猫にするべき『寒さ対策』5選

猫にするべき『寒さ対策』5選

猫は寒に弱いという印象が、強く我々の中にインプットされているでしょう。しかし、実際には必ずしも弱いとは限りません。今回は、寒さ対策をテーマに、猫と寒さの関係についてご紹介いたします。

SupervisorImage

記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

愛猫を寒さから守るためにできること

包まる猫

段々と冷えを感じる季節になってきました。そろそろ、ストーブやこたつが活躍しはじめているご家庭もあると思います。そしてこの時期は、人間だけではなく猫も着々と冬支度をはじめています。秋の換毛期を経て、モフモフ感が増してきたのでは無いでしょう?

冬は、猫の被毛が最も美しくなる季節です。さて、猫自身の体は冬支度をはじめているようですが、飼い主さんは愛猫のためにどのような寒さ対策をすれば良いのでしょうか?ここでは、愛猫を寒さから守るための対処法をいくつかご紹介いたします。

1.冬用の寝具に衣替え

寝具に興味を持つ猫

朝晩の冷え込みが目立ってきたら、夏仕様の寝具から冬用の寝具に衣替えすることをおすすめします。タイプは主にドーム型とクッション型があります。ドーム型のほうがより寒さを防ぎやすい構造になっていますが、中にはドーム型のベッドを好まない猫もいます。だから、タイプは愛猫の好みに合わせたもので良いでしょう。さらに、ベッド自体を好まない場合は、ダンボールにバスタオルやブランケットを敷いた簡易的なものでも寒さ対策になります。

2.ブラッシングをしてあげる

ブラッシングをする猫

猫は寒さを感じると、被毛を逆立てて空気を取り込むことで暖を取る習性を持っています。ブラッシングには、被毛に空気を取り込みやすくする作用があります。さらにブラッシングにより、皮膚に程よい刺激が加わり、新陳代謝を上げる効果や血行促進効果が得られます。飼い主さんが猫の習性を活かしながら手を加えてあげることで、より空気を被毛にとどめることができ、体内に毛玉が詰まってしまう毛球症を防ぐことができます。

3.こたつ

眠る猫

こたつは、暖を取る手段として猫にも人気があります。有名な童謡のように、実際には暖かい環境で体を丸めることはありませんが、こたつを好む猫が多いのは事実です。徐々に冷え込むようになってきたこの時期は、こたつを楽しみにしている猫もいるでしょう。暖かい場所を猫と共有することができるのも、猫好きとしては嬉しいひと時です。猫が人間用のこたつを使用する際は、次のようなことに気をつけるようにしてください。

  • 設定温度
  • 低温火傷
  • 酸欠
  • 脱水
  • 熱中症

設定温度はやや低めに設定してください。そして、低めに設定している場合でも低温火傷には気をつけましょう。低温火傷とは、40~50℃の低い温度に長時間触れることで起こる火傷のことです。通常の火傷とは異なり、低温火傷は気づきにくい傾向にあります。猫の場合は特に被毛に覆われているため、さらに気づきにくくなってしまいます。

同じ場所をしきりに舐めたり、気にしている様子が見受けられたらその部位をよく確認するようにしてください。また、見落としがちなのは酸欠・脱水・熱中症のリスクです。人間用のこたつは本来、足元を温める役割を果たすものです。こたつの中に全身を入れることはないでしょう。よって、こたつには通気口がありません。厚手のこたつ布団で密閉されたこたつ内は、熱がこもりやすく、保温性に優れた構造になっています。だから、猫のように全身を入れてしまう場合は要注意なのです。

猫がこたつに入っているときは、時々布団をめくり空気を入れ替えましょう。そして、あまりにも長時間出てこない場合は、一度こたつから猫を出すか、こたつ自体の電源を切るようにしましょう。また、新鮮な水を飲める環境を整えておきましょう。夏場ではないので、意識することがないかもしれませんが、こたつが原因で熱中症になってしまうこともあります。猫がこたつで寛ぐ姿は可愛らしいですが、安全のために気を配るようにしましょう。猫用のこたつを使用する場合も、念のため気をつけるようにしてください。

