猫のケンカはなぜ起こる?理由と止め方6つ

猫のケンカはなぜ起こる?理由と止め方6つ

猫といえば喧嘩を連想する方もいらっしゃるでしょう。猫の喧嘩の頻度はどの程度なのでしょうか?また、仲裁する場合はどのような方法があるのでしょうか?今回は猫の喧嘩に関する疑問について触れてみたいと思います。

本当は喧嘩したくない!?それでも猫が揉める理由

威嚇する猫

猫は事ある毎に喧嘩をしているイメージがあるでしょう。そして、その内容も激しいものを想像してしまいます。しかし実際には、好んで喧嘩をしているのではありません。むしろ、負傷しないように無駄な喧嘩は避けようと努力しています。それでも喧嘩になってしまうのは、それなりの事情があるのです。その理由についてご紹介いたします。

野良猫が喧嘩をする理由

主張する猫

すっかり静まり返ったよ夜間に、猫が激しく鳴いたり唸ったり、追いかけ回しているような物音を聞いたことはありませんか?これは、まさにどこかで猫がバトルを繰り広げている真っ只中になります。野良猫はどのような理由から喧嘩になるのでしょうか。その主な理由は、次のような事柄が挙げられます。

オス猫がメス猫にアプローチする順番を決める

猫は年に2回、春と秋になると発情のシーズンが到来します。メス猫は特殊なフェロモンを振りまき、「アオーン」と大声で鳴くことでオス猫を誘惑します。そしてオス猫がメス猫にアプローチをして、最終的に気に入られたオス猫と交尾に発展します。これは子孫を残す本能的な行動です。この一連の流れの中で、オス猫が喧嘩をする理由が発生します。それが「メス猫にアプローチする順番」です。

誰彼構わずメス猫に声をかけられるのではありません。その優先順位を「鳴き合い」と呼ばれる方法で競い、強い者から順にアプローチできるルールがあるのです。そう、一定の時期になると夜な夜な激しい鳴き声が聞こえるのは、この鳴き合いによるものです。

縄張りを巡る争い

また、本能的な行動以外にも野良猫は喧嘩をします。それは、縄張りを巡る争いです。猫は大抵自分のテリトリーを持っています。テリトリーには居住空間である「ホームテリトリー」と、狩りをする「ハンティングテリトリー」があります。猫は各々の縄張りの範囲内で食糧を確保し、休息や仮眠を取って生活しています。基本的に、この縄張りが荒らされない限りは激しい喧嘩に発展することはなく、顔見知りの猫同士はできるだけ鉢合わせしないように気をつけています。野良猫は負傷してしまうと、自然治癒に頼るしかありません。頻繁に喧嘩をしている印象が強いですが、本当は喧嘩をしたくはないのです。

オス・メスの縄張り争いの理由

それでも見知らぬ猫が縄張りに踏み入ったり、勢力を拡大しようと企む猫とは 喧嘩せざるを得ません。その場合も、致命傷を負わないように細心の注意を払って行動しています。縄張り意識はメス猫に比べオス猫のほうが強い傾向にあります。だから、主に喧嘩をするのはオス猫同士が中心です。しかし野良猫の場合、メス猫も全く喧嘩をせずに生活できるわけではありません。メス猫同士が喧嘩をする主な理由は、育児スペースを巡る争いです。

猫の育児は血縁関係にある猫同士が空間を共有し、協力し合いながら行う「共同育児」が主流です。協力関係にある猫同士がそれぞれ子猫の安全を守り、万が一、どちらかの母猫が亡くなってしまった場合は引き取って育てることもあるのです。この育児スペースを巡って、他のグループ同士が喧嘩をします。これは一緒に戦うメンバーが多いほど有利になります。よって、たった1匹で子育てをするメス猫は、育児スペースも他の猫に見つからないようにしなければならないのです。

メス猫は天敵とも争う

また、メス猫が喧嘩をする相手は猫だけに留まりません。我が子を守るために、時には天敵であるカラスとも勇敢に戦い抜きます。このときも、共同育児をする猫同士が協力し合って、カラスを子猫から遠ざけます。オス猫もメス猫も、ただ闇雲に喧嘩をしているのではなく、必要性に応じて争うことがあるのです。

家庭内の猫が喧嘩をする理由

じゃれ合う猫

厳しい環境の中を生き抜く野良猫とは異なり、家庭で生活している猫は身の安全が保証されています。安心できる環境で眠り、食事も飼い主さんが用意してくれます。だからいわゆる家猫は、野生の本能を忘れてしまったかのような行動をとり、我々を楽しませてくれます。このように一見平和そうな家猫も、多頭飼育となると状況が変化します。家庭内で暮らす猫同士は、次のような事柄で喧嘩をすることがあります。

じゃれ合いから喧嘩?

