猫の唇が腫れる原因
口唇炎など細菌感染やウイルス感染
猫の唇が腫れている原因として口唇炎があげられ、唇と被毛が生えている皮膚の境目に炎症がおこる病気です。特に鋭く尖っている犬歯が唇に当たる部分に炎症がおこり腫れているケースが多いです。
ほとんどがウイルス感染や細菌感染で唇にケガした際の傷口から感染することが多く、稀に食器に対してアレルギー反応を起こし唇が腫れることがあります。
炎症をおこすと唇が腫れて痛みや痒みも伴うため、頻繁に唇を掻いたりする行動が見られ脱毛することがあります。そのため元気はあるがご飯を食べにくくなり、食欲低下が見られます。
猫の口唇炎は口内炎を併発することが多いため唇以外に歯茎などの口腔内も炎症がみられ、歯茎から出血したりただれるなどの症状もおこることがあります。
猫のメラニン色素が癌化し急速に唇が腫れた
猫の成長や老化に伴い下唇にポツポツと黒い斑点が出てくることがあります。色素沈着により黒くなるため特に問題はありませんが、中にはメラノーマ(悪性黒色腫)と呼ばれる皮膚ガンの可能性があります。
メラノーマの特徴
ただの色素沈着であれば唇の一部分だけが黒くポツポツと変色するだけですが、メラノーマの場合は急速に広がるのが特徴です。メラノーマはメラニン色素を産生する細胞が腫瘍化することで発症する病気です。
メラノーマはリンパ節などに転移しやすく再発率が高いため、病気を発見した時にはリンパ節や肺などの臓器に転移しているケースが多く急速な治療が必要です。
メラノーマの発症率は高くありませんが、年齢に応じて高くなり高齢猫に多く発症しているため中・高齢猫は注意が必要です。一般的に猫の口腔内メラノーマは予後が悪いといわれています。
メラノーマの症状
最初は黒いポツポツとした斑点のような病変が広がり、主に歯茎や口腔内粘膜などに出ることが多いですが唇にも症状が現れることがあります。メラノーマは悪性度が高いため次第に黒い斑点部分が大きく腫れ上がり、できものようになるため、その時に異変に気づくことが多いです。腫れあがる他に潰瘍化したり、ただれたようになることもあります。
腫瘍部分が大きく腫れあがると口から強い口臭がしたりヨダレが出てくる、出血などが見られます。また腫瘍ができた部分にもよりますがご飯を食べにくくなるため食欲低下も見られます。
アレルギーなどにより唇が腫れあがった
猫の唇が腫れる原因として好酸球性肉芽腫症候群が考えられます。好酸球性肉芽腫症候群とは病変の皮膚がえぐれて腫れあがったり脱毛やただれたりする皮膚病です。白血球の1種である好酸球が多数発生することで肉芽腫ができ病変部がボコボコと腫れてきます。
肉芽腫は皮膚の炎症部分を再生するために集まった細胞が硬くなり、腫れあがることで発症します。好酸球性肉芽腫症候群を発症するハッキリとした原因は不明ですが、好酸球はアレルギーや寄生虫などに反応し体を守る働きをしていることから、アレルギーが1番関与していると考えられており、アレルゲンとして食べ物やハウスダスト、ノミや蚊などの寄生虫があげられます。
またストレスやウイルス感染・細菌感染などにより免疫力が低下した場合にも発症しやすくなるといわれています。その他にも元々の遺伝的素因や猫が備わっている免疫機能が正常な組織に対し異物として攻撃してしまう自己免疫性疾患も関わっていると考えられます。
猫の好酸球性肉芽腫症候群は猫の背中や内股、唇など様々なところに腫れやできものが現れ、3つのタイプに分けることができます。
無痛性潰瘍
主に犬歯が当たる上唇や上顎、口腔内粘膜などに潰瘍病変が腫れてできます。初期段階では病変部分が赤く腫れあがり、中心部が白っぽくくぼんでおり壊死していることがあります。
