猫の『毛柄』が色とりどりな理由5つ

突然ですが皆様の推しは"何柄の猫"ですか?筆者はキジトラ推しですが、パステル三毛や単色の黒猫も気になる存在です。
ところで猫は、なぜ柄の種類が豊富なのでしょう。ここまででも既に3種類の柄が登場しましたが、柄の入り具合まで話を広げると尽きないほどの種類が登場します。
そういえば、同じ母猫から誕生した子猫も柄のパターンがバラバラだったりしますよね。これも不思議に思う方が多いのではないでしょうか?
ということで今回は、『毛柄』が色とりどりな理由を5つ紹介いたします。合わせて、それぞれの毛色が性格に与える影響についても解説していきます。
1.突然変異が起きた

イエネコ直接の祖先であるリビアヤマネコは、現在もキジトラ柄に瓜二つな毛柄のみが生息しています。砂漠においてキジトラ特有の縞模様は保護色になるため、命を守るうえで大変有利なのです。
そこからイエネコに派生する中で、毛色を作る遺伝子に突然変異が起こりました。これがバリエーション豊富な毛柄の正体です。その数はなんと20種類以上。到底覚えきれないので、その1例をいくつか紹介いたします。
- W遺伝子:全てを白くする最強の遺伝子
- B遺伝子 :黒色を作る遺伝子
- T遺伝子 :縞模様(タビー)を作る遺伝子
- D遺伝子:色素を薄める遺伝子
- S遺伝子:一部を白くする遺伝子
これらの遺伝子にはそれぞれ優性遺伝と劣性遺伝が存在し、複雑に絡み合って毛柄を構成します。特殊なものとして『W遺伝子』は優性遺伝のみとなり、1つでもWを持った猫は例外なく白猫になります。
2.隔世遺伝が絡むミックスは無限大になる

例えば、ラグドールやペルシャといった純血種は毛色がある程度固定されているため、その色合いがある程度限定されたものになります。
逆に純血種の中でも固定されていないアメリカンショートヘアに関しては、実に100種類ほどのパターンがあるのだそう。
そもそも掛け合わせ自体に決まりがないミックス(雑種)に関しては、もはや無限大にパターンがあるといっても過言ではありません。その秘密は隔世遺伝にあります。
猫の毛柄は基本的に両親の遺伝子から半分ずつ譲り受けるのですが、中には1つ世代を飛ばした『おじいちゃん猫』や『おばあちゃん猫』から譲り受ける毛色もあります。これを隔世遺伝といいます。
つまりこの隔世遺伝を含めると、様々なパターンの猫が誕生するというわけです。同じきょうだいでも、突如としておばあちゃん似の猫が誕生するということもあります。
3.そもそも父猫自体が違うケースも

猫の繁殖は特殊で、1匹のオス猫と交尾を終えた後に別のオス猫と関係を持つことで、1度の妊娠期間に複数のオス猫の子どもを宿すことができます。猫は"交尾イコール即妊娠"というメカニズムです。
隔世遺伝でも説明が追いつかないほど似ていない兄弟がいるとすれば、おそらく異父兄弟です。この猫ならではの繁殖事情もまた、毛柄を豊富にしている理由の1つになります。
4.洋猫の血が混ざりさらに複雑化

鎖国が解かれ貿易が盛んになった日本には、様々な洋猫が渡来しました。『○○トラ』と呼ばれる猫の中でも『サバトラ猫』にはこの洋猫の血統が混ざっています。
この洋猫の登場もまた、毛柄の幅を広げる一助となったわけです。
5.自然淘汰が減少した

最初の項目でリビアヤマネコの保護色の話をしましたよね。実はイエネコの世界も、最初はキジトラ柄オンリーでした。これは遺伝子の問題ではなく、自然淘汰の影響です。
自然界では特に白猫は目立つ存在になるため、白を基調とした白黒猫や白猫が、外敵に襲われるなどの理由から命を落としていました。
しかし、完全室内飼育や地域猫という概念が普及した現代では事情が異なります。白猫も黒猫も安全に生きられるようになった結果、白黒猫が増えたのです。これもまた、毛柄の可能性を広げる理由の1つになります。
毛柄は性格に影響する?

例えば血液型がO型の人は大雑把というジンクスがあるように、猫の柄も"黒猫は穏やかな性格"や"白猫は神経質"という通説がありますよね。
毛柄は性格にも影響するものなのでしょうか?答えは『どちらともいえない』です。
まず、猫の性格を大きく左右するのは環境です。どんな環境で育つかが鍵を握るという意味ではあまり影響がないといえます。
一方で、"白猫は神経質"というのはあながち嘘ではありません。その理由は白猫の毛柄を作る『W遺伝子』がもたらす影響に秘密があります。
実はW遺伝子は全ての遺伝子を打ち消す作用があるほど強く、むしろ強すぎるが故に聴覚に影響を与えてしまうことがあるのです。
もちろん全ての白猫に当てはまるわけではありませんが、白猫は他の猫と比較すると難聴の猫が多い傾向があります。
猫にとって聴覚は、五感の中で最も重要な器官となります。そこにダメージがあるとすれば警戒心が強く、気が強いのも納得がいきますね。このように、一部は性格に影響を及ぼす可能性があります。
まとめ

猫の毛柄はリビアヤマネコからの突然変異や、複雑に絡み合った遺伝子の影響を受けて形成されるため、そのパターンも自ずと多くなります。
これらの遺伝子はあくまでも『毛柄』を構成するものであり、本来は性格の形成には関係がありません。
しかしながら、白猫のように特殊な例があります。とはいえ室内で生活を共にする分には、仮に聴覚に障害があっても大変なことばかりではありません。さらに言うと、全ての白猫の聴覚がダメージを受けるわけではないので、その点は誤解しないでくださいね。
以上、『毛柄』が色とりどりな理由でした。改めて身近な猫の被毛を観察してみてください。面白い発見があるかもしれません。