猫のダブルキャリアとは?症状や寿命、飼育する時のアドバイス

猫のダブルキャリアとは?症状や寿命、飼育する時のアドバイス

感染症に罹患しているかどうかは、新しく家族に迎える際に、気になることの一つです。ここでは猫の感染症のなかでも、ダブルキャリアについて紹介します。

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猫のダブルキャリアとはどんな意味?

検査される猫

猫のダブルキャリアという言葉はご存じですか?猫のダブルキャリアとは猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルスの2つのウイルスを保有していることを表しています。つまり2種類のウイルス感染症に罹患しているという意味です。

では、猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルスとはどのようなウイルスなのでしょうか。

ここからは、まず原因となるそれぞれのウイルスについて説明し、その後検査方法や予防方法などについて紹介します。

猫が「猫白血病ウイルス」と「猫免疫不全ウイルス」の両方に感染している状態

前述したとおり、ダブルキャリアとは、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している状態のことを示します。2つのウイルスは、それぞれ違った特徴を持っています。

では、ここからそれぞれのウイルスについて説明します。

まず、猫白血病ウイルスについてです。猫白血病ウイルスは、感染した猫の20~30%が白血病やリンパ腫になることから名前が付けられました。このウイルスが原因となる感染症を猫白血病ウイルス感染症と言います。

猫白血病ウイルスは唾液や血液を介して感染します。考えられる感染経路は次の3つです。

1つ目は、同じ食器の使用や、グルーミングをしあうことで経口的にウイルスを取り込んでしまう場合です。しかし、この場合には、持続的に濃厚な接触がない限り感染は成立しにくいとされています。

2つ目は、けんかなどによる咬傷からウイルスが体内に侵入する場合です。この場合は、高確率で感染が成立します。

3つ目は、母猫が猫白血病ウイルスに感染しており、胎盤や母乳を介して子猫に伝染する場合です。この場合は、子猫は流産や死産が多く、生まれても早期に死亡してしまうことが多いです。

猫白血病ウイルスは感染が成立しても、一生涯ウイルスを持ち続ける場合と一過性の場合があります。また、体内にウイルスがあっても必ず発症するわけではありません。

ウイルスが体内にあるけれど発症していない状態を持続感染と言います。持続感染になるかどうかは、免疫力に左右されます。特に子猫の場合には免疫力が低いため、持続感染に陥りやすくなります。1歳以上の場合には持続感染になることは非常に少ないと言われています。

次に猫免疫不全ウイルスについてです。猫に対して免疫不全を起こします。このウイルスが原因の感染症を猫免疫不全ウイルス感染症と言い、通称猫エイズと呼びます。

猫免疫不全ウイルスは交尾や咬傷により感染します。傷口からウイルスが体内に侵入することで感染が成立します。唾液を介しますが、猫白血病ウイルスと異なり、同じ食器の使用や、グルーミングをしあうことでは感染しません。

ダブルキャリアかどうかは血液検査でわかる

愛猫がダブルキャリアかどうかは、血液検査でわかります。検査によって感染の有無を判断するためには、感染した可能性のある日から一定の期間が必要です。そのため、数回検査を行う必要がある場合があります。

それでは、それぞれのウイルスが検出できるようになるまでの期間について説明します。

まず、猫白血病ウイルスについてです。検査で感染の有無がわかるのは、感染した可能性のある日から約1か月後以降になります。子猫の場合には、母猫からの移行抗体の影響を考慮して生後4か月以降が理想です。

1度検査結果が陽性となった場合でも、時間が経過すると陰性に変わることがあるので、1回目の検査の3~4カ月後に再検査を行います。1回目と2回目、ともに陽性であって初めて、その猫は猫白血病ウイルス感染症に罹患しているということになります。

拾ってきた猫を家族に迎える時や、外でケンカをして帰ってきた時、猫白血病ウイルスのワクチンを接種する前には検査を受けましょう。

次に猫免疫不全ウイルスについてです。検査で感染の有無がわかるのは、感染した可能性のある日から約2カ月後以降になります。子猫の場合には、母猫からの移行抗体の影響を考慮して生後6か月以降が理想です。

猫免疫不全ウイルスの検査は抗体を検出する方法のため、感染初期のほかに、エイズ期と呼ばれる症状の進行の段階にいる猫も陰性になる場合があります。

猫白血病ウイルスと同様に、拾ってきた猫を家族に迎える時や、外でケンカをして帰ってきた時、猫免疫不全ウイルスのワクチンを接種する前は検査を受けることをお勧めします。

猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルスのキャリアでも人には感染しない

猫白血病ウイルスも猫免疫不全ウイルスも人に感染することはありません。両方ともネコ科の動物に特有のウイルスと考えられています。

一番の予防法は完全室内飼育

どちらの感染症も、感染猫に接触させないことが一番の予防法です。外に出すことは控え、室内で飼育することにより、感染のリスクは非常に低くなります。

また、感染した場合にも、発症予防や症状の進行を遅らせるために、室内飼育は有効です。外は猫にとってストレスが多く、病状を進行させる危険があります。

ワクチン接種により感染のリスクを抑えることができる

100%ではありませんが、ワクチンを接種することで、感染のリスクを抑えることが可能です。

猫白血病ウイルスは一般的な5種混合ワクチンに含まれています。猫免疫不全ウイルスのワクチンは単独のワクチンです。このワクチンは2008年に認可が下りた、比較的新しいワクチンです。

どちらのワクチンも初回は2週間おきに3回接種、その後年に1回の接種が必要です。

室内で飼うと決めていても、外に逃げてしまう可能性や、外から感染猫が入ってきてしまう可能性はあります。そのため、ワクチンによる感染対策は非常に重要です。

ダブルキャリアの猫に起こりうる症状

マスクしてる猫

ダブルキャリアの猫は猫白血病ウイルス感染症による症状と、猫免疫不全ウイルス感染症による症状の両方を発症する可能性があります。

それでは、それぞれの症状を紹介します。

猫白血病ウイルス感染症の症状

猫白血病ウイルスに感染すると、感染後2~6週間後に全身のリンパ節の腫れと発熱が認められます。そして、血液検査では、白血球の減少と貧血が見られます。

一般的に、これらの症状が軽いか無症状の場合には、一過性の感染となります。しかし、重い場合には、体内にウイルスが残り、持続感染となることが多いと言われています。

持続感染となった場合には、その後さまざまな疾患が引き起こされる可能性があります。それらの疾患は、大きく2つに分類されます。

1つ目は、ウイルスが直接的に関与して発症する疾患です。リンパ腫や白血病などの造血器腫瘍や、再生不良性貧血などがあります。

2つ目は、ウイルス感染が原因で免疫不全や免疫異常を起こすことにより、二次的に発症する疾患です。免疫不全に関連する疾患として、ヘモバルトネラ症や猫伝染性腹膜炎、口内炎などがあります。免疫異常に関連する疾患は、免疫介在性疾患や糸球体腎炎などがあります。

持続感染を起こしても、必ずこれらの疾患を発症するわけではありません。また、どれくらいの期間、無症状の状態で過ごせるかは、猫によって異なります。

猫免疫不全ウイルス感染症の症状

猫免疫不全ウイルスに感染すると、4~6週間の潜伏期間を経てから発症します。

猫免疫不全ウイルス感染症の症状は、時間の経過とともに変化し、病態によって、急性期、無症状キャリア期、持続性リンパ節腫大期、エイズ関連症候群期、エイズ期の5つの段階に分けられます。

それでは一つずつ、簡単に説明します。

まずは、急性期です。見た目は元気ですが、持続的な発熱と白血球の減少などが見られます。この期間は、数週間~数か月程度持続すると言われています。

急性期から進行すると、無症状キャリア期になります。名前の通り、症状はありません。この期間は数か月~数年持続すると考えられています。

そして、無症状キャリア期の次は全身性リンパ節腫大期となります。この期間は数か月持続します。

さらに病態が進行すると、エイズ関連症候群期へと移行します。この期間では、免疫異常を伴う症状が認められるようになります。特に多くみられる症状は口内炎です。痛みのためにごはんを食べられなくなり、体重減少が進行します。

そして、さらに進行すると、エイズ期に至ります。エイズ期では、免疫不全を起こし、日和見感染や悪性腫瘍が発生します。極度に痩せてしまい、急速に衰弱し、やがて死に至ります。

感染した猫が必ずエイズ期まで進行するわけではありません。中には無症状のまま寿命を全うする猫もいます。

発症を予防させることで長生きにつながる

猫白血病ウイルス感染症と猫免疫不全ウイルス感染症は、症状を発症させないことが長生きにつながると言われています。では、どのようにすれば、発症を抑えられるのでしょうか。

両方とも、発症にはストレスが関与していると言われています。つまり、ストレスを回避することで、発症のリスクが軽減し、長生きすることができるのです。

ストレスを回避するためにはまず、完全室内飼育を行うことが有効です。屋外は、猫にとって多くのストレス源があります。ケンカや事故の危険以外に、気温も猫のストレスになりうるのです。また、発情のストレスを回避するために、避妊・去勢手術も行いましょう。

根本的な治療方法はない

猫白血病ウイルスは、感染初期にインターフェロンを投与することで、持続感染になる確率を下げることができると言われています。しかし、これが薬の効果なのか、猫自身の免疫力によるものなのかは明確ではなく、どこまで有効なのかは不明です。また、持続感染の場合には、根本的な治療方法はありません。

