猫の体は持ち上げると長く伸びるのはなぜ?
猫が体を伸ばしている時や抱っこをした時、「猫ってこんなに長いの!?」とびっくりするほど伸びますよね。なぜ猫の体が柔らかくてよく伸びるのかの理由には、人とは異なる猫の体の仕組みが大きく関係しているのです。
内臓が少ないから
猫の体が驚くほど伸びる理由の1つに、体の中で内臓が占める割合が少ないことが挙げられます。
猫は肉を主食としていますが、肉は穀物や草よりも早く消化・吸収ができることから、肉食動物の腸は短い作りになっているのです。
腸が短いと内臓を脊椎で支える必要性が低く、動きや向きに応じて柔軟に内臓の位置を動かせるため、人間ではまずあり得ないような体のひねりや伸びが実現できます。
体が柔らかいから
猫は関節や椎間板・靭帯の柔軟性がとても高く、動かせる範囲が非常に広いために、痛めることなく体を伸ばしたり丸めたりすることができます。
また、人間で言うところのトップアスリートのようなしなやかで柔らかく反応の良い筋肉を持つことも、自由自在な体の動きを可能にしているのです。
ルーズスキンがあるから
猫のお腹から後ろ足にかけて、皮がたるんでいるかのように見える部分があります。
ただのたるみではなく、「ルーズスキン」と呼ばれるとても柔らかい皮膚で、猫がけんかをした時や襲われた時などに内臓のダメージを最小限に留める大切な役割を果たしている部分です。
ルーズスキンは、猫の種類・性別・肥満の有無とは関係なく、成長に伴って現れます。
首の皮やルーズスキンと言ったよく伸びる皮があるおかげで、伸びをしたり急に動き出しても、皮膚がつっぱらないようにしてくれているのです。
人間より腰椎が多いから
猫は小さいながら人間よりも骨の数が多い動物で、体全体で言うと人間は206本、猫は244本もの骨から成り立っています。
猫の脊椎は頚椎が7本、胸椎13本、肋骨13本、腰椎7本、仙椎3本で構成されているのですが、それぞれが椎間板と靭帯で柔らかく繋がっていて、バネのような役割を果たすことで様々な動きを可能にしているのです。
また、腰椎の数が多いことで腰を上下左右と自在に動かすことができるため、腰をそらしたり丸めたりするのも難なく行えます。
猫の体はどのくらい伸びるの?
猫の体は人と比べて非常に自由度が高いですが、猫が持つ関節もまた、よく伸びます。
猫の関節は通常の状態の約2倍伸びると言われ、全ての関節が伸びた状態では、普段の体長よりも2〜3割ほど長くなります。胴体だけでも相当伸びるのですが、さらに手と足の長さが加わると、通常の体長の1.5〜2倍にもなるのです。
体長は猫種によって違いはありますが、体長50cmの猫であれば75〜100cmほどと、人間の子供に匹敵するくらいの長さになることもあります。
- 腰椎や胸椎などの骨の多さ
- 柔らかい椎間板と靭帯
- 伸縮性の高い関節
- よく伸びる皮膚
- 向きによって位置を変えられる内臓
などの猫の体の仕組みが柔軟さを作り出しているのです。
猫が体を伸ばす理由
猫が体を長く伸ばす行動は寝起きの時によく見かけますが、実は寝起きの背伸び以外にも行っています。
猫は、どのようなことを思って何を目的に体を伸ばしているのでしょうか?
準備体操をしている
猫は元来狩りをする生き物で、獲物を獲る時には瞬発力を発揮して素早く動く必要があります。猫と猫のけんかや外敵に襲われて逃げる時も、すぐに動き出せるようにしておかないと捕まってしまいます。
そのため、猫は日頃から準備体操として体を伸ばすことによって、ここぞと言う時にすぐに動けるようにしているのです。
確かに、人間も準備運動をしておかないと急には動けませんよね。
寝る準備をしている
猫が体を伸ばした後に、いつも寝ている場所に行って毛づくろいなどをしてから眠る場合は眠くなってきた時のサインです。
普段一緒に寝ている猫であれば、「そろそろベッドに行って寝ようよ〜」とアピールしている場合もあります。とても安心している様子で伸びている時は、優しく撫でるかそっと見守ってあげましょう。
リラックスしている
飼い主さんの前で伸びている時は、とてもリラックスした状態であることがうかがえます。
猫がお腹を見せて転がったり、すぐに逃げられる体勢を取っていない場合は、猫が安全な場所と認識している・信頼関係が築けている証拠と言っても過言ではありません。
中にはリラックスしているだけでなく、伸びをすることで遊びに誘ってきている猫もいるので、その場合は一緒に遊んであげると喜びますよ。
不安をほぐしている
猫が不安や緊張・ストレスを感じた時、不安をほぐしたり気を紛らわせるために「葛藤行動」をします。
葛藤行動には、失敗した後に何事もなかったかのように毛づくろいをする、爪を研ぐ、手を伸ばすなどのバリエーションがあります。飼い主さんは見ていてかわいいなと思う行動ですが、猫としては気持ちを切り替える意味を持っています。
夏バテしている
