猫の腎臓の数値
BUN
BUNは尿素窒素といい、体のエネルギーとして使われたあとのタンパク質の老廃物のことを指し、猫の腎臓機能や肝臓機能を調べる項目でもあります。
タンパク質は炭素や水素・酸素・窒素が含まれており、エネルギーに使われたあとはアンモニアが発生します。アンモニアは有害物質なため、肝臓で無毒化し尿素となり、最終的に猫の腎臓から余分な水分と一緒に体外に排出する働きを持っています。
しかし猫の腎臓の働きが悪くなると、老廃物が濾過されず体内に溜まってしまい、BUNの数値が高くなります。逆にBUNの数値が低い場合は、尿素をつくる肝臓の機能が悪くなっているか、あるいは食事中のタンパク質の量が、極端に少ないことがあげられます。
猫は腎臓の最小単位であるネフロンの数が少ないため、腎臓に負担がかかりやすく、高齢猫のほとんどはBUNの数値が高くなり、腎不全になりやすいです。
CRE
CRE(クレアチニン)も、腎臓の働きを調べる項目であり、BUNの数値と見比べて猫の腎臓は正常に働いているか、あるいはどれくらい腎臓機能は残っているのかを知る指標にもなります。
クレアチニンは、筋肉のエネルギー源であるクレアチンがエネルギーとして使われた老廃物です。使われたクレアチニンは、最終的に腎臓で濾過されて、オシッコとともに排出されます。しかし、猫の腎臓の働きが悪くなると血液中にクレアチニンが残ってしまい数値が高くなります。
血液検査でBUNとCREの数値がともに高い場合、猫の腎臓は約75%が機能を失っているといわれており、様々な臨床症状が現れてきます。
BUNとCREの数値による、残された腎臓機能のステージ
BUNとCREの数値から残された腎臓機能を4つのステージに分類されます。
ステージ1
BUNは正常値、CREが1.6以下の場合は100〜33%です。
ステージ2
BUNはやや数値が高く、CREが1.6〜2.8の場合は33〜25%(軽度の腎臓障害)です。
ステージ3
BUNが高く、CREが2.9〜5.0の場合は25〜10%です。
ステージ4
BUN・CRE(5.0以上)ともに数値が非常に高い場合は10%以下(重度の腎臓障害)です。
猫の腎臓の数値を下げる方法
腎臓の数値であるBUNやCREの上昇がみられた際、猫の腎臓機能が低下している可能性があります。しかし一度でも腎臓機能が悪くなると、改善することはできません。
そのため、これ以上に猫の腎臓機能が悪くならないように進行を遅らせたり、腎臓障害によっておこる症状を抑制させてあげたりする治療法となります。
早く行うことで、場合によっては腎臓数値が下がることがあります。少しでも数値を下げるには、定期的に腎臓数値をモニタリングし、発見が遅くなる前にすることが重要になります。
タンパク質やリンの含有量を調整した腎臓食をあたえる
5大栄養素でもあるタンパク質は、エネルギー源として必要ですが、摂取した分、老廃物の量も増えてしまいます。猫の腎臓機能が悪いと、老廃物を濾過することができなくなるため、ますます腎臓に障害をあたえてしまい、猫の腎臓の数値も上昇します。そのため、なるべく老廃物の元であるタンパク質の量を制限することが必要です。
また、ミネラル成分のリンも、歯や骨をつくる大事な栄養素で、健康であればオシッコと一緒に排泄することができます。しかし、猫の腎臓機能が低下するとリンを捨てることができなくなるため、体内に溜まってしまい、更に腎臓を悪くさせます。
猫の腎臓の数値の上昇がみられた場合は、リンの数値(PHOS)も上昇します。タンパク質と同様に、リンも摂取量を制限することが必要です。
乳酸菌の摂取
有害物質であるアンモニアは、猫の腸内細菌からもつくられており、悪玉菌が多いとアンモニアやフェノールなどの有害物質の量も多くなります。肝臓・腎臓によって無毒化し、オシッコと一緒に排出するため、有害物質の量が多いと腎臓に負担がかかってしまいます。
腎臓と深い関係にあるので、腸内細菌が悪ければBUNの数値が上がりやすくなることが分かっています。乳酸菌を摂取し、善玉菌を増やすことで腸内環境が良くなり、腎臓の負担を減らすことができます。負担が減ることで、腎臓機能の低下を抑制することができます。
