猫の病気に気づいたきっかけ
肝機能のGPTが異常値&血液凝固のAPTTが異常値!
きっかけは避妊手術の術前血液検査でした。6か月になる頃に手術の予約を入れており、当日の朝お預けして手術、夕方にお迎えのはずでした。
お昼頃、動物病院から電話があり、血液検査の結果で異常値が出たので手術は延期で精密検査をして良いかとのことでした。
異常値だった項目
実施日:2019.1.5
肝機能
GPT 192(基準値 22~84)
コメント「肝細胞の障害または壊死」
血液凝固
APTT 160.3(基準値 20~42)
この結果から疑われること
肝臓
- 一時的な上昇ということもあるが、子猫なのに肝不全は早過ぎる為、先天的の門脈体循環シャントも疑われる。
- ただ、肝機能のその他の数値はすべて正常値なので、本当に肝臓が悪いかどうかは精密検査してみないとなんともいえない。(血液凝固)
- APTTの異常値はおそらく先天的な病気が疑われる。第Ⅻ因子欠損症なのではないか。
※肝機能障害の状態によっては、麻酔を代謝できずトラブルが発生することもある為、今回の避妊手術は中止。
門脈体循環シャントとは
猫の門脈体循環シャントとは、わかりやすく言うと、本来肝臓に入るべき胃腸からの血液が、「シャント」と呼ばれる異常な血管を経由して、解毒を受けないまま全身を巡ってしまうことです。
手術でその本来あるべきではない血管を閉鎖しないと確実に寿命は縮まるとのことです。ただし手術はちょっと厄介、術後に合併症で命を落とすこともあり、信頼できる病院で執刀して頂く必要があります。手術に成功すれば、健康な子として一生を送れるそうです。
止血凝固異常とは
主に先天的なことが多いそうですが、出血が止まりにくかったり血栓ができてしまうとのこと。止血小板、血液凝固因子、フォンビルブランド等原因となる因子のそれぞれの疾患によって、治療方法が異なります。
第Ⅻ因子欠損症とは
わかりやすく言うと、先天的な血液凝固異常で血が止まりにくく、手術やケガの際には注意が必要となります。
動物病院で受けた猫の精密検査内容
門脈体循環シャントの疑いで総胆汁酸(TBA)を調べる
門脈体循環シャントの疑いがある時はまずは総胆汁酸(TBA)の血液検査をするようです。絶食時の測定値と食後の測定値の上昇変化をみる為、避妊手術の為に絶食していたのでそのまま検査して頂きました。
<検査方法>
12時間絶食後、空腹の状態で採血し絶食時総胆汁酸(TBA)測定します。その後食事を与え、2時間後に再び食後総胆汁酸(TBA)を測定するので、数時間入院し夕方お迎えになります。
※総胆汁酸が上昇している場合、門脈シャント、原発性門脈低形成(肝微小血管異形成)、その他肝疾患など肝機能が低下するような病気である可能性が考えられる
第Ⅻ因子欠損症の疑いは遺伝子検査
ふつう町の動物病院ではできないので、しかるべき機関に依頼して10日~2週間かかります。
もしも門脈体循環シャントだったら避妊手術はできるの?
避妊手術よりも先に、シャントを閉鎖する手術を受けないと確実に寿命が縮まるとのことでした。避妊手術はそれから、とのこと・・
もしも第Ⅻ因子欠損症だったら避妊手術はできるの?
避妊手術くらいだったら、おそらく安全にできるとのことでした。心配なのでセカンドオピニオンの先生に伺ったところ同じ回答でした。
猫の検査の結果
総胆汁酸の上昇変移は正常の範囲内で「肝機能異常なし」でした
想定通り、第Ⅻ因子欠損症でした
遺伝的にAPTTが延長している可能性が高いと判断される。ただし、一般的には止血時間の延長はない為治療の必要はないとされている。とのことです。
小梅の避妊手術はできるのか・・・?
再度避妊手術を予約するよう獣医さんからご指示を受けたので、中止になってから約3週間後の2019.2.1に予約しました。第12因子欠損症で止血の心配があるのでということで、院長先生に執刀して頂けることになりました。
またGPTが高い!!!
