猫は戦いを好まない
猫が喧嘩をしているところを見かけた方は、大きく独特な声や取っ組み合いの様子などから、印象に残っているかも知れません。しかし実際に、猫は戦いを好まない生き物です。戦いを避けることができれば、猫はむやみに実際に攻撃を伴う喧嘩をすることはありません。
また、たとえ戦いが始まっても、一方が逃げて優劣がついた時に猫の喧嘩は終わり、相手が死亡するまで戦うようなことはありません。
取っ組み合いや引っ掻き合いに発展すれば、怪我をして流血することもたまにありますが、致命傷を負わせることはありません。とことんまで追い詰めない、という暗黙のルールが、猫同士の戦いにはあると言えます。
猫同士は、お互いに無闇に戦いを始めて体力を消耗したり、怪我をしたりするようなことは避けたいと本能で思っています。そのため優劣がつけば、戦いの決着がついたものとなり、実際の喧嘩をしなくて済むということになります。
基本的に一度戦いで猫同士の優劣が決まると、その後は出会っても喧嘩をせず、お互いに避けたり、弱い方が逃げたり、気にしないふりをしたりといった行動を取るようになります。
猫の威嚇のポーズ
猫が戦いをする前に、ほとんどの場合は威嚇という、お互いのにらみ合いが行われます。耳を後ろに伏せるように向けて、背中を丸くし、大きな声で鳴いて相手を威嚇します。毛を逆立て、足を伸ばして体を大きく見せようとします。
場合によっては座ったままや、低い体勢で、このにらみ合いが行われることもあります。戦いの最初はお互いにあまり動かず、にらみ合って大きな声で鳴いて、威嚇が行われます。多くの猫同士の喧嘩は、このにらみ合いの段階で勝ち負けが決まり、戦いは終わります。
どうしてもお互いに引かないような時、力が互角な時には、最終的に取っ組み合いの戦いが始まるということになります。
猫が戦いをする時
繁殖期
猫が戦いをするのは、オスがメス猫を取り合って戦いが始まるため、繁殖期が一番多いと言えるでしょう。繁殖期以外でも縄張り争い、餌の取り合いでも喧嘩はします。ほとんどは、にらみ合い、声を出して威嚇し合い、そこで勝ち負けが決まります。
負けたと感じた方は、顔をそらしたり、逃げたり、小さくうずくまったりします。繁殖期でオスが同じメスを追いかけていると、そのオス同士での戦いとなります。普段、オス同士が出会っても、無用な戦いはしませんが、繁殖期だけは取っ組み合いの戦いをする頻度もあがるようです。
母猫が子猫を育てている時
メスの猫はオスほど頻繁に喧嘩をしませんが、子猫を産んで育てている母猫は、子猫を守るために、他の猫と喧嘩をすることがあります。母猫がしかける戦いは、巣の近くから相手を追い払うことが大きな目的です。
猫同士が初めて出会った時
外にいる猫では縄張り争いのために、猫同士が初めて出会うと戦いになることがあります。しかし一度優劣がつくと、その後は負けた方が縄張りに来なくなったり、どこかで出会っても避けたりするようになります。
飼い猫の場合、もしすでに猫を飼っているところへ新しい猫を迎えた時、初対面の猫同士では喧嘩を始めることもあります。そのまま引きあわせると戦いが始まってしまうので、ケージ越しで対面させる、しばらく別の部屋で過ごさせるなどして、喧嘩しないような配慮が必要です。
多頭飼いの猫でも、一度優劣の立場が決まれば、同じ空間に過ごしていてもほぼ戦いをすることはありません。しかし何かのきっかけで喧嘩に発展することもあり得るので、相性が良くない猫同士は注意して飼わなければなりません。
猫の戦いとじゃれあいの違い
じゃれあいは狩の予行演習や、他の猫との喧嘩を練習するようなものとなります。猫がじゃれあいをする遊びは生後4週頃から始まり、16週頃までずっと続きます。もちろん、成猫になっても遊びの行動がなくなるわけではありません。
じゃれあいでは、相手を獲物に見立てて飛びかかったり、にらみ合ったり、しがみついたりします。猫のじゃれあいが戦いと違うところは、本気ではなく手加減をすること、遊びの一つであること、きょうだいや親子といった仲の良い間で行われることです。
また、じゃれあいの場合には、そのあとにお互いに毛作ろいをしたり、遊んだり、一緒に眠ったりして、猫同士が仲良くできています。戦いをする場合は、猫にとって相手は敵となります。オス猫であれば別のオス猫、メス猫もメス同士で喧嘩をしますし、子供がいるメス猫はオス猫と戦うこともあります。
猫の戦いの止め方
猫の喧嘩の止め方は、次のように行動してください。
- 大きな音を出す
- 猫と猫の間に水をまく
- おもちゃで気をそらす
猫同士がうなりあって威嚇しているような時や、取っ組み合っている時に、どちらかの猫に触ると、引っかかれたり噛まれたりするおそれがあります。手を出さずに、まず猫同士の気をそらすようにしましょう。
猫の喧嘩を見かけた時、猫好きな人であれば、止めた方がいいのかな、と思うかも知れませんが、野良猫の場合には、生き抜いていく際の当然の行動なため、放っておく方が良いでしょう。
しかし飼い猫同士の場合には、怪我をさせないためや部屋を荒らされないために、取っ組み合いや引っ掻き合いの戦いが始まる前に止めたいものです。猫の戦いを止める時にはまず猫同士の気をお互いから逸らしておいて、興奮が収まった頃に2匹を離すようにしましょう。
また、多頭飼いをしていて普段は喧嘩がなくても、弱い立場でストレスを抱えた猫は我慢をしているため、何かのきっかけで戦いが始まることもあります。家の中で複数の猫を飼っていると気には、注意して戦いが起こらないように、それぞれの猫がリラックスして過ごせる空間を作ってあげる必要があるでしょう。
まとめ
猫は本来、戦いを好まないので、実際の攻撃をしない喧嘩で済むことがほとんどです。ただし、繁殖期でのメス猫の取り合いや、縄張り争いの猫同士が互角の場合には、実際に攻撃のある戦いに発展してしまうこともよくあります。
猫の戦いを止めたい時には、無闇に猫に近づくと人間が攻撃されてしまうので、大きな音を立てたり、おもちゃを見せたりするなどして、猫の気をそらすようにすると良いでしょう。