高い所に登り降りすることができます。

しかし足元が滑ったり、何らかの理由でパニックになると、高い所からの落下事故で怪我をすることがあります。猫は本能的に腹部を守りますが、落下した際に腹部にも衝撃が及び、内出血を起こしている可能性があるためその場合も外科的手術が必要になることもあります。

猫の手術にかかる費用

獣医師の診察を受ける猫

避妊、去勢

猫の去勢手術および避妊手術にかかる費用は、動物病院によってそれぞれ異なります。およそ平均的な費用としては去勢手術の場合は約10000〜20000円、避妊手術は30000円ほどかかります。

犬や猫といったペット対象の保険がありますが、一般的な去勢手術・避妊手術は望まない妊娠を防いだり生殖器系の病気の予防、発情期特有の行動を抑制したりするなどの目的で、健康な猫に対して行う手術なため、保険対象外となり全額負担となります。

最近では動物病院のホームページに猫の去勢手術・避妊手術の料金が記載されているところもあるので、事前に確認するとよいでしょう。

猫の避妊去手術の助成金制度

基本的に猫の去勢手術・避妊手術は全額負担となりますが、住まいの地方自治体によっては「助成金制度」があり、自治体で猫の去勢手術・避妊手術の費用を負担してくれます。

しかし、地域や地方自治体によっては助成金制度自体が設けていない場合や、対象条件が飼い猫ではなく、野良猫や飼い主がいない猫などとそれぞれ異なるため、自分が住んでいる地域には助成金制度があるのか、あるいはどのような条件なのか知っておくとよいです。

病気(尿石症の場合)

入院費や処置代などトータルで10万円になる場合があります。手術の内容や猫の状態に合わせて投薬や治療内容などによって多少費用が変わってくることもあります。

ペット保険に加入していた場合は加入プランなどにより何割かは保険会社が負担してくれるため、費用を少し抑えることができます。保険会社によっては、負担額の限度額や保険使用回数制限などそれぞれ異なりますので、改めてプランの見直しをするといいかもしれません。

怪我(骨折した場合)

猫が怪我をして足を骨折し、手術した場合にかかる費用は、骨折の度合いや状態にもよりますが手術代や検査代、入院費、注射代などトータルで20〜30万円ほどかかる場合があります。

病気で手術をした場合と同様に、猫が怪我をして手術や治療を受けた場合、ペット保険の加入プランや対象条件であれば保険対象となり多額の費用を抑えることができます。

もし猫が足を骨折した場合、骨折している部位やその重症度にもよりますが骨折部位を修復させようと自然治癒力が働きます。しかし骨同士が異様な形でくっ付いてしまい、その結果骨格変性となってしまうため骨折部の整復手術を行う必要があります。

手術をする前に猫が骨折している部分の正確な位置やその断片などを把握するためにレントゲン検査を行います。また猫の一般状態や怪我した際に内臓面に損傷がないか確認のためにも血液検査も行います。

人と同様に猫も骨折し手術をした後は数日間は入院し、安静にさせる必要があります。猫の状態によっては点滴も入院中に行う場合があります。

猫が手術を受けるときの注意点

獣医師に聴診されている猫

手術前までにワクチン接種を済ませる

緊急手術を除いて去勢手術や避妊手術など猫を全身麻酔をかけて行う手術や処置の場合は、まず予約を入れます。

麻酔をかけて手術や処置を行う際は一時的に猫を預かります。動物病院には様々な病気や感染症にかかっている動物たちがたくさん来院してくるため預かっている間に院内感染をおこす可能性があります。

特に猫は猫風邪などの感染症にかかりやすく、一度感染するとウイルスが体内に残り慢性化したりしてしまうため、感染させないように手術前には必ずワクチン接種を受けさせます。

ワクチン接種してから1〜2週間ほどで抗体ができるため手術や処置をすることができます。

手術前検査

猫を全身麻酔をかけて手術や処置などを行う前に、猫に麻酔をかけて安全に手術や処置をできるかどうか血液検査を行います。肝臓や腎臓は麻酔薬を分解したり代謝を行ったりする臓器であるため確認する必要があります。