手術当日、お預けしてまもなく電話。
「小梅ちゃんはまたGPTが231で前回より高くなってしまっているけど、どうしますか?」
え?上がってる!?大丈夫なの?とかなり心配になり先生の見解を伺ってみたところ、このくらいの数値ならおそらく大丈夫、総胆汁酸(TBA)も問題なしだったので、と仰ったので、心配過ぎて倒れそうでしたが、初回の発情が来る前に避妊手術をすることのメリット(悪性の乳腺疾患等をかなり高い確率で予防できる)を天秤にかけ、先生を信じて避妊手術をお任せする決断をしました。
「開腹したついでに肝生検しますか?」
肝生検は全身麻酔で開腹(or腹腔鏡)して行うので、確かに開腹したついでにやることのメリットもありましたが、避妊手術よりも傷口が大きくなるとのこと。
第12因子欠損症の止血のことも心配だったことと、肝機能数値が全体的に悪いわけではない、本気で悪くなった時の数値はこんなものではない等々考えて、このタイミングでは「やらない」ことにしました。
GPTは一時的な上昇ではない可能性が高いので、避妊手術後は投薬して様子を見るということに。
命がけ避妊手術
健康体の子なら避妊手術は心配なく受けられる手術ですが、肝臓や腎臓や血液凝固に異常がある子にとってはリスクも高く命がけです。
短い時間の中で決断することがたくさんあり、あれで本当に良かったのかと帰宅してからずっと考えました。私の決断でもしものことがあったらと食事も喉を通りませんでしたが、病院から14時過ぎにお電話頂き、無事手術が終わり麻酔から覚めて容体も安定しているので夕方のお迎えにいらしてくださいと聞き、ほっとして涙が出ました。
動物病院が対応してくださったこと
止血への配慮
「止血異常の子だから健康な子より気を付けて電気メスですぐに止血しながら手術する」と仰ってました。
また、第12因子欠損症で血が止まりにくい子は、圧迫して止血するのが有効で手術後も腹部をきつく特殊な包帯で巻いて貰ってありまして、2日後に外してくださいとのご指示でした。
投薬(肝臓のお薬)
まずは2週間、2週間後に血液検査をしてまた2週間飲む。
- ニチファーゲン(肝機能改善のお薬)
- ウルソ(利胆剤)
- トランサミン(止血作用のお薬)
自宅での愛猫へのケア
避妊手術後の痛み
日帰り手術の方針の動物病院だったので、帰宅してから痛みで唸ったりぐったりしていました。ケージでゆっくり休めるよう整え、室温もいつも以上に暖かくしておきました。
飲まず食わずの対応
麻酔から覚めてからの術後はたくさん食べさせず、様子をみながら少量与えてください、という説明がありましたが、具合が悪いのとメンタルやられたことで、飲まず食わずになってしまいました。
無理に食べさせる必要はないですが水分補給だけは必要ですので、水を与えても飲まない時は下記を試してみます。うちの場合はこれで飲んでくれました。
- フードをお湯に浸して香りをつけたスープ
- ささみのゆで汁
とにかく傷口をなめさせないように
なめたりひっぱったりして傷口が開いたり感染するといけないので、1週間術後服を着せておきました。傷口はばっちりケアできました。
退院した時に注意した事
- キッチンまわりの清潔
- 猫用食器の洗浄をまめに
- 整髪料等注意
- 植物も再点検
肝臓がやられる原因は日常生活にも溢れています。キッチン回りに洗剤がついていないか、猫用食器に細菌が繁殖しないようまめに洗浄、髪に飛びつくので、整髪料成分に少しでもアロマ精油が入っているものは念の為やめました。
母が園芸好きなので、猫にご法度な植物をよく調べて、致命傷にならなくても少しでもリスクがあるものは猫が立ち入らない場所に移動しました。
甘えたいだけ甘えさせる
避妊手術後の2週間程度の期間、赤ちゃん返りで大変でしたが、ストレスを溜めないことやスキンシップで落ち着けることを心掛けました。
避妊手術後に一泊するか日帰りにするかいろいろな意見がありますが、自宅で飼い主のそばで甘えて過ごすことが、傷の治りや回復を早めるということは確かにあるのかもしれません。
投薬用チュールで楽しくお薬タイム
1か月も一日1回お薬を飲ませるのは大変ですが、動物病院で販売している投薬用チュールに混ぜて与えることで双方のストレスはゼロでした。口を開けられて苦い薬を飲むのは猫もストレスですよね。投薬用チュールが楽しみで「早く起きてお薬飲もうよ」と起こされるようになりました。笑
退院後の小梅の様子
手術当日の退院直後、痛くて動くのもやっと。怖かったのかメンタルもやれてしょんぼりしていました。
グレインフリー、無添加の高級フードにチェンジ
うちの場合は療養食にする必要はない状態とのことです。
肝臓のことを考えたら、グレインフリー、無添加の高級フードに辿りつきました。タンパク質はチキンか魚か迷いましたが魚ベースです。まだ成長期なので高たんぱく質のものにしています。(肝臓が悪くなったらタンパク質を抑えていく必要ありです)
3日経過でだいぶ元気そうになった小梅
一週間経過し順調に回復、あれ?甘えん坊さんになってしまいました・・
心配していた内出血もないまま(止血できた模様)順調に回復し、傷口も綺麗になりました。
その後の病状
お薬が効いたのか2週間おきの血液検査で、GPT値は、124、105、どんどん下がってきました。基準値より少々高いですがこの位なら問題ないとのことで、投薬を止めて1か月様子をみているところです。薬を止めて再び上昇するようであればサプリメントを試しましょうということになっています。
肝臓が悪ければ薬でこんなに簡単に数値が下がってこないとのことですが、いずれにせよ経過観察中です。
毛づやもよく食欲も旺盛、体重も平均的な成長、元気いっぱい、今のところ肝臓病の症状はありませんが、体質的に肝臓は注意しましょうということだと思って、一生気を付けていきます。
読者の皆様にお伝えしたい事
通院は動物にとってストレスですが、病気を早期発見して対策を立てることも飼い主の務めですよね。早期に見つかることでその子に一番負担がかからない治療法や、病気とのつきあい方にも選択肢が広がります。
治療も検査も徹底的にできる時代になりましたが、それも良し悪しあり、どこまでやるかは飼い主さんの判断となるので迷うところですよね。正しい知識をもって、必要なこと不要なことを見極めてあげられるようになりたいですね。
避妊手術の際は、元気そうに見えても手術にリスクがある隠れた病気を持っていることもありますので術前検査を実施しましょう。
元気で長生きできるように、まずは愛猫の身体の状態を把握することが大切です。愛猫ちゃんがいつまでも健康でいられるよう適切な対策をしてあげましょう。