これからもずっと一緒!認知症の女性と愛猫が同伴入居できる高齢者施設

ペットと暮らす高齢者が抱える問題

ペットと離れたくないという理由で、自立した生活が難しくなっても一人暮らしを続けざるを得ない高齢者は少なくありません。ペットと二人暮らしで他に頼る人がいない場合、自分が施設に入居してしまうということはペットの居場所をなくしてしまうことと同じだからです。

介護や支援を必要とする高齢者が、適切な施設に入居してからも愛犬や愛猫と一緒に暮らし続けるにはどうすればいいのでしょうか。

日本にもペット入居可の高齢者向け施設が全くないわけではありません。とはいえ2020年の時点でペット可の有料老人ホームは全体の5%未満しかなく、特別養護老人ホームだとさらに少ない数になってしまいます。

サービス付き高齢者住宅ではペットと入居したいという要望に応えた住居が今後増えていくという見込みがあります。しかしサービス付き高齢者住宅で暮らせるのは身の回りのことがある程度自分でできるという人であり、重度の介護が必要な高齢者には向いていません。

愛猫ムギちゃんと認知症の80代女性を救ったソーシャルワーカー

とあるソーシャルワーカーの働きにより、大切なペットと一緒に特別養護老人ホームに入居できた女性の事例があるのでご紹介します。

80代の女性は愛猫のムギちゃんと二人暮らしをしていましたが、認知症が徐々に悪化しこれまで通りの生活を続けることが困難になりました。介護施設への入居が必要でしたが、女性はムギちゃんをおいていけないという気持ちから入居を拒みます。

そんな女性とムギちゃんを救ったのは、女性のケアをしていた精神科ソーシャルワーカーでした。精神科ソーシャルワーカーはペットと入居できるグループホームを見つけ、ムギちゃんとの暮らしが続けられるように提案してくれたのです。

さらに女性の認知症が進行して特別養護老人ホームへの転居が必要になった際にも、精神科ソーシャルワーカーがペット可の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」に入居できるよう支援してくれます。

精神科ソーシャルワーカーをはじめとして、福祉施設や医療機関の人々が女性とムギちゃんが一緒に暮らせるよう力を合わせたことが一組のペットと飼い主の幸せを守ったのです。

高齢者にとってのペットの存在

ご紹介した認知症の女性のように、介護や支援がないと生活できなくなった高齢者にとってもペットは幸せな暮らしに欠かせない大切な存在です。自分が病気でも愛猫や愛犬への愛情が薄れることはありません。

施設に入居した高齢者がペットと暮らし続けることには様々なメリットがあります。愛情を注げる存在がいることは何よりも生きがいになりますし、ペットとのふれあいはアニマルセラピーとしての効果もあります。

またペットが他の人との会話のきっかけになり、楽しくコミュニケーションがとれるということもあるでしょう。高齢者にとってもペットは日々の生活を豊かにしてくれる大切なパートナーです。

今後の社会で高齢者が安心してペットと暮らせる施設が増え、女性と愛猫ムギちゃんのようなケースが当たり前になることが望まれます。