釣り場の猫の親子
私たち夫婦の共通の趣味は釣りです。釣りの中でも若い人たちが好むようなルアー(疑似餌)を使って、釣り場を転々と移動していく釣りではなくて、餌をまきながらドカッと腰を下ろして釣り糸を垂らして行うタイプです。
予定がつくと二人で釣りに出かけます。いつも決まった場所ではないのですが、あの時は3週間連続して同じ釣り場に出かけていました。
いつものように釣りをしていると、これまたいつものように猫が寄ってきます。どこでも大抵の釣り場には猫がいるのです。たくさんの猫を抱えている釣り場もあれば、1匹しかいない単独行動の猫がいる釣り場もあります。今回の釣り場は後者の単独行動の猫がいる釣り場のようでした。場所は千葉県の房総半島の一角です。
私たちが釣りを始めて小さな小魚が釣れると猫が1匹走り寄ってきます。しかし一定の距離は保ったままです。慎重に針を外し猫に向かって放り投げると、さらに寄って来て魚をくわえて逃げていきます。
主人と二人で、「ここは猫さんは1匹だけなんだね、待ってたらもう少し集まって来るのかね?」なんて話をしながら釣りを続けます。小魚も順調に釣れています。それを見逃すことなく猫が貰いにやって来ます。
暗闇の中、ヘッドライトを頼りに小魚をくわえて走り去った猫の行き先を確認すると、いました、子猫ちゃんです。私たちからもらった小魚は、どうやらその子猫ちゃんのもとへと運んでいるようです。
「子猫がいたんだね、1匹だけかな?あの猫ちゃんは、きっとお母さん猫なんだね~」と話しながら順調に釣りを続けていました。
この時はそこそこの釣果だったので、うきうきとした気持ちで家路につきました。そして気が付いた時にはもう猫の親子の姿は消えていました。
母猫はどこへ?
先週の爆釣に気をよくした私たちは今週も前回と同じ釣り場に行く事にしました。わくわくとした気持ちが勝っていたので、猫の親子の存在は私の頭の中からはすっかりと消え去っていたのですが。
前回と同様釣りを始めます。この日もいい感じで小魚が釣れ始めます。小魚が釣れると大きい魚が釣れる確率が上がるので、いつもにもまして真剣に釣ります。
その時に夢中で釣っている私たちの背後から「にゃー」と鳴く声が聞こえます。その時に初めて先週のこの場所での猫の親子の存在を思い出しました。鳴き声につられて振り返ったその先にはあの時の子猫ちゃんがいました。
「あれ?子猫だけだよ、お母さんどうしたんだろう。親離れするには早すぎるよね?」お母さん猫の存在が気になりつつ、子猫に小魚を与えます。
小魚を食べる子猫、食べてはいますがちょっと悪戦苦闘しています。「あの子にとっては大きすぎるのかな?お母さん猫は小さくして与えていたんだろうか・・・」
そんなことを考えながら釣りを続けます。この時もそこそこの釣果で夢中になっていたためか、気が付いた時には子猫の姿は消えていました。
一人ぼっちの子猫
2週間連続の爆釣に、当然今回も同じ釣り場に向かう私たち。早速釣りを始めて「この前みたいな釣れ方だったらクーラーボックスに入りきらないね~」などとのんきなことを話しながら笑っていました。
コーヒーでも飲もうとお湯を沸かすため車に向かった時に、車の近くの草むらの中からのぞき込む子猫の姿が見えました。
「そういえばこの子、先週も一人だったけどお母さんどこに行ったんだろうね。」
母猫の身に何かが起こったようです。いつも子猫のそばから離れなかった母猫らしき成猫の姿がどこにもないのです。
我が家は多頭飼い、一人ぼっちになってしまった子猫を連れて帰るという結論を出すのに、それほど時間はかかりませんでした。
子猫のお腹に虫!
釣り場から保護をして連れて帰って来たのはこれで2回目です。我が家は多頭飼いなので、連れて帰って来てから先住猫達にご対面させるのには少し時間がかかります。
病気やノミ、虫なども心配なので、いつものように翌日動物病院に伺いました。
診察の結果、生後2か月位の女の子だという事と、体にノミ、お腹に回虫がいる事が分かりました。ノミと回虫の駆除、混合ワクチンの接種の後、我が家の先住猫たちとのご対面を行う事になりました。
修羅と化したプーちゃん
ご対面の日、サークルに『しょーちゃん』を入れて猫たちに合わせます。それまではノミや回虫、ワクチン未接種などの理由から全く合わせなかったので、我が家の猫たちは『しょーちゃん』の存在すら知りませんでした。
とっかえひっかえ猫たちが様子をうかがいにやって来ます。初めはシャーシャー言ったり唸ったりしていましたがそのうちに気にしなくなりました。これからしばらくは『しょーちゃん』のサークル生活が始まります。
ところが1週間経とうが2週間経とうが一向に許さない子が一人だけいました。写真の子が長毛の『プーちゃん』です。この『プーちゃん』は2016年の年末に我が家に保護された子なのですが、自分も保護されたくせにいつまでも子猫に向かって唸りまくりです!
まさに鬼のような形相で・・・
意外と仲のいい二人
時間とは素晴らしいものです。初めあれだけ唸っていた『プーちゃん』でしたが、今では『しょーちゃん』の存在を認めているようです。時々ゆるーい追いかけっこの相手をしてくれたり、頭をぺろぺろ舐めてくれたり相性はあるのでしょうが、きっとどんな子たちでも時間が解決してくれるのだと思います。
しょーちゃん可愛さ全開!
今は推定7か月の若い女の子に成長しました。しなやかな体系と細くて長いしっぽ、体の模様から判断すると、やはりあの時一緒にいた成猫は『しょーちゃん』のお母さんだったのだと思います。
あの後もその釣り場には行きましたが、あの時の母猫を見かける事はありませんでした。しかし、母猫の身に何かが起こったのではなく、子離れの一環で自分の縄張りを我が子である『しょーちゃん』に譲って姿を消したのだと思っています。
まとめ
我が家は猫9匹の多頭飼いです。猫たちに血縁関係はなく全くの他人なのですが、それぞれが怪我をするようなケンカをする事もなく上手に距離を保ちながら毎日を過ごしています。
相性があるので、お互いに厳しい時は厳しいのでしょうが、我が家の場合を考えるとオスだろうとメスだろうと相手が子猫で先住猫たちの去勢避妊が済んでいれば、大きな問題はなく迎えてくれるようです。
それだけ猫という生き物は賢いのだと思います。
もしも何かのきっかけで猫の保護をする機会があったら、先住猫がいたとしてもその子の性格を飼い主さんが良く考慮してあげたうえでお迎えという選択をしてあげられたら素敵ですね!