家猫は、家庭全体が自分の縄張りです。しかし、野良猫ほど厳格ではありません。特に食事は飼い主さんが一定の時間になると用意してくれるので、ハンティングテリトリーはほぼ存在しないでしょう。多頭飼育の場合も、激しい縄張り争いはほとんど起こりません。家庭内で猫の喧嘩が起こる理由は、主にじゃれ合いの延長です。

きっかけは喧嘩というよりも、「喧嘩ごっこ」の意味合いが強いものからはじまります。イメージ的には、人間の子ども同士が取っ組み合いをして遊んでいるような状況です。そしてその取っ組み合いが、やがて本気になってしまうのと同じように、猫同士のじゃれ合いも本格的な喧嘩に移行してしまうことがあります。この状態になってはじめて「喧嘩」と呼びます。でも実際には、そのほとんどがごっこ遊びに終わります。

未去勢のオス猫同士による縄張り争い

ただし、去勢手術をしていないオス猫同士が一緒に暮らす場合は要注意です。たとえ家猫であっても、オス猫は本能的に縄張り意識を強く持っています。だから、単なる喧嘩ごっこというよりは、縄張りを巡る争いに近いものがあるのです。この場合の解決策としては、繁殖を望まないのであれば手術を受けさせることが有効な手立てとなります。

食事の順番

多頭飼育においては、食事の順番も注意が必要です。例えば一方だけが早食いの場合、自分の食事を早々と済ませ、もう一方の猫の食事を横取りしてしまう可能性があります。早食いで食いしん坊な猫には、食事の順番を遅くすることや、早食い防止の食器を活用したり、食事場所を別にしたりと対策するようにしてください。猫は犬とは異なり、群れ社会はありません。それでも一応、先のような特別な配慮が必要なケースを除き、先輩猫から食事をさせるようすることが無難です。中には後輩猫に順番を譲る猫もいます。その場合は先輩猫の気持ちを尊重し、柔軟に対応していくことが良いでしょう。

トイレの環境

そして、家猫が平和に暮らすために重要なポイントはトイレの環境です。猫はとても綺麗好きな動物で、トイレが汚いと我慢してしまうことがあります。これは1匹のみでも起こり得る問題です。猫にとっては「排泄物を残す」行為自体が縄張りの主張につながります。多頭飼育の場合は、単にトイレが汚いという理由だけではなく、このような理由においてもトイレを我慢してしまうことがあるのです。猫のトイレの数の理想が「猫の頭数+1個」というのは、お互いに安心してトイレを使用できるようにするためという意味もあるのです。トイレは数に関係なく清潔にすることを心がけ、安心して排泄できる環境を整えてあげましょう。

猫同士の喧嘩におけるマナー

観察する猫

冒頭でも紹介したように、猫は痛手を負わないように無駄な喧嘩を回避しながら生活しています。そして喧嘩をする場合にもマナーがあります。このマナーは基本的に野良猫も家猫も同じです。ここからは、猫の喧嘩のルールについてご紹介いたします。

体格差で勝敗が決まる

猫の社会では、身体が大きな猫は強い猫と見なされます。大きな猫と華奢な猫が遭遇した場合は、その時点で大きな猫の勝利が決まります。戦う以前に勝敗が決まっているものに対して喧嘩は発生しません。華奢な猫が目を逸らしながら、そっとその場から退却するのです。このように、お互い意味をなさない怪我を回避するのが基本になります。

子猫は喧嘩の対象にならない

体格差によるマナーが存在するように、子猫も喧嘩の対象にはなりません。ボス猫と子猫が遭遇してしまった場合は、たとえその場所がボス猫のテリトリーであっても喧嘩をすることはありません。そして相手が子猫の場合のみ、ボス猫のほうから目を逸らします。通常であれば劣勢の立場の猫が先に目を逸らすことがマナーとされ、喧嘩を避けています。子猫は、まだ猫社会におけるルールを知らないため、ボス猫が率先して目を逸らし、その場から立ち去るように教育しているのかもしれません。

できるだけ睨み合いで解決する

お互いが喧嘩をする対象である場合は、できるだけ睨み合いで解決する努力をします。鋭い眼光で睨みを利かせ、全身の毛を逆立てて大きく見せます。しばらくこの静かな戦いが持続します。そして、勝ち目がないと察した猫が、身を縮めて視線を逸らしたら「降参」の合図です。このサインが出されたら喧嘩は終了です。勝利した猫も、この合図を機に相手を睨みつけたり、攻撃を仕掛けることはありません。厳しい環境を生き抜くためには、時に降参する勇気も必要なのかもしれません。