4.ホットカーペット

寛ぐ猫

ホットカーペットは敷くだけで暖を取れるので、とても便利です。そして、こたつと同様に猫に人気があります。多頭飼育をしているご家庭では、ホットカーペットのあちこちに猫が転がっている癒しの光景が冬の楽しみとなるでしょう。

ホットカーペットは、こたつのように密閉されたされた状態にはならないので、酸欠になる心配はありません。しかし、低温火傷になるリスクはあります。猫は人間に比べ、熱を感じにくい体をしています。その理由は、猫の平熱は38.0℃と人間よりも高く、皮膚も厚くなっていて、さらにその皮膚を被毛が覆っているからです。これらの特徴は、熱から身を守ってくれそうに感じますが、そうではありません。

ジワジワと熱にやられ、低温火傷の発見が遅れてしまいやすいのです。よって人間用、猫用ともにホットカーペットを使用する際は設定温度に注意して、よく様子を見るようにしましょう。

5.室温の管理

暖を取る猫

猫が快適に過ごすことができる空間は、室温が18~26℃程で、湿度が50~60%程度の環境です。これは、人間とほぼ同じです。猫は寒さに弱いイメージがありますが、ちょうど良いと感じる室温や湿度は我々の感覚とそれほど差がありません。だから、暖房器具を総動員させて必要以上に暖かい環境を作らなくても大丈夫なのです。猫のいるご家庭で注意が必要なのは、常に暖かい環境ではなく温度差です。猫は温度差が激しい環境では体調を崩してしまう恐れがあります。エアコンの入タイマーや切りタイマーなどを上手く活用して、外出中でも程よい室温を保てるように工夫しましょう。

人間にとっても身近な暖房器具は、猫にとっても暖を取るための身近な手段になります。手軽に暖かさを求められ、冬の定番となるものも思わぬ危険が潜んでいることを忘れないでください。

この他にもある寒さ対策

猫の寒さ対策としては、ここで挙げた5つ以外にも湯たんぽやストーブなどがあります。湯たんぽは温度に気をつけましょう。使用する際は厚手の布で覆うか、ある程度温まったところで撤去するようにするとより安全です。最近では電気あんかも普及しています。これはコンセントで繋ぐタイプなので、お湯を入れたり電子レンジで温める手間を省くことができる画期的なアイテムです。猫の寝具を温めるために使用する場合は、様子を見て放置せずに必ず撤去してください。

ストーブも同様に、作動させたまま放置することは絶対にやめましょう。そして、温風が出る部分に直接触れてしまわないようにストーブガードを設置するなど気をつけてください。愛猫が興味を持っているようであれば、囲いで覆うようにすると安全に使用することができます。怪我や事故はもちろんのこと、火災にも気をつけるようにしましょう。

侮らないで!!冬の留守番

外を眺める猫

夏場は危機感を覚えるほど暑く、猫を留守番させる際にも熱中症対策を意識するでしょう。しかし、冬場は室内を暖かくしておけば安心と過信してしまいやすいのです。先の項目でも紹介したように、人間と猫が快適に過ごせる室内環境はほぼ同一です。

ただ闇雲に室温を上げてしまうと、冬場でも熱中症や脱水を引き起こす可能性が十分に考えられます。猫だけで留守番をさせる場合は、季節を限定することなく注意が必要だと意識しておきましょう。冬場は特に次のようなことに気を配りましょう。

  • いつでも水分補給ができる
  • 敢えて涼しい場所も用意する
  • 猫用の寛ぎスペースを複数整えておく
  • ストーブは作動しないようにチャイルドロックなどで気をつける

注意するべき点は

夏は熱中症対策として、冬場は乾燥対策として水分補給がいつでもできる環境を整えておくことが大切です。乾燥は人間と同様に、ウイルス感染のリスクファクターになります。また、猫ならではの問題としては、冬場はあまり水を飲まなくなる傾向にあります。

これは、寒さからそれほど水分を欲していないのだと誤解してしまいがちです。そして水分を控えたままの状態が続くと、腎臓や尿路系の病気を引き起こす恐れがあります。愛猫が好む温度、飲みやすい器などを日頃から把握しておきましょう。そして家を空ける際は、進んで水を飲んでくれるように工夫しましょう。室内の環境としては、暖かい空間とやや涼しいと感じる空間のふたつを用意することです。

