猫の腰が抜ける4つの原因と対処法

【獣医師監修】猫の腰が抜ける4つの原因と対処法

猫の腰が抜けるとは、主に猫の後ろ足がうまく動かせずに、立てなくなったり足を引きずったりしている状態をいいます。猫の腰が抜ける状態になった時、飼い主さんはどうしたら良いのでしょうか?猫の腰が抜ける原因と、その対処法についてご紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の腰が抜ける原因

こちらに向かって訴える白黒の猫
  • 病気によるもの
  • 外傷によるもの
  • 加齢によるもの
  • 中毒によるもの

猫の腰が抜ける症状

猫の腰が抜ける状態とは、猫の後ろ足がうまく動かずに歩けなくなったり、下半身に力が入らないために立てなくなったりするような状態です。猫の腰が抜ける原因は大きく分けて、病気によるものと、外傷によるもの、加齢によるもの、中毒によるものの4つがあります。

1.病気によるもの

猫の腰が抜ける原因のうちの病気は、次があげられます。

肥大型心筋症

猫の腰が抜ける症状のある病気「肥大型心筋症」は、猫の心臓の壁が厚くなり、心臓の部屋の容積が小さくなる病気です。

血液を送り出す力が衰えていき、血の固まりができやすくなって、その固まりが何かのきっかけで心臓から流れ出し、血管に詰まった状態を血栓症といいます。

猫は後ろ足に分岐していく動脈で血栓が起きることが多く、そうすると血栓ができた部位から先には血液が流れないために、下半身が麻痺して腰が抜ける状態になってしまいます。

症状としては、後ろ足の麻痺が起こり、腰が抜けるようになりますが、強い痛みを伴いますので、猫は大きな声で鳴き、体に触られるのを嫌がります。症状が進行すると、血流が途絶えるために足が冷たくなり、壊死してしまうこともあります。

病院での治療は、血栓を溶解する薬で血流を回復させたり、血栓の再発を予防する薬を使ったりします。

肥大型心筋症はできるだけ早く動物病院に連れていかないと命にかかわる病気で、発症してしまうと根本的に治すことは極めて難しいとされています。

猫の腰が抜ける症状がある肥大型心筋症の原因は判明していないので、予防する方法はなく、静かに進行し、突然発症することが多いです。早期発見と早期治療につとめる必要があります。

悪性腫瘍

「悪性腫瘍」は腫瘍の種類やできた部位によっては猫の腰が抜ける、ジャンプが出来ないなどの症状があります。猫の悪性腫瘍(がん)のうち、血液細胞に由来するがんの一つをリンパ腫と言います。

リンパ腫には多中心型、皮膚型、胸腺型などがあり、全身のどの場所にも発生する可能性があります。

脊髄や脳というような中枢神経系に腫瘤ができてしまう中枢神経型リンパ腫になると、不全麻痺や完全麻痺が起こることがあり、猫の腰が抜けるといった状態も見られます。

最初は猫の運動能力が衰え、ジャンプがしにくい、足がふらつくなどの症状がでますが、進行すると腰が抜けるといった状態になることもあります。

リンパ腫ができた部分によって症状が違いますので、治療法は症状に応じた対処療法を行うほか、抗がん剤での化学療法が行われます。

猫の腰が抜ける病気「悪性腫瘍」は猫白血病ウイルスに感染することが多くの原因ですが、猫白血病ウイルスに感染していなくても、リンパ腫ができることもあります。

猫伝染性腹膜炎

猫の腰が抜ける状態になる、猫伝染性腹膜炎は、猫伝染性腹膜炎ウイルス=Feline Infections Peritonitis Virus(FIP)に感染することが原因で起こる病気です。