暑い季節になるとよく見られるのが、だらしない格好で伸びて寝ている猫の姿。あまりの暑さに「溶ける」と言われる通り、夏バテ気味の時にも伸びてしまいます。
猫は人間と違って汗による放熱ができない代わりに、体を伸ばして面積を大きくすることで熱を外に出しているのです。暑い時に愛猫が伸びて寝ていたら、28度程度で冷房をつけてほどよい室温にしてあげましょう。
飼い主に甘えたい
猫はいわゆる「ツンデレ」気質と言われることもありますが、まさにその通りなのかもしれません。
飼い主さんに素直に甘えたい気持ちや興奮を、伸びによって落ち着かせている場合もあります。
膝の上に乗ってくる、体を触ると伸びるなどは甘えている気持ちを表してくれているサイン。ぜひ存分に甘えさせてあげてくださいね。
ストレッチをして体の柔らかさを保っている
私たち人間はストレッチやヨガを取り入れて体の柔軟性を上げようと努めますが、猫も同様で、伸びをすることでしなやかな柔らかい体を保っています。体が柔らかければ反応も鈍らないため、いざという時にすぐに動くことができるのです。
また、猫は長い時間寝ているので、寝起きの固くなった体をしっかりとほぐすことにより血液の流れを良くして代謝を上げる目的もあります。
猫の伸びで分かるリラックスのサイン
猫の伸びには色々な体勢がありますが、伸び方によってはリラックスのサインを出してくれていたりします。愛猫がどんな伸び方をしているかを見てリラックスのサインを読み取れると、より良いコミュニケーションに繋げられるかもしれません。
飼い主の前で伸びをする
猫が飼い主さんの前で無防備に伸びたり、足元に擦り寄ってきて伸びるのは安心しているサインです。飼い主さんのことを信頼していて、現在の環境が満ち足りていると思ってくれています。
また、横になって目の前で伸びる時は、甘えているもしくはかまって欲しいサインであることも。撫でたり遊んだりと、愛猫との時間を充実させてみてください。
手をクロスさせて伸びる
猫が伸びている時に手がクロスしているのを見たことがあるかもしれませんが、こちらも猫が心からリラックスしている証拠です。
外にいる野良猫ではまず見られないポーズで、「今いる場所が安心できる」と思っている場合にこの体勢を取ります。一見ちょっと気取っている感じがしますが、幸せを感じてくれているからこそのポーズなのです。
へそ天状態で伸びる
猫がうつ伏せではなく仰向け(へそ天)の状態でお腹を見せたまま伸びているのは、攻撃されたり危害を加えられることが無いと判断していると言えます。
お腹は猫にとって弱い場所なので、弱点を晒している体勢=リラックスしているサインと言うことです。
こんなに長く伸びる猫たち!
弓なりに反った伸びからひねりを加えた伸び、仰向けの伸びなど、とても可愛くて見ていて癒される、猫の「伸び」のポーズを収めた写真を5枚集めてみました!
飼い猫によく見られる体勢も多いので、猫たちが一体どんな気持ちで伸びているのか、ぜひ想像しながら見てみてくださいね。
寝起きなのか、腰を高く上げてぐい〜っと伸びている様子。肩甲骨や背骨もしっかり伸びてとても気持ちよさそうです。このポーズ、人間では肩こりにうってつけですが、猫も毎日のストレッチとして取り入れているんですね!
毛布の上で伸びてお腹を見せつつ、スヤスヤと眠っています。ひねりも加えているので猫の体の柔軟性がよく分かる1枚ですよね。よほどリラックスして安心しきっているのでしょう。
なんと白目を剥きながらバンザイしちゃっています!「もう何をされても良いです〜」と言わんばかりの無防備さでかわいいですね。もしかしたら何かの夢を見ているのかもしれません。
遊びの最中に弓なりに体を反らせる猫。よく見かける光景の1つでもありますね。人間がこんなにも体を反らせてしまった時はもれなく腰を痛めそうですが、猫にとってはへっちゃら。猫の体の作りだからこそ成せる技です。
「伸び」には見えない体勢ではありますが、クルッと丸くなるのもれっきとした伸びのポーズです。まぶしいのか疲れてしまったのか、顔を隠す「ごめん寝」のポーズもしながら落ち着いて眠っているのがかわいいですね。
まとめ
猫を抱き上げた時に長く伸びる理由は、
- 向きや動きによって内臓の位置を変えられる
- 筋肉や靭帯が柔らかく動かせる範囲が広い
- お腹から後ろ足にあるルーズスキンがよく伸びる
- 人よりも腰椎の数が多く腰を自在に動かせる
など、猫が人とは異なる仕組みの体を持っているからです。
猫の関節は伸縮性が高く、伸ばすと通常の2倍程度になり、体長50cmの猫なら75〜100cmもの長さになります。
体を伸ばす行動はストレッチ目的だけでなく、準備運動・気分転換・夏バテ・飼い主さんへ甘えたいなど、様々な感情や意図がうかがえます。
どうして伸びているのかを読み取るのは簡単ではありませんが、愛猫とのより良いコミュニケーションをはかるためにもぜひ観察して見てくださいね。