猫の脂肪肝(肝リピドーシス)についての症状や原因、治療と予防法

猫の脂肪肝(肝リピドーシス)についての症状や原因、治療と予防法

猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とはどのような病気なのでしょうか?肝臓は猫の臓器の中で一番大きく、自己再生能力も高く、様々な仕事を行っている大変重要な臓器です。ほとんどの肝実質細胞が害を受けないと症状にあらわれないところから沈黙の臓器とも言われています。猫の肝臓に脂肪が蓄積されていくと脂肪肝という非常にやっかいな病気にかかる可能性が高まります。この度は猫が脂肪肝に罹患したとき飼い主の出来る事を考えてみたいと思います。

SupervisorImage

記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の脂肪肝の症状

白い太り気味の猫

猫の脂肪肝の主な症状です。

  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 元気がなくなる
  • 長時間の睡眠
  • 時々の嘔吐
  • 下痢便秘など排泄の異常
  • 黄疸
  • よだれ
  • 神経障害
  • 肝臓の肥大

脂肪肝はどの猫にも発症する危険はありますが、脂肪肝は特に肥満した猫により多く見られる病態です。脂肪肝の早期発見をすれば生存率は高まり、脂肪肝になる元の病気を完治し適切な治療を続ければ日常生活に支障がないほどに回復する事は可能です。

猫の脂肪肝の初期症状

太った猫が突然食欲不振になり、その食欲不振が2~3日ほど続くと、脂肪肝になる可能性が高くなります。体重が少しづつ減少し元気がなくなってきます。長い時間うつらうつらと眠っている事もあります。そして時々嘔吐をしたり、下痢や便秘をしたりと排泄異常が見られます。

猫の脂肪肝の進んだ症状

猫の目の中、口の中に黄色みを感じられる場合は脂肪肝の症状が進んだ可能性があります。

肝性脳症という状態になるとよだれを多量に流し続けたり、グルグル旋回するなど神経症状を併発したり、病院を受診する時には肝臓が腫れて大きくなっていることもあります。ただし黄疸は猫の脂肪肝だけに見られる症状ではありませんので黄疸が出ていれば、常に脂肪肝というわけではありません。

猫の脂肪肝とは?

猫の脂肪肝とは、猫の脂肪が肝臓から脂肪組織に運ばれる仕組みがうまく働かなくなる病気です。そのため猫の肝臓に脂肪が蓄積され、肝臓が正常に働かなくなるのです。

猫の脂肪肝は「肝リピドーシス」とも言います。肝臓の疾患は「炎症性疾患」「非炎症性肝疾患」と大別されます。非炎症性肝疾患は肝臓に何か物質が溜まってしまう事が多いそうです。

そして猫の脂肪肝は非炎症性肝疾患の内「代謝性肝疾患」に分類され、脂肪が余分に肝臓に溜まってしまう病態のことです。血液検査ではALP、AST、ビリルビン、遊離脂肪酸、ケトン体の値の上昇、アンモニアの上昇も見られます。

猫の脂肪肝の原因

病院での獣医師と猫

特発性肝リピドーシス

脂肪肝になる原因は、猫が2~3日食欲不振や絶食状態になると「特発性肝リピドーシス」を引き起こす事があります。

食事から摂取するタンパク質のアポ蛋白という分子が減ってしまい、脂肪の運搬がうまくいかなくなり肝臓に脂肪がたまる状態です。肥満傾向の猫に多く見られます。

ストレスやその他の病気

その他にも糖尿病や膵炎、感染症などで肝臓に脂肪が溜まりやすくなり脂肪肝を引き起こします。

猫の脂肪肝の治療法

聴診器と猫

強制給仕・点滴

猫が脂肪肝と診断されると入院になり治療を行います。脂肪肝の初期治療は猫に嘔吐がある場合が多いので吐き気止めを用い、点滴を行いますます。栄養分は食べなければ強制給餌を行い、強制給でも全く食べなければ、入院し経鼻カテーテルや胃チューブで与えます。

猫の脂肪肝の治療は、嘔吐がなくなれば、経口摂取に切り替えます。

猫の肝臓の機能が戻らないと肝性脳症を引き起こす危険があるので注意が必要です。退院した後は猫の食欲を戻すために「飼い主の看護」「猫の生命力」の根気強い長期戦の二人三脚を行う必要があります。

猫の脂肪肝の治療費

血液検査は項目にもよりますが血液一般検査と生化学検査の合計で5000〜1万円前後、入院は一日約5000~7000万円、原因の病気治療の金額などを考えますと初期費用として10万円以上はかかると思っていただいた方がよいでしょう。

猫の脂肪肝を早期発見するには?

人の手と猫

猫に「食欲不振、嘔吐、下痢便秘、元気無し」が揃って出た場合は脂肪肝に限らず何らかの病気を発症しています。この段階でまずは病院を受診することが大切です。3日以上食事をとらなければ危険です。受診するようにしましょう。

猫の健康状態の把握

猫は普段から良く眠る動物ですので調子が悪く寝ているのか分かりづらいと思います。普段の猫の生活パターンを把握し、体重管理も行い、少しでも気になる点があればすぐに病院を受診して早期発見をしてください。

猫はムラ食いが特徴ではありますが、食欲不振が一日続いた場合は病院をすぐ受診する事をおすすめいたします。食欲不振を1〜2日様子を見てしまったために、脂肪肝発症のきっかけになってしまうこともあります。

猫の食生活の見直し

横たわる猫

肥満気味の猫は脂肪肝に罹患しやすくなります。普段から運動量と食生活のバランスを考える事が大切です。

猫の定期的な検診

猫が健康な時から定期的に血液検査などの定期検診を行い、数値で健康状態を把握する事が脂肪肝の予防法として有効です。

猫の異常行動の発見

よだれを沢山たらす、そわそわする、立ちすくむなど異常行動も猫の脂肪肝が進んだ時の特徴です。

猫の脂肪肝の予防法

健康な状態時から血液検査を含む定期検診を行い、万病の元である猫の肥満をなるべく避け、猫にストレスをかけない生活をする事が大切です。そして猫の健康状態の変化を敏感に感じる飼い主の心構えが大切です。

まとめ

獣医と猫

猫の脂肪肝(肝リピドーシス)についての症状や原因、治療と予防法についてお伝えをいたしました。

肝硬変の治癒は難しいですが、脂肪肝は早期発見と的確な治療で治癒する事も可能です。早期発見が回復への大きな岐路です。

猫の状態の変化に敏感になりすぐに病院へかけつけられるようにしたいですね。

スポンサーリンク