猫の歯茎が腫れる原因と治療法

猫の歯茎が腫れる原因と治療法

猫の口をめくると歯茎が腫れている、赤くなっている、出血している、顔が腫れて膿が出ている、そんな症状が現れた時に考えられる原因として、歯周病などの歯茎の病気があるかもしれません。もし猫の歯茎が腫れてしまったときの原因と治療法について記事にしました。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の歯茎が腫れる原因

猫の歯茎

口内炎

猫の口内炎の一般症状として、歯茎の出血や歯茎の腫れ、痛みからの食欲低下などが挙げられます。主な原因として、歯石がひどくついている、口の中に魚の骨が刺さっているなど、口の中の異物が炎症を引き起こすこともあれば、猫の免疫力が落ちることで歯茎の腫れを引き起こす場合もあります。

歯肉炎

猫で歯肉炎はとても多い病気のひとつです。主な症状は歯茎の腫れであり、高齢の猫では、ほぼ100%発症していると言われています。主な原因は、歯石がついて、歯茎と歯肉の間に細菌が増えることで炎症を起こします。

歯周炎

猫の歯肉炎がさらに進行した病態のことを差します。歯周炎は、歯茎だけでなく猫の顎の骨まで症状が進行しており、歯茎の腫れだけではなく、膿が出る、口が臭う、歯がグラグラしてくるなどの症状が現れます。歯周炎まで症状が進行すると痛みを伴うことも多く、猫の食欲が落ちることもあります。

歯周病(歯槽膿漏)

猫の歯周病は、歯肉炎と歯周炎を合わせた病態のことを差します。つまり、歯肉炎、歯周炎を治療せずに放置すると歯周病となります。

猫が歯周病まで進行すると、歯石や歯垢に潜む細菌によって歯茎や顎の骨などの歯周組織にまで炎症が起こります。歯周組織にまで炎症が進行すると、歯を支えている顎の骨が痩せて歯がグラグラになり、最終的には猫の歯が抜け落ちてしまいます。

猫の歯茎が腫れている際の治療法

獣医と猫

歯石を除去する

基本的には猫に全身麻酔をかけた状態で、スケーラーやキュレットと呼ばれる金属器具や、超音波洗浄機を用いて、歯や歯茎の間についた歯垢や歯石、食渣などを綺麗に取り除きます。

猫に全身麻酔をかけずこの処置を行うと、猫が暴れてしまい、うまく処置ができない、怪我をするなど、機械を用いるので2次的な事故を引き起こしてしまう危険があります。

猫に全身麻酔をかける場合は、必ず全身状態を評価して問題がなければ処置を行います。

抜歯する

猫に歯石除去を行っても、歯茎や歯周組織の炎症がかなりひどい場合や、すでに歯がかなりグラついている場合は、抜歯の適応となります。猫の場合、犬と比べて歯石を綺麗にした後も歯磨きのケアが難しい子が多いので、歯周病がひどい場合、予防的に抜歯を勧めることもあります。抜歯は猫に全身麻酔をかけて行います。

抗生物質や炎症止めのお薬

猫の歯石を除去した後、抜歯した後にお薬を服用します。処置を行わずにお薬だけ飲ませて、一時的に症状が改善することもありますが、お薬をやめると再び痛みが出てくるなど、さらに症状を進行させてしまう可能性もあります。

猫に全身麻酔がどうしてもかけられないような病気があると、お薬のみで治療せざるを得ない場合もありますが、基本的には歯周病も口内炎も、猫に全身麻酔をかけて歯石を綺麗に取り除き、必要に応じて、抜歯をしてからお薬を服用することが一般的な治療法となります。

猫の歯茎の腫れを予防する方法

ご飯食べる猫

食事の改善

猫の歯茎の腫れには歯垢がつきにくく、歯石ができにくいフードにしましょう。具体的にはやわらかいウェットフードは歯に残りやすいので、ドライフードのほうがお勧めです。

逆に硬すぎるものを猫に与えると、歯や歯茎を傷つけて、歯が割れてしまう危険があるので、与えないようにしましょう。魚の骨や歯に挟まりやすいものも、口の中を傷つけて口内炎を引き起こす原因となりますので猫に与えるのは控えましょう。

歯磨き

猫が口の中を触らせてくれる場合は毎日歯磨きをしてあげましょう。歯垢はブラッシングで落とすことができますが、歯垢が歯石になってしまうと歯磨きでは落とせません。

ただし、猫が歯ブラシを嫌がるようであれば、口を触る練習から始めましょう。人差し指にガーゼや歯磨きシートを巻き付け、歯の表面を磨いてあげるだけでも効果があります。

それでも難しければ、歯磨きジェルを指につけて猫の歯茎に塗ってあげる、飲ませるタイプのデンタル用品を用いてみるのもひとつです。すごく嫌がる子もいますので無理をせずできる範囲で行いましょう。

猫の歯茎の腫れから出血や膿が出ている時の方法

獣医師と灰色の猫

もし猫の歯茎から腫れて出血している、膿が出ている場合は、歯周病まで進行している可能性があり、触ると痛くて嫌がる子が多いです。無理に触ろうとして噛まれると危険なので、できるだけ触らないでください。

猫の口からダラダラしきりに出血している場合は、歯が抜けている、もしくは歯茎以外の場所から出血している可能性もあるので、すぐに動物病院を受診しましょう。

膿が出ている場合は歯肉が化膿を起こしている状態です。痛みが強く、顔やあごの皮膚が破れて膿が出る場合があります。出血じゃないからといって様子をみていいわけではなく、猫に適切な処置を受けるため、必ず動物病院を受診するようにしましょう。

まとめ

指を口に入れられた猫

猫の歯茎が腫れるというのは決して珍しい症状ではありません。早めに気づいて治療することで進行を抑えることができます。

猫の歯茎が腫れることは、お口の中だけの問題ではなく、悪化すると歯周病によって猫の心臓や肝臓、腎臓のような重要な臓器に細菌が広がってしまうこともあり、注意が必要です。

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