猫免疫不全ウイルスもウイルスを完全に排除する根本的な治療方法は現在のところありません。

そのため、感染した場合には、症状に対する対症療法や免疫力を高めるための治療を行い、症状の改善や延命を行います。

根本的な治療法がないということは、治すことができないということです。
だからこそ、まずは感染させないこと、そして感染してしまった場合には発症させないことが重要になります。

ダブルキャリアの猫の平均寿命

ぐったりしてる猫

非感染猫と比べて、猫白血病ウイルス感染症の猫は有意に寿命が短いという報告があります。一方、猫免疫不全ウイルス感染症の罹患は、生存期間に影響を与えないと言われています。

ダブルキャリアの猫は、非感染猫と比べて長生きできない猫が多いのが現状です。

しかし、ダブルキャリアの猫のすべてが短命かというと、そうではなく、無症状のまま寿命を全うする猫もいます。

どれくらい生きられるかは、その猫次第であり、いかに症状を発症させないかが重要となります。

猫がダブルキャリアである場合の飼い方

検査されている猫

では、新しく家族に迎えた愛猫がダブルキャリアの場合には、何に気を付け、どのようにお世話をすればよいのでしょうか。

ダブルキャリアの猫は、健康な猫に比べて、こまめな対症療法や通院、ケアが必要になります。そして、それらを行うことで、病気の進行を遅らせることができる可能性があります。

それでは、ここからは、飼育する際に行うべきことについて具体的に説明します。

ストレスの少ない環境で生活させることで発症を遅らせる

長生きさせるためには、発症を遅らせることが重要です。発症する原因の一つにストレスがあります。そのストレスを回避するための方法として推奨されているのが、完全室内飼育と避妊・去勢手術です。

完全室内飼育が推奨される理由は、屋外の環境がもたらすストレスを回避するためです。ケンカや事故の危険のみならず、気温もストレス源になる場合があります。猫が外から帰ってきたときに発症しているケースもめずらしくありません。屋外は猫にとって、ストレスフルな世界なのです。

また、好みのアイテムを置くことや、リラックスできる空間を確保してあげるなど、よりくつろぐことのできる環境に工夫することも大切です。何がストレスになるのかよりも、どうしたらリラックスできるのかを考えたほうが、より過ごしやすい環境に整えることができるでしょう。

避妊・去勢手術が推奨される理由は、発情のストレスを回避するためです。猫白血病ウイルス感染症において、特に雄猫は去勢の有無が感染や発症に影響すると言われています。

まだ避妊・去勢手術を行っていない場合には、獣医師と相談し、健康状態の様子を見ながら、できるだけ早めに手術を実施してあげると良いでしょう。

多頭飼育の場合には陰性の猫と隔離する

前述したとおり、猫白血病ウイルスも猫免疫不全ウイルスも、感染猫と接触させないことが一番の予防法となります。

他の愛猫に感染させないために、ダブルキャリアの猫とは生活環境を分けましょう。食器やトイレも分ける必要があります。

すでに猫を飼っている飼い主さんは、新しく猫を迎えようと思った際に、その猫がダブルキャリアで、隔離が必要になる可能性があることを考えなくてはなりません。拾ってきた猫以外にも、里親募集をしている猫の中には、ダブルキャリアの猫もいます。迎え入れる前に、スペースが確保できるかどうか検討しましょう。

免疫力の低下を防ぐために栄養価の高い食事を心がける

バランスの取れた栄養価の高い食事を与えることで、免疫力の低下を防ぎます。様々なメーカーからたくさんの種類が販売されているので、愛猫の好みにあったフードを見つけてみてください。

しかし、与えすぎによる肥満も、免疫力が低下する要因となります。適切な量を守った食事管理を行いましょう。

いつも体調に気を配り、こまめに動物病院を受診する

健康な猫に比べて体調を崩しやすく、崩した場合には重症化しやすいため、早期に治療を行う必要があります。

いつもと様子が違うなと感じたら、すぐに動物病院を受診できるよう、日ごろから愛猫の様子をよく観察しましょう。

まとめ

聴診器と猫

新しく迎えた愛猫がダブルキャリアだと分かった飼い主さんは、不安でいっぱいだと思います。可愛いわが子がこれからどのような病状になっていくのかを想像して、ハラハラしてしまったかもしれません。

確かに、健康な猫に比べて、ダブルキャリアの猫は困難なことが多くなる可能性があります。しかし、飼い主さんが愛情を注いであげることで、幸せに暮らしていけることは健康な猫と一緒です。

ぜひ、愛猫に愛情を注ぎ、お互いかけがえのない存在として、幸せに満ちた生活を送ってくださいね。