相手の命までは奪わない

全ての喧嘩が睨み合いだけで終結するわけではありません。やはり猫パンチやキック、噛みつき行動が炸裂する殺伐とした雰囲気に包まれる現場もあります。このような激しい戦いでは、どちらかが反撃をしなくなるまで続けられ、反撃をやめれば喧嘩は終息します。人間が猫の喧嘩を目撃すると、あまりの激しさにどちらかが死んでしまうのではないかと心配になるでしょう。しかし、心配はご無用です。猫は本能に従って行動する動物ではありますが、そもそもの原因が縄張り争いであることが多く、相手を死に追いやることが目的ではありません。よって、猫は喧嘩に発展しても、相手の命まで奪うほど残酷なことはしません。

猫は自己中心的な視点を持って物事を捉えているのかと思いきや、実は相手のことも考えて行動しているのです。人間の目線から猫の喧嘩を見ると、本能的で見境のないもののように見えてしまいますが、よく観察してみると誤解であることが分かります。猫が生活するうえでマナーが存在するように、喧嘩においてもマナーがあります。これを遵守することで自分だけではなく、相手の命も守って厳しい環境を生きているのです。

猫の喧嘩を目撃したらどう対応したらいいの?

人を見つめる猫

猫の喧嘩を目撃してしまった場合、我々人間はどのように対応すればよいのでしょうか。基本的には人間が仲裁に入るべきではありません。先に述べたように、猫には猫社会における一般常識が存在します。相手の命を奪うことを目的とせず、喧嘩にもマナーがある以上、全く異なる文化を持つ人間が手を加えることは、猫の文化を壊してしまうことに繋がります。

特に野良猫同士の喧嘩の場合は、そのまま自然に任せるようにしましょう。仲裁に入ることで、こちらが怪我をしてしまうリスクがあります。たとえ擦り傷程度に抑えられても、野良猫は何かしらの細菌やウイルスを保有しており、中には人間に影響を及ぼすものもあります。よって、猫の喧嘩の仲裁は危険な行為なのです。では、家猫の喧嘩はどうでしょうか?これ以上は危険と判断した場合の仲裁方法について、いくつかご紹介いたします。

1.様子を見る

子猫と親猫

多頭飼育の猫同士が喧嘩をしている場合も、基本的には様子を見るだけで大丈夫です。これは、喧嘩をしているように見えても、ただのじゃれ合いや後輩猫を教育しているだけの場合がほとんどだからです。そこへ何も知らずに踏み入ってしまうと、関係を拗らせたり、先輩猫の立場がなくなってしまいます。人間はあくまでも見守る姿勢をとり、よく観察するようにしてください。ただし唸り声を発する、激しい猫パンチを食らわす、首に噛み付いて攻撃するなどの行動が見られたときは仲裁の必要があります。

2.おもちゃで気を引く

おもちゃで遊ぶ猫

仲裁の必要性を感じたら、おもちゃで気を引いてみましょう。注目する対象を、喧嘩相手の猫ではなくおもちゃにシフトさせるのです。これで喧嘩をやめてくれたら褒めてあげましょう。そのままおもちゃで遊ぶ場合は、恐らく1匹ずつになるでしょう。猫は怪我や喧嘩を防ぐために、飼い主さんとおもちゃで遊ぶのは1匹ずつという決まりを定めています。仲裁でおもちゃを活用する際は、どちらか一方が食いついたら、まずはその猫と遊ぶようにしてください。ここでの目的は、喧嘩の仲裁なので注目してくれなかった猫を叱ってはいけません。

3.猫の間に衝立(ついたて)を置く

ダンボールの穴から見える猫

声掛けやおもちゃに全く反応せずに喧嘩を続行しているときは、素手で止めようとしないでください。家猫といえど、猫の口内には雑菌がいます。噛まれた箇所から感染症にかかるリスクは、野良猫の場合とあまり大差はありません。そこで、身近なものを衝立に活用しましょう。いざというときに役立つアイテムは次のようなものが挙げられます。

  • 大きめの茶封筒
  • 下敷き
  • クリアファイル(出来れば顔が映らないもの)
  • まな板
  • ダンボールなど

お互いの顔を遮断でき、猫にも人間にも害のないものであれば何でも構いません。猫同士の間に衝立を置き、見つめ合わないように顔を遮るのです。結果的に視線が合わなくなるため、喧嘩を終結させられる可能性が高くなります。この方法に成功すれば、後は好きにさせておきましょう。