薬による内科療法
活性炭の薬には、腎臓機能の低下により濾過できなかった老廃物を吸収し、便と一緒に排出させてくれます。そのため、活性炭の薬を毎日飲ませることで、猫の腎臓数値の上昇を防いでくれます。
また、腎臓機能が低下するとタンパクがオシッコと一緒に排泄(タンパク尿)されてしまいます。慢性的な腎臓機能低下の猫にみられ、尿検査でタンパクが出ていることが分かります。
タンパク尿漏出を抑制する薬(セミントラ○Rやフォルテコール○Rなど)が主に使われます。
猫の腎臓の数値が高いとなる病気
慢性腎不全
徐々に腎臓の機能が低下する病気で、高齢猫に多くみられます。15歳以上の約30%の猫に、慢性腎不全を発症しているといわれています。
猫は元々、腎単位であるネフロンの数が少ないため、腎臓に負担がかかりやすい動物でもあります。しかし、ネフロンが半分以下まで残っているまでは症状が現れず、血液検査でも数値に異常が見当たらないことが多いです。
BUNやCREの数値の上昇がみられたときには、残っているネフロンがわずか25%以下になっているといわれており、その頃に初期症状として水をよく飲み頻尿になることがあげられます。
慢性腎不全は完治できないため、徐々に数値が高くなります。腎臓機能が悪くなると、嘔吐や食欲不振、脱水や貧血など様々な症状がおこるようになります。
尿毒症
腎臓機能の低下により、排出されなかった老廃物が体内に蓄積することにより、全身の臓器に影響をあたえてしまいます。その頃になると、腎臓数値であるBUNやCRE、またPHOSがとても高くなり、末期の腎不全ともいえます。
猫が尿毒症を発症すると、ご飯を全く食べず、水も一切飲まない、嘔吐、口からアンモニア臭がする、著しい体重の減少、極度の貧血・脱水などがみられます。
また、状態が非常に悪くなるとケイレン発作や、意識障害などの神経症状をおこし命を落とします。
病気によって腎臓の数値が上昇することもある
中毒
猫が食べていけない食べ物や化学物質、植物などを舐めたり、口にしてしまったりなどによって、中毒症状をおこす危険があります。猫にとって中毒をおこす原因は様々あり、それによって現れる症状が異なってきます。
その中で、殺虫剤や植物などが猫の腎臓に障害をあたえることがわかっており、その場合、腎臓の数値が一気に上昇します。
特に植物のユリは、腎臓を破壊する中毒をおこすといわれており、葉っぱや茎などを食べたり、花瓶に入っている水を飲んだりするだけでも中毒症状をおこします。
摂取した量によりますが、最悪の場合は命を落とすこともあり、奇跡的に命が助かったとしても、一回障害を受けた腎臓は元に戻らないため、腎不全の治療を一生することになります。
尿石症
オシッコに結晶ができてしまい、集まると結石化する病気です。結晶の量が多かったり、結石を尿道に詰まらせてしまったりすると、オシッコが出なくなります。その結果、腎臓に大きな負担がかかってしまい、血液検査にて腎臓の数値の上昇がみられることがあります。
特にオス猫はメス猫と比べて、尿道が細長いため、結晶でも詰まりやすい傾向があり、一刻も早く処置しなければ尿毒症をおこし、命に関わってきます。
まとめ
血液検査で、猫の腎臓機能を知る代表的な項目が、BUNとCREの2つです。この2つの数値によって腎臓機能が正常に働いているのか、あるいは腎臓機能がどれくらい残っているのか知ることができます。
しかし、腎臓機能が半分以下にならないと、数値に異常がみられず早期発見が難しいです。また、猫は人や犬と比べ腎単位であるネフロンの数が少なく、血液を再吸収する働きを重点にして腎臓が働いているため、腎臓に負担がかかりやすいです。
失われた腎臓機能は、元に戻ることはできないため、早期発見することで早くに治療でき、猫の寿命を伸ばすことができます。日頃から猫の様子に変化はないか気にしたり、特に中高齢猫の場合は定期的に血液検査したりすることをすすめます。