これは、留守番中に万が一暑くなってしまった場合の避難場所を確保するためです。ケージに入れて留守番をさせる際は、直接暖房が当たらずに尚且つ寒すぎないように気をつけましょう。ケージ内に暖を取る猫用ベッドを入れておくと安心です。室内で自由に過ごせるようにしている場合は、猫用ベッドや段ボールなどを複数箇所に設置しておきましょう。こたつやホットカーペットの電源は切っておきましょう。

また、ストーブを使用している場合は、作動させられないようにしてください。猫は賢い動物です。あたかも関心がないように見せかけて、飼い主さんの行動をよく観察しています。そして、ストーブもスイッチを押すことで作動することを覚えます。ストーブ本体に「チャイルドロック」の機能があればそれを利用し、ない場合やロックだけでは不安と感じる場合は、コンセントを抜いて束ねておきましょう。

猫は寒がり!?その実態とは?

雪景色を眺める猫

「猫は寒さに弱い」は、もはや信じて疑わないほど我々の中で通説となってるでしょう。しかし、実際には全ての猫が寒がりというわけではありません。先ほどの室温や湿度がそうであるように、猫も寒さに対する耐性はある程度備わっています。ここからは、寒がりの猫と寒さに強い猫の特徴についてご紹介いたします。

冬はやっぱりこたつ派!!寒がり猫の特徴

有名な童謡に「♪猫はこたつで丸くなる♪」という一節があります。猫は厳密にいうと暖かい場所では丸くなりません。しかし、寒がりの猫にとっては、庭で駆け回るよりもこたつで暖を取りながら寛ぎたいと望んでいるでしょう。このように寒がりの特徴を持っているのは、以下のような猫です。

  • 短毛種
  • 高齢の猫
  • 月齢が幼い子猫
  • 運動不足な猫

短毛種は被毛が短いので、イメージしやすいでしょう。短毛の猫も自分自身の被毛を逆立てて、空気を取り込むことを実行しています。しかし、長毛種と比較するとやはりあのふわふわとした被毛には敵いません。

高齢の猫は代謝が落ち、自分自身の力だけでは満足に体を温めることが困難です。また、若い猫のような運動はできません。よって、飼い主さんが暖を取る手伝いをしてあげなければなりません。快適な室温も、20~28℃と一般的な猫よりも少し高い温度が適温になります。まだ自力で動くことができない子猫も、母猫がいる場合は母猫の手を借りて、それができない場合は人の手で寒さから身を守れるように手助けをしてあげましょう。ケージの隙間を段ボールを使用して覆うことで、冷気を安全に遮断することができます。

同じ子猫でも、自力で活発に動き回れる月齢(生後2~3ヶ月以降)であれば、成猫と同様の寒さ対策で大丈夫です。あまり運動を好まない猫も、年齢に関係なく寒さに弱い傾向にあります。程よく体を温めるために、そして代謝を上げるためにも、興味を示しそうなおもちゃを使用して運動するように仕向けましょう。

庭を駆け回れる!!寒さに丈夫な猫

我々人間も、暑さや寒さに対する感覚は人それぞれです。冬場でも薄着で活動できる人もいます。猫も全ての猫が寒がりではありません。童謡でいう犬のポジションに立つ特徴を持っているのは、以下のような猫です。

  • 長毛種
  • 若い猫
  • 運動好きな猫
  • 雪国育ちの猫(短毛種も含む)

上記3つの特徴は、寒がりな猫の真逆と捉えてください。若くて活発な猫は代謝も高く、適温を保つようにしていれば心配ありません。むしろ、室温を上げすぎないように注意しましょう。特に長毛種の中でも、ノルウェージャンフォレストキャットは、寒さが厳しい環境の中で自然発生した品種になります。いわば寒さ対策のスペシャリストというべき猫です。

この品種の猫は、寒さよりも暑さに対する耐性が弱いため、飼い主さんが活躍するのは夏場の対策のほうになります。そして、ノルウェージャンフォレストキャットに通ずる内容として、雪国育ちの猫も寒さには慣れています。本当に庭を駆け回れる猫もいるほど、寒さが当たり前の環境に適応しているのです。雪国で生まれ育った猫であれば、短毛種も例外ではありません。ただし、「庭を駆け回る」のは安全が担保された環境や、リードやハーネスを着用した状態で楽しませるようにしてください。寒さに強いからといって、危険と隣り合わせな環境に猫だけで外出させてることは好ましくありません。

