重症化しがちな猫のお尻トラブル3つ

重症化しがちな猫のお尻トラブル3つ

内臓疾患や関節などのトラブルだけでなく、猫の「おしりのトラブル」にも注意しておきましょう。猫のおしりのトラブルは重症化や慢性化することもありますので、意識的に異変に気付いてあげられるようにすることが大切です。今回は【猫のおしりのトラブル】を3つ解説いたします。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

1. 肛門嚢炎

部屋を歩く三毛猫の後ろ姿

猫の肛門の近く、肛門の両ななめ下くらいの位置に「肛門嚢(こうもんのう)」という袋があります。これは強いニオイを出す「肛門腺」の分泌物が一時的に溜まる袋です。肛門腺はアポクリン腺と皮脂腺から成り立っており、主にマーキングに使われます。

肛門嚢炎の原因

肛門嚢に溜められた肛門腺からの分泌物は、通常うんちをするときに一緒に排出されます。しかし、

  • 自力で排出しにくい体質
  • 肛門嚢の目詰まり
  • 運動不足
  • 肥満

など、何らかの原因で排出されないままになってしまうことがあります。溜まり続けた分泌物の中で細菌が増殖して炎症を起こしてしまう状態を「肛門嚢炎」と呼びます。

炎症が起こったままさらに放置してしまうと、袋の中に膿が溜まってしまい腫れあがってしまうこともあります。

肛門嚢炎の症状

  • 肛門周りの赤みや腫れ
  • 痛みで鳴く
  • おしりを気にする
  • おしりをこする
  • うんちが出にくい
  • 突然走り出す

肛門周辺に赤みや腫れなどがあり、行動にこのような異変が見られる場合には肛門嚢炎を起こしている恐れがあります。

2. 肛門嚢破裂

自分のおしりを舐める猫

1の肛門嚢炎のまま放置してしまうと、肛門嚢の中に膿がたくさん溜まってパンパンに膨れ上がります。そうして許容量を超えてしまうと、肛門嚢が破裂して膿が排出されてしまう状態が「肛門嚢破裂」です。

猫の場合では高齢の子に多く見られ、気が付いたときにはすでに破裂してしまっていた、というケースも多くあります。

定期的な「肛門絞り」が必要な場合も

体質的に肛門腺が溜まりやすい子の場合は、炎症を繰り返したり破裂に至ってしまったりする恐れがありますので、日頃からおしりのチェックをして肛門腺が溜まっていないかを確認してあげることが大切です。

そして、肛門腺を自力で排出しにくい子の場合は、指で圧迫して排出させる「肛門絞り」が必要です。押し出す場所や力加減などにコツが必要なので、獣医師やトリマーに教えてもらうか代わりに行ってもらうと良いでしょう。

3. 脱肛

子猫のおしりアップ

猫の脱肛には2段階あります。まず軽度のものが「肛門脱」で、肛門と直腸の境目付近の粘膜が外に出てしまっている状態です。重度の「直腸脱」になると、肛門から遠い部分の直腸の粘膜が伸びて外に出てしまっている状態です。

猫の脱肛の原因

猫が脱肛してしまう原因には、

  • 感染症や寄生虫症
  • 胃腸疾患
  • 品種(マンクスに多い)
  • 出産や便秘による強いいきみ
  • 肛門括約筋が弱い

などが考えられます。感染症や寄生虫症、胃腸疾患などによって直腸に炎症が起こると、粘膜の体積が増えてしまうことがあり、外にはみ出てしまう原因となります。

また、しっぽの短いマンクスに見られやすいと言われています。そして、出産や便秘によって強くいきむことや、肛門を閉じる肛門括約筋が弱まると粘膜や直腸が飛び出てしまいやすくなります。

脱肛の治療

応急処置として、脱肛部分に潤滑剤を塗って優しく押し戻します。軽度の脱肛の場合は、脱肛を起こしにくくするために肛門周辺の皮膚を巾着状に縫う外科手術を選択することもあります。

何度も再発する場合は直腸や結腸を固定する手術、飛び出た粘膜や腸が壊死してしまっている場合には切除の手術が必要です。

まとめ

病院でお尻を診察されている子猫

猫は身体を触られることを嫌がる子も多いので、ましてや敏感なおしり周りまでチェックが行き届かないことが多いです。猫のおしりのトラブルには、

  • 肛門嚢炎
  • 肛門嚢破裂
  • 脱肛

などがあります。肛門腺が溜まりやすい体質の子の場合は定期的な肛門絞りが必要です。肛門嚢炎や脱肛は繰り返してしまうこともあるので、定期的におしり周りのチェックをしていきたいですね。

しっぽをつかんで無理にチェックすると、嫌悪感を与えてしまいますので注意しましょう。しっぽの付け根部分を優しくトントンしたり撫でたりすると、しっぽをピンと上げてくれやすいのでおしり周りが確認しやすいです。

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