また猫は腎不全になりやすく高齢の場合もあれば、尿道閉塞で急性腎不全を引き起こすため腎臓の数値に異常がないかもチェックします。

生化学検査だけではなく血球系に関しても貧血や脱水をおこしていないか、炎症により白血球の上昇があるのか、血小板数があり止血機能に問題がなく正常に働いているかどうかも事前に確認を行います。

また手術の内容によっては血液検査以外にレントゲン検査やエコー検査などを行う場合があります。

手術前日や当日は絶食・絶水させる

猫に全身麻酔をかけると、消化管の働きが低下するため胃に食べ物がある状態だと吐いてしまいます。その際に嘔吐物が気管に入ってしまうと誤嚥性肺炎を引き起こしてしまい、命の危険があるため手術前日は絶食・絶水させます。

去勢手術や避妊手術など猫を麻酔かけて手術や処置などの予約を入れた際に必ず病院側から「食事は前の日の◯時までに済まし、水は当日の◯時まで」と説明されます。

動物病院によっては絶食・絶水時間が異なり、私が働いている動物病院では絶食は前日の夜21時まで、水は当日の朝6時までに済ませるように飼い主さんに説明しています。

絶食・絶水する際に隠れ喰いをしないようにフード管理に注意したり、同居猫のご飯を食べないように食事の与え方に気をつけたりしなければいけません。

もし猫が少しでも食べてしまった場合は必ず動物病院に連絡してください。特に去勢手術や避妊手術は基本的に猫が健康な状態の上で行いますので、場合によっては手術を延期することがあります。

猫が手術から帰ってきたら

術後服を着て眠る猫

傷口を気にしていじっていないか注意する

緊急手術の場合は入院させる必要がありますが、去勢手術や避妊手術は動物病院によって日帰りで済む場合があります。手術後は傷口に絆創膏や包帯などを付けるため猫が気にしていじったり、舐めたりしてしないか注意する必要があります。

縫合方法や縫合糸によっては手術後に抜糸する必要があり、いじって縫合糸が取れてしまい傷口が開く恐れもあるため、せめて抜糸が終わるまでは常に猫を目に届く範囲にいるように気をつけます。

抜糸が必要でなくても、舐めたりいじったりしてしまうことで傷口が赤く化膿することがあります。私が勤務している動物病院では抜糸が不必要な場合も手術してから後日後に傷口の確認で受診するように伝えています。

せめて手術後の診察が終わるまでは、猫が傷口を気にして舐めたりいじったりしていないか注意しましょう。傷口に気にしない猫もいますが、中にはとても気にする猫もいます。

その場合は首にエリザベスカラーを付けたり、手術後に着る専用の術後服を着させたりするなど、対策をする必要があります。

食事量を少なめに抑える

緊急手術以外の去勢手術や避妊手術などで手術当日に日帰りで退院する場合は、麻酔の影響で消化管の働きが低下しているため、手術当日の帰宅後は食事の量は通常の半分か1/3程度に抑えましょう。

またご飯を与える際は帰宅後2〜3時間ほどは猫の様子を伺い、猫からご飯を欲しがるようであれば与えるようにしましょう。

まとめ

女性獣医師に抱かれている猫

一般的に猫が手術を受ける場合は去勢手術および避妊手術が多いですが、尿石症などの病気や怪我をした場合にも、手術が必要になる場合があります。

診察料なども動物病院によって異なるため、去勢手術や避妊手術の費用も病院によって違います。
また緊急手術の場合についても猫の状態によって手術の内容や入院期間などによって費用が変わってきます。

最近ではペット対象の保険会社が増え、加入する方も年々増えています。

全て保険対象に思われがちですが、去勢手術および避妊手術は基本的に生殖器系の病気の予防や発情期特有の行動の抑制、望まない妊娠を防ぐ予防のために行うため保険対象外となり、全額負担となります。

また免責事項がある場合も保険対象外となるため改めて見直ししたり確認したりしましょう。

緊急手術以外の去勢手術や避妊手術など麻酔をかける手術や処置などを受ける際は予約が必要となり、それまでに感染症予防にワクチン接種を済ませます。

また手術前日〜当時まで絶食・絶水をさせる必要があるため必ず病院側の説明をよく聞き、隠れ食いしないように気をつける必要があります。
手術後に関しても、手術の内容や猫の状態によっては帰宅後もお家でケアをする場合がありますので、傷口の確認とともに注意する必要があります。

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