以上のように、猫の種類や育った環境によっては寒さに強い猫もいるのです。過度な寒さ対策が逆に愛猫を危険に晒してしまうこともあります。特に暖房器具の併用には注意が必要です。我々人間からしても、涼しい場所を求めるほど暑いと感じる環境は、猫にとっても暑いと認識しておきましょう。愛猫の様子をよく観察して、一般的な寒さ対策に囚われずに最も適切である対策を取り入れるようにしましょう。

見逃さないで!!猫が寒がっているサイン

寒がる猫

愛猫に適した寒さ対策をするためには、寒がっているときの仕草を見逃さないことが大切です。猫は寒さを感じると次のような行動を取ります。

  • 体を丸める
  • 毛を逆立てる
  • 窓に接近しない
  • ストーブの前に座る(作動の催促)
  • 毛布やクッションの下に潜り込む
  • 飼い主さんに体を密着させる
  • 食欲が増して水分補給をあまりしない

猫はこたつではなく、寒さを感じると体を丸め、毛を逆立てて体を膨らませます。毛を逆立てている様子から、機嫌が悪いと誤解してしまいそうですが、そうではありません。本能的に寒さから身を守るために取っている行動なのです。猫は学習能力が高いので、冷気を強く感じる窓や扉の近くは避けるようになります。また、ストーブの前で待っていれば飼い主さんがスイッチを押してくれることを覚えることで、寒くなったらストーブの前に座ることが手っ取り早いと判断するようになります。

また、触れることで温かさを感じる場所に自ら寄っていくようになります。飼い主さんがいれば、飼い主さんに体を密着させて体温を感じようとします。飼い主さんがそばにいない場合は、それに代わる対象を探します。毛布やクッションに身を潜めているときは寒さを感じています。毛布やブランケットなど、猫の被毛を連想させるものは猫によっては注意が必要になります。それは、「ウールサッキング」と呼ばれる行動です。

ウールサッキングの注意点

ウールサッキングとは、ふわふわとした質感のものに噛みつき、実際に食べてしまうことを意味します。これは、母猫を思い出したときにとる行動であるふみふみの延長で起こることがあります。母猫を思い出すだけではなく、母乳を飲んでいる気分になり、実際には母乳が出てくることがないためにさらに勢い付けて噛んでしまう行動です。

母子の分離が早すぎた猫や、遺伝的な特徴としてシャム猫やバーマンなどはウールサッキングをしやすい傾向があります。実際に口に含んだものを飲み込んでしまった場合、重症なケースでは開腹手術が必要になることもあります。愛猫にこのような特徴があれば、飼い主さんがそばに居るときのみ毛布やブランケットを使用し、猫から離れる際には戸棚に収納する習慣をつけましょう。

食欲の変化にも注目

猫が寒さを感じているときに見られる行動は、全てが目で見て把握できるものばかりではありません。些細なことではありますが、食欲にも変化が生じることがあります。それはよく食べることです。野生の本能から、厳しい寒さに備えてより多くの食事をとり、脂肪を蓄えようとします。本当に厳しい野生を生き抜くためには必要な手段ですが、完全室内飼育であれば肥満の原因になってしまいます。食欲が増してきたからといって、思うままに食べさせることは危険です。冬場でも一日の摂取量は守るようにしましょう。

食欲とは逆に水分の摂取量は減少してしまいます。先のこたつの項目で紹介したように、冬場でも水分補給は大切です。水が冷たすぎるようであれば、人肌程度に温めた水で対応してみてください。

まとめ

ウメ吉

猫も我々人間と同様に、寒さに対する感覚は個体差があります。そして、意外にも一般的な成猫の場合、快適に過ごせる室内環境が人間とほぼ同じであるということが分かりました。つまり特別な寒さ対策に力を入れるのではなく、人間が心地よいと感じる環境を整えることで、愛猫も健やかに過ごすことができるのです。

猫は人間のように言葉で寒さを訴えることができません。よって、寒さを感じているときの仕草や行動を見逃さず、愛猫が求めている寒さ対策ができるようによく観察してあげましょう。

スポンサーリンク