また腫れている病変部分から出血することもあり見た目は痛そうに感じられますが、一般的に無痛性潰瘍は痛みや痒みの症状はないといわれています。メス猫で多く発症しているともいわれています。
好酸球性プラーク
主に猫の首、脇下、腹部、内股、指間などに病変ができます。好酸球性プラークの場合はボコボコと腫れている病変部分に激しい痒みがおこるため、それに伴い脱毛や皮膚の赤みが見られます。
激しい痒みにより頻繁に猫が病変部分を舐め過ぎたり掻きむしることで更に脱毛が広がったり傷が深くなり出血を伴うことがあります。
好酸球性肉芽腫
猫の腹部や四肢などに直線状に潰瘍が現れるのが特徴で、口腔内や唇、顎などにもできることがあります。病変部分に赤い斑点や脱毛、フケなどが見られますが痒みの症状はほとんどありません。
このタイプは口腔内に病変ができてしまうとご飯を食べにくくなり食欲不振になったり水も飲みにくくなることがあります。
猫の唇が腫れている時の対処法
抗生物質やステロイド剤などの対症療法
細菌感染が原因の場合は細菌の増殖を抑制するため抗生物質の投与をしたり、寄生虫により唇が腫れている場合は駆虫薬など対症療法をおこないます。また腫れている部分の炎症や痒みを抑えるためにステロイド剤も投与したり、薬を服用することがあります。
食器など生活環境を清潔に保つ
毎日使う食器は特に菌が増殖しやすいため使った後は綺麗に洗うなど清潔にすることで猫の唇の腫れが自然に引いてくれることがあります。また炎症により唇の腫れや痛みがある時はドライフードをお湯でふやかしたり、やわらかいウェットフードにするなど、なるべく刺激を与えないように食事内容に心がけましょう。
アレルギーの原因であるものを排除する
食物アレルギーやノミアレルギーなどアレルギーにより唇が腫れてしまった場合は、その原因であるアレルゲンを除去する必要があります。しかしアレルゲンを特定することは難しいため、再発しやすいです。そのためアレルゲンの疑いがある原因物質は排除するなど対策をおこなった方がいいかもしれません。
腫れている部分を外科的に切除する
好酸球性肉芽腫症候群のように猫の唇がボコボコと腫れてしまうことによりご飯が食べにくいなど生活に支障がある場合は内科療法やレーザー療法をおこなったり、外科手術にて腫れている部分を摘出をすることがあります。外科摘出は慎重に行う必要があります。
しかし唇が腫れている原因がメラノーマの場合は悪性度が高くリンパ節や肺など他の臓器に転移する可能性があるため、一般的に外科手術をおこない腫れている部分を切除する必要があります。
抗がん剤や放射線治療
メラノーマが原因の場合、他の臓器に転移が見られたり、進行度が早く腫れている部分が外科的に切除することが難しい場合は抗がん剤の投与をおこなったり、放射線による治療をすることもあります。
まとめ
猫の唇が腫れている原因が口唇炎のように細菌感染やウイルス感染などにより炎症が起きたことで腫れるケースもあれば、悪性度が高いメラノーマ、アレルギーが原因ではないかとされている好酸球性肉芽腫症候群があげられます。
そのため原因である病気によっては唇の腫れだけ症状が見られる場合もあれば、激しい痒みや皮膚のただれ、脱毛など様々な症状が出てくる場合があります。
好酸球性肉芽腫症候群ではタイプ別によって現れる症状や部位が異なりますし、メラノーマの場合が悪性度が高いため最初は腫れが小さかったが急速に大きく腫れあがり、気づいた時にはリンパ節や他の臓器に転移していることもあります。
そのため原因にもよりますが猫の状態や唇の腫れ具合に応じて対症療法をおこなったり、外科的に摘出しなければいけない場合もあります。もちろん病気によっては予後が厳しいこともありますので少しでも猫の唇が腫れている他、赤くただれていたり痒みにより毛が抜けているなど異変を感じた場合は動物病院に受診することをすすめます。