猫にパンを食べさせないほうがいい!

パンは私たちにとっても猫たちにとってもごく身近にある食べ物。人に様々な食べ物の好みや嗜好性があるのと同じく、猫も人間用の食品を好む子がいます。
だからこそ、猫がパンに興味を示したり、知らぬ間に食べてしまったりするトラブルも付き物です。
猫の好みは、生後6週間前後によく食べていた食品が影響すると言われ、その頃にパンを与えられたり盗み食べたりすると、成長してからもパンを欲しがるようになってしまいます。
ただ、本来猫がパンを食べる必要はなく、菓子パンや総菜パンなどのトッピングには猫に有害な食品も使われているため、パンが好きだとしてもむやみに与えるのはおすすめできません。
「食パンだったら良いかな」「ほんの少量だけなら良いかな」と勝手に判断して与え続けると、猫の体にとって悪い影響を及ぼすリスクにつながりますので十分に注意しましょう。
猫がパンを食べることは避けた方がいい理由

猫は本来肉食の生き物なので、穀物を使っているパンを食べるのは避けた方が無難です。穀物を主食とする人とは体の仕組みが全く異なり、食べるべきもの、摂るべき栄養素も違ってきます。
猫は穀類など炭水化物の消化が得意ではない
猫はパンに含まれる炭水化物のデンプンを消化するのがとても苦手です。
デンプンを消化するにはアミラーゼという消化酵素が使われ、人の場合は唾液腺や膵臓から出ています。しかし、猫の唾液にはアミラーゼが含まれていないので消化しづらいのです。
猫と同じく犬も炭水化物の消化が苦手ですが、猫の体内で生成されるアミラーゼの割合は犬の5%ほどしかないと言われています。
カロリーや塩分の過剰摂取になる
パンに限らず人間の食べ物全般に言えることですが、猫が食べるとなると塩分やカロリーが過剰になる食品が多いです。
6枚切りの食パン1枚あたりに含まれる塩分は約1.2g、カロリーが約170kcal。これは猫が1日に摂取するくらいの量に相当します。
与えれば与えるほど猫の体に負担をかけることになり、健康を害する可能性も高くなります。
- 塩分過多:腎臓病のリスクが高まる
- カロリー過多:糖尿病になりやすくなる
またクロワッサンやパンケーキ、フレンチトーストなど、砂糖や油分がたっぷり含まれているものも栄養過多になってしまうので要注意です。
パンの原材料にアレルギー反応が出る可能性がある
パンには、猫が食物アレルギーの反応を起こす可能性のあるものが含まれており、原材料の小麦・牛乳・卵、総菜パンや菓子パンで使われる食品にも、アレルゲンとなるものが使われます。
アレルギー反応が起こると、消化不良や下痢・嘔吐、皮膚の痒みなどが生じるのですが、アナフィラキシーショックなど重度の反応だと、意識障害など命に関わる症状も出るので十二分に注意したいですね。
猫がパンを食べてしまった時の危険性

猫がパンを食べてしまうと、どんな危険性があるのでしょうか?パンの種類や使っている食材、食べた量によってはすぐに対処しなければならないケースがあります。
レーズンや玉ねぎなどで中毒を引き起こす危険がある
総菜パンや菓子パンで良く使われる食品で、以下のものは中毒症状が出てしまう危険性が高いです。
- レーズン(ブドウ)
- ネギ、玉ねぎ
- チョコレート、ココア
レーズン(ブドウ)は、猫にとって安全な食品かどうかが確認されていません。実際、レーズンを口にした猫が急性腎不全になったケースがあります。
ネギや玉ねぎなどネギ類の食品は、猫が持つ赤血球を壊す成分が含まれていて、少量食べるだけでも重い貧血を引き起こします。煮汁やエキスもNGです。
チョコレートやココアは、原料のカカオに含まれる成分のテオブロミン・カフェインが中毒症状を起こします。下痢や嘔吐の他、神経症状で呼吸がおかしくなる、筋肉が痙攣するなどの重篤な症状も見られることがあります。
酵母が胃の中で発酵してしまう危険がある
猫が生のパン生地を食べてしまった場合、胃の中で生地が発酵、ガスが溜まって病的にお腹が膨らんでしまう胃拡張を起こす危険があります。
さらに、胃拡張を経てから胃がねじれてしまう、胃捻転を引き起こす可能性もあります。胃拡張・胃捻転が起こると以下のような症状が出ます。
- お腹が異常に膨らむ
- 嘔吐
- えづき(何も吐けない)
- ゲップ
- よだれが大量に出る
- 食欲不振
猫が苦しむことにならないためにも、猫には人間の食べ物自体を食べさせないようにするのが賢明ですね。
猫がパンを食べてしまった時の対処法

