ワクチンで癌!?猫のワクチン肉腫とは?

ワクチンで癌!?猫のワクチン肉腫とは?

過去にはワクチン肉腫と呼ばれていたのですが近年ではワクチン以外の注射でも発生するといわれており注射部位肉腫と呼ばれるようになりました。非上皮系悪性腫瘍なので針を腫瘍に刺して検査する細胞診では確定診断をすることは困難であり、局所浸潤性も強いので中途半端なサージカルマージンでは再発することが多い困った腫瘍です。今回はいかに発生させる可能性を下げるかについてお話し、願わくは注射回数や部位について少しでも考えていただきたく思います。題名で癌と肉腫を混同させるような書き方をしたのですが、その方が飼い主さんがわかりやすいかと思いあえてその記載にしました。発生的に異なるとのツッコミはご容赦ください。

ワクチン接種で腫瘍形成!?

ワクチンの接種を受けるグレーの猫

猫の3〜5種混合ワクチンの接種、毎年皆さん愛猫ちゃんたちにされていると思うのですが、ワクチンを打つことで腫瘍が形成される可能性があることをご存じですか?

その名も「ワクチン肉腫」といっても、これは古い呼び名で現在は一般的に注射部位肉腫と呼ばれています。

ではなぜ、ワクチンを打つことで腫瘍ができるのでしょうか?

ワクチン肉腫って?

ハテナマークとグリーンの瞳の猫

先にも述べた通り、ワクチン接種だけで形成される訳ではないので、現在は注射部位肉腫と呼ばれています。

発生が問題視された当初、発生部位とワクチンとの因果関係が強く疑われたため、ワクチン肉腫と言われていたのですが、ワクチン以外の様々な薬剤の注射でも腫瘍を形成することがわかったので、注射部位肉腫と呼ばれることが多くなりました。

この呼び名はいわば俗称で、病理診断での診断名としては線維肉腫として返ってくることが多い非上皮系悪性腫瘍です。

ワクチン肉腫の原因は?

ワクチン

発見のきっかけとしては、「何かワクチンを打ったところに腫瘍ができること多いよね?」ということから始まり、疫学的に関連付けられました。

当初は、ワクチンに含まれるアジュバンドと言われる成分が引き起こしていると考えられましたが、それを含まないワクチンでも発生することが確認されたので、それ以外の原因があると考えられました。

現在でもはっきりとした原因は判明していないのですが、ワクチン、抗生剤、ステロイド、インスリン、手術時における縫合糸などにより発生すると報告されています。

ですのでワクチンを含む、どの成分が原因というよりも、局所的な炎症が起こることが原因と考えられています。

どれくらいの確率で発生するの?

同じ方向を向いたたくさんの猫たち

現在までに報告されている「ワクチン接種後に肉腫を発生した症例」の論文ですと0.1〜0.01%と言われており決して多くはありませんが、あくまでワクチンを接種した場合だけの確率なので他の注射でも発生していると考えると実際はもう少し多いと思います。

また発生時期としては数か月〜数年と定まらないのでいつ何時発生するかわかりません。

どこに発生するの?

背中にワクチンを打たれる茶トラ猫

ひと昔前ですと、ワクチンは打ちやすいところに打っていたと思いますので、肩や背中に打たれたことがある猫ちゃんは多いと思います。
統計的にみると、やはり接種された場所に発生することが多いのですが、それ以外の場所に出ることもあります。

でもワクチンを打たないわけにはいなかいし…。

そこで今現在、推奨されているのは仮に発生してしまった場合でも、手術により切除しやすい場所に接種しようという試みです。

昔ながらの肩や肩甲骨間に発生した場合、完全切除が難しく取り残してしまう可能性が高いです。

どこが切除しやすいのか?

可哀想なお話なのですが肉腫がひどくなった場合を考えて最悪断脚ができる、後肢に接種することが多いです。

最も良いとされているのは尻尾に接種する場合なのですが、デリケートな尻尾に接種することは至難の業で、猫ちゃんも凄く痛がるので私はやりません。

最悪、尻尾ごと切断しても日常生活に与える影響が少ないので、尻尾が良いとされているのですが少し乱暴な考え方のように思います。

治療はどうすればいいの?

手術台の上で横になる猫

基本的に、外科切除がメインになってきます。

抗がん剤や放射線療法を補助的に行うことはありますが、これらの方法は固形ガンに対しては反応が悪く、根治を目指すのであれば外科的に完全切除するしかありません。

性質上、遠隔転移する可能性は高くはないようですが、発生した場所での広がりは急速で、外科的に切除しても再発することは多いようです。

早期発見、早期切除が一番有効な方法ということになります。

最後に

獣医師に抱かれている猫

どんなに気をつけていても、ワクチン以外の注射でもものすごく低確率で腫瘍が発生することはあります。

予防的措置で発生した場合に備えて、切除しやすい場所に打つという考え方もわからなくはないですが、ワクチンに関して言うと、できるだけ接種回数を減らすことが最も効果的ではないのかと思います。

近年では、ワクチンは毎年接種しなくても抗体を維持できるといわれており、またワクチン接種により重篤なアレルギー反応を起こすこともあるので、打つ回数が少ないに越したことはありません。

愛猫ちゃんを守るために、接種回数や接種部位に気をつけてあげて、ワクチン接種の際は獣医さんとよく相談してから打つのがいいですね!

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