猫伝染性腹膜炎は、猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染することで発症します。

発症すると、食欲が低下して嘔吐や下痢が見られ、中枢神経系に異常をきたしたり、腹水がたまったりします。

また、脳や脊髄に肉芽腫と呼ばれる病変ができることがあり、そうすると、ふらつきが見られ、腰が抜ける状態になるなどの麻痺が起こります。

脊髄損傷になると、腰が抜ける=下半身麻痺からの回復は難しくなります。猫伝染性腹膜炎の治療法は現在のところなく、症状を一時的に和らげる対処療法が中心になります。

猫の腰が抜ける状態になる、病気以外の原因は、次のものがあります。

2.加齢

猫も7歳を超えて高齢になってくると、人間と同じように体に衰えが来て、うまく動けなくなりますので、腰が抜けるように見える状態も起こります。

猫の腰が抜けるようになって体がうまく動かせなくなって来た時に、高いところから飛び降りたり激しい運動をしたりすることで、怪我につながることもあります。

猫の腰が抜けるなどして、猫の運動能力に衰えが見られたら、高い段差をなくしたり、スロープを作ったりするなどして、怪我になりそうな状況をつくらないようにしましょう。

3.外傷によるもの

猫が怪我をすることによって、腰が抜けることがあります。高いところから落ちたり、何かにぶつけたりすることで、下半身のどこかの骨が折れたり、内臓に損傷を受けたりすることで、腰が抜けることがあります。

特に、脊髄の神経に損傷を受けると麻痺が起こり、下半身がうごかせなくなりますので、腰が抜ける状態になることがあります。

一刻も早く動物病院に連れていく必要がありますが、慎重に猫の体を扱うようにして、骨折がひどくなったり、内臓の損傷がひどくなったりしないように気をつけなければなりません。

平らな板などの上にタオルを敷いて、できるだけ猫が痛がらないように、体勢を変えないようにして寝かせ、あまり動かさないようにして病院に連れていくようにしてください。

4.中毒によるもの

猫が中毒を起こすことで、腰が抜ける状態になることもあります。猫が中毒を起こすのは、ネギやニラといったネギ類や、チョコレート、イカやエビ、アワビなどの魚介類などの食品のほか、観葉植物や花、香水やアロマなどが原因の場合もあります。

また、イカやエビなどに含まれるチアミナーゼという酵素はビタミンB1を破壊するため、イカなどを多く摂りすぎるとビタミンB1欠乏症となり、栄養不足から体がうまく動かせなくなり腰が抜けるなど猫の運動機能障害が起きます。

よく言われる、イカを食べると猫が腰を抜かすという説がありますが、このことを指して腰が抜けるという表現になったのでしょう。

猫に与えてはいけないもの、与え方に気をつけるものは、本やインターネットでも詳しく調べられるほか、獣医さんに聞くこともできますので、しっかりチェックしておきましょう。

猫の腰が抜けた時の対処法

診察で腰の方を触られる猫

猫の腰が抜ける状態の時には、できるだけ早く猫を病院に連れていってください。怪我や中毒が原因の場合は、一刻も早く治療をする必要があります。

また、病気が原因で猫の腰が抜ける場合でも、早めに病気を特定して治療を始めることで、命にかかわる状態から脱することができます。

腰が抜ける状態になった猫を病院に連れていく時には、できるだけ猫が動かないようにするため、タオルを敷いた板などの上に猫を寝かせてケージに入れるなど、慎重に扱ってください。

抱き上げて腰を曲げたり、後ろ足を持って動かしたりといったことはせずに、下半身に必要以上に触らないようにして、病院に連れていってあげましょう。

さらに、猫の異常に気づいた時にすぐ動物病院に連れて行けるように、夜間でも受け付けてくれるような病院を見つけておくことをおすすめします。

猫の腰が抜ける4つの原因と対処法のまとめ

横になって緊張している長毛の猫

猫の腰が抜ける原因としては、病気によるものと、外傷によるもの、加齢によるもの、中毒によるものがあげられます。猫の腰が抜けるようになった時には、慌てずに、猫を驚かさないようにしながら、できるだけ早く動物病院へ連れていきましょう。

早期発見により、健康が回復したり、命にかかわる状態から脱したりすることができますので、猫の様子には普段から気をつけて見ている必要があります。

病気が原因の場合は、予防や発見が難しい病気もありますが、ワクチンを接種したり、ストレスのない生活をさせたり、適切なフードを与えたりすることで予防できるものもあります。

外傷や中毒により猫の腰が抜けるものは、飼い主さんが普段から気をつけることでそのような状態を予防できる確率が高いので、危険なものを置かない、中毒になるものを与えないなど、生活環境をよく確認しましょう。