猫は油断も隙もないような動きをするので、「目を離した隙にパンを食べてしまった!」となってしまうことは十分あり得ます。
猫がパンを食べてしまった時、猫がパンを食べないようにしたい時、私たち飼い主にはどんな対処ができるのでしょうか?
アレルギーを起こす食品や危険性が高い食品が入っていないか確認
猫がパンを食べた際には、まずこれらを確認しましょう。
- 食べたパンの種類
- 食べた量
- 食べてからどれくらい経っているか
前述したレーズンやネギ、チョコレートなど、猫が中毒を起こす食品が入っていないか、アレルゲンとなる食品が入っていないかを見てください。
危険性の高い食品を使ったパンを食べたようなら、量に関わらずすぐに獣医師に診てもらいましょう。
食パンなどプレーンのパンを少量食べた程度であれば半日〜1日ほど猫の様子を見ます。変わった様子があれば動物病院へ。
もし、パンが袋に入った状態だったら、袋を誤飲していないかも確認が必要です。誤飲したようなら獣医師に連絡しましょう。
人が食べているものに興味を持たせない
猫がパンを食べないように普段からできることは、人が食べるものに興味を持たせないことです。すでに、パンや人間の食べ物が好きな子にはちょっと難しいかもしれませんが、以下のような対策ができます。
- 食事時には猫を別室に移動
- 人の食事より前に、あらかじめ猫にキャットフードを与えてお腹を満たしておく
最初はうまくいかないかもしれませんが、根気強く続けていけばきっと安心して食事が取れるようになりますよ。
オモチャなどで興味を引く・猫を落ち着かせる
猫がパンを欲しがってしまったら、好きなオモチャを使って注目を逸らしましょう。猫の気が逸れている間にパンを届かない場所に置いたり、くわえていたパンを取り上げたりと対処できます。
場合によっては、オモチャで気を引けないことがあるので、猫の好きなオヤツやフードを使うのもよいかもしれません。それでも難しいのであれば、猫をなでたり抱っこしたりして落ち着かせるのも手です。
猫の手の届かない場所にパンを置く
パンやお菓子など、常温で保存できるものはキッチン以外に置いてしまいがちです。
なるべくそれを改め、人間用の食品はキッチンにのみ置くようにしましょう。その上で、猫が入れないように柵を置くなどの対策も講じるとなお良いです。
ただ、高いところに置いておくだけだと、飛び上がって取ってしまうかもしれないので、猫が入れない場所で扱うようにすると有効ですよ。
まとめ
パンは人にとっては主食になりますが、猫にとっては日常的に食べると体の負担を増やしてしまったり、健康を害してしまったりする可能性があります。
特にレーズンやチョコレート、玉ねぎなどが使われているパンは厳禁で中毒に陥る場合があり、下痢・嘔吐などの症状や重い貧血などを起こすこともあり得るため非常に危険です。
もし、猫がパンを食べてしまった時は、プレーンのパンであれば半日程度様子を見る、危険性の高いパンを少しでも食べたのであれば、すぐに獣医師に連絡して判断を仰ぎましょう。
なるべく、普段からパンに関心を持たせない対策を講じる、飼い主から積極的に与えるのをやめるなど、私たちにできることから始めて猫の健康を保っていきましょう。