4.強制的に引き離す

抱っこされる猫

衝立作戦だけで自体が終息しない場合は、さらに衝立を置きながら、強制的に猫同士を引き離します。一人で行う際は、弱いほうの猫を抱き上げましょう。人数が確保できるなら、それぞれ役割分担をして引き離すようにしてください。理想をいうならば後者のほうが好ましい仲裁になります。弱いほうの猫を抱き上げることは、その猫を擁護することになります。これを何度も繰り返してしまうと、日常的ないじめに発展したり、強い猫が嫉妬してしまうことがあります。仲裁するシチュエーションが多い飼い主さんは、状況に応じて抱き上げる猫を変える工夫をしてください。

5.それぞれ別室に連れていく

トイレの中の猫

引き離すだけで、その場が収まればそのままで問題ありません。もし、何度引き離しても喧嘩をするようであれば別室に連れていきましょう。部屋が複数ない場合は、トイレや浴室を活用しましょう。これらを活用するときは、水難事故に気をつけてください。大抵の場合、別室に移動させて冷静になることで落ち着きを取り戻すことができます。

6.霧吹きを使う

猫に霧吹きをする人

猫は体が濡れることを嫌がります。何をしても阻止できないときは、罰として霧吹きをかけて止める方向に持っていきます。ここでの罰は、あくまでも衝立の代わり程度に捉えましょう。水をかけられることは、猫にとってストレスになります。猫同士を引き離す手段としてのみ活用し、それ以外では使用しないでください。尚、この霧吹き作戦は最終手段と考えるようにしましょう。

以上の事柄が、猫の喧嘩を仲裁する主な方法になります。最終手段である霧吹きは、家猫と野良猫が喧嘩をしてしまった際に役立ちます。現代の飼育形式は「完全室内飼育」が主流になっているため、ほとんどそのようなシチュエーションはないでしょう。しかし、万が一家猫が脱走してしまったときは野良猫の縄張りに侵入してしまい、喧嘩に巻き込まれる可能性が高くなります。先ほど説明した通り、素手で仲裁する行為は危険なため、野良猫と家猫が揉めている場合は霧吹きが安全な仲裁方法になります。脱走した猫を捜索する際は、霧吹きも持ち歩くようにしましょう。

多頭飼育でのトラブルを回避する方法

たくさんの猫達

猫は本来、単独で生活する動物です。だから、無理に多頭飼育をすることは好ましくないでしょう。ただし多頭飼育が不可能というわけではなく、デメリットだけでもありません。寂しがり屋の猫は、飼い主さんと離れることに強い不安を感じやすい傾向にあります。これが「分離不安」という症状を引き起こすことがあります。分離不安の予防として、多頭飼育が好ましいケースもあります。多頭飼育をする際は、次のようなポイントを意識しましょう。

  • お互いにリラックスできる空間があること
  • トイレは頭数+1個用意すること
  • 食器は分けること
  • 隠れ場所を確保すること

多頭飼育の組み合わせとして、未去勢のオス猫同士出なければ、縄張り争いという名目での喧嘩はあまり見られません。それでも、猫には緩い縄張り意識は持っています。家庭で生活する場合も多頭飼育であれば、各々がリラックスできる縄張りを作れるように工夫しましょう。高い場所に登れる環境や、潜り込めるドーム型のベットなどがあると便利です。これらは、喧嘩に発展しそうになったときの隠れ場所としても役立ちます。

トイレ事情については、別の項目で紹介したとおりです。トイレだけではなく、食器も分けるようにしましょう。これは喧嘩の予防以外にも、病気の予防、どの程度食べたのかを把握する際に役立ちます。猫同士が、できるだけ喧嘩をせずに生活できるように配慮することを心がけてください。

まとめ

テン&タマ&ミー

猫は、我々人間が思うほど喧嘩をしないということが分かりました。そして喧嘩をしなければならない状況下では、お互いに身を守るためのルールがあることは驚きの事実です。猫は人間のように理性をコントロールすることが苦手です。それでも相手の命を奪わない喧嘩を心がけています。人間社会はどうでしょうか?

最近は残酷なニュースが絶えません。身勝手な理由で人を襲い、殺害する行為は猫よりも遥かに劣っていると思われます。弱い物を虐げない、必要のない喧嘩は回避する、相手の命を奪わない。これらは、現代を生きる人間が見習うべき姿勢かもしれません。

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