子猫が『1歳を迎えるまで』にすべきこと6つ

猫の出産ラッシュは年に2回。春と秋に訪れます。特に秋生まれの猫を取り巻く環境は過酷であり、厳しい冬を乗り越えられずに命を落としてしまうことも珍しくありません。そんな中、もしも母猫とはぐれてしまった子猫に遭遇したら…?
その時は必死で保護したものの、"無事に育つだろうか"という不安が付きまとうでしょう。そんな飼い主さんのために今回は、『1歳を迎えるまで』にすべきことを6つ紹介いたします。
1.哺乳

妊娠中の猫を保護し出産に立ち会った場合は母猫の補佐として、完全に母猫とはぐれてしまった子猫を保護した場合は母猫代わりとして、まずは『哺乳』をしなければなりません。
哺乳に関しては消化器官が発達し、乳歯が生え始める生後3〜4週齢まではミルクもしくは母乳(ここではミルクと表記)のみを与えます。
その後はミルク入りの離乳食、離乳食のみの食事へとステップアップし、完全に卒乳するのは概ね生後1ヶ月頃になります。その間は次のような頻度を目安に、哺乳瓶やシリンジを用いてミルクを与えます。
このとき、必ず子猫用のミルクを与えましょう。できれば母猫が持つ免疫成分を持つ初乳と同様の成分のものであることをおすすめします。
- 生後1日〜10日
1回の摂取量は5~8ml程度。2〜3時間おき(1日8回~12回)与える。
- 生後11日~20日
1回の摂取量は8~12ml程度。 3~4時間おき(1日6~8回)与える。
- 生後21日~30日
1回の摂取量は10~20ml程度。 4~6時間おき(1日4~6回)与える。
尚、ここでの数字はあくまでも目安です。この時期の子猫の成長度合いはかなり個体差があります。それぞれの子猫に見合った頻度と摂取量がまかなえれば良いので、かかりつけの獣医さんとご相談のうえ、焦らずに与えていってください。
2.排泄ケアとトイレットトレーニング

子猫は生後3週間までの間、自力で排泄することができません。よって、哺乳前と哺乳後に排泄のケアをする必要があります。方法は清潔なティッシュで軽く陰部を刺激するという至ってシンプルなものです。この方法で排尿と排便を促しましょう。
猫は習性により、トイレを教えなくても砂場を用意しておくとトイレに排せつをできる個体が多いです。そのため、基本的には良く動き回るようになったら、トイレを用意してあげましょう。
トレーニング方法もシンプルで、ソワソワし始めたらトイレに入れて見守るを繰り返してください。自分からトイレに行くのであれば、見守ってあげてください。失敗しても叱らずに、根気強く続けましょう。尚、子猫用のトイレは小さな箱に砂を敷き詰めるという代用品でも構いません。
この時期の子猫の便は軟便傾向が正常です。これを基準に硬くて出てこない、もしくは水様性の下痢が出ている場合は診察を受けましょう。特に下痢の場合は翌日になるのを待たずに受診してください。
3.体重管理と記録

100g前後で誕生した子猫は1日10g〜15gずつ体重が増え、生後1ヶ月には500gほどまで成長します。この間はミルクの飲み具合や排泄の調子によって体重の増え幅が変化しやすいので、体調管理をかねて体重を毎日記録するようにしてください。
これを目安に明らかな体重減少がある場合はもちろんのこと、増えすぎている場合も注意が必要です。いずれの場合も獣医さんに相談してください。
尚、毎日の記録は生後2ヶ月程度まで続けておくと安心です。体重の他にも実際に飲んだミルク量・排泄の状態・体調なども一緒に記録してください。
4.ウイルス検査とワクチン接種

外で保護した子猫はウイルス検査をする必要があります。特に先住猫がいる場合は必須です。ただし、生後2ヶ月までの間は母体の影響を受けていることから正確な結果を得られません。
よって2ヶ月以降に1回目の検査を受け、不安な結果となった場合は1歳になってから再度受けるようにしてください。尚、ここでのウイルスとは『猫エイズウイルス』『猫白血病ウイルス』を指します。これらの陰性が確定するまでの間は、先住猫から隔離して育ててください。
さらにウイルス検査と同様に、重要なものがあります。それは『ワクチン接種』です。
生後72時間以内に初乳を飲んだ子猫の体内には、母体から獲得した免疫が充填されます(獲得免疫)。ここから約2ヶ月間、ウイルスから守られます。
その後、生後2ヶ月を目安に獲得免疫を失うためワクチン接種によって免疫を補充することが推奨されます。
生後2ヶ月時に1回目、その後生後3ヶ月(ワクチン接種から約1ヶ月後を目安に)2回目を打っておくと安心です。ワクチンプログラムに関しては、子猫の母猫からの免疫をどの程度もらっているかという状況や、全身状態などにもよるため、かかりつけの先生と相談しながら決めましょう。
尚、ワクチンには副反応があります。接種後に風邪をひくと命に関わることもあります。過度に恐れる必要はないものの、獣医さんとご相談のうえベストな時期を選んでください。
5.避妊・去勢手術

子猫は生後6ヶ月頃を目安に性的に成熟し、子孫を残せる身体へと変化していきます。これに備えて繁殖を望まない場合や病気の予防のために、避妊・去勢手術を受けることをおすすめします。
そのメリットは望まない妊娠を避けられる他、メス猫の場合は乳腺腫瘍や子宮のトラブルの予防につなげることができます。乳腺腫瘍に関しては、若齢で発情期を迎えないうちに行う方が高い確率で予防が行えるとされています。その後は効力を失い、乳腺腫瘍(その約8割は悪性)を患う可能性が徐々に高くなるとされています。
オス猫の場合はスプレー行為・メス猫を捜し求める脱走・スタッドテイル・前立腺肥大などのトラブルの予防につながります。子猫の成長や健康状態に合わせて検討してみると良いでしょう。
とはいえ基本的には全身麻酔を用いるため、その副作用はゼロではありません。ご家庭や獣医さんとよく話し合って、その子にとって良いと思われる選択をしてください。
6.食事の切り替えと管理

哺乳の項目で『離乳食』のお話をしましたが、その後は子猫用のドライフードやウェットフード、避妊・去勢手術後は体重の変動に合わせて成猫用のフードへとその都度切り替えを行います。
その過程で大切なのは、より多くの味や食感に触れさせること・体調の変化がないかよく観察すること(猫も食物アレルギーを持つケースがある)・切り替えの際は少しずつ新しいフードに置き換える方法を取ることを心がけてください。
猫の好き嫌いは、生後半年までに定着します。将来何らかの『療法食』を必要とする場合に備えて、様々な味に慣れ親しんでもらえるのが理想です。
尚ミルクは必ず『子猫用』を、離乳食も必ず『子猫用』と記載のあるものを与えます。ドライフードは『総合栄養食』を、ウェットフードも総合栄養食があればそれを、なければ『一般食』と書かれたものをトッピング程度与えるようにしてください。
食事は健康の要です。おやつは程々に、しっかり食事(総合栄養食)から栄養を取らせるように頑張りましょう。
まとめ

実際に保護猫を育てた経験のある人は以前、生後1ヶ月までが『怒涛の1ヶ月』と表現されていました。それほどまでに目まぐるしい変化を遂げる他、体調が変わりやすい時期だと仰っていたのが印象的でした。
またある猫カフェの店長さんは『魔の生後2ヶ月』『6ヶ月危機』という表現をされており、獲得免疫を失う危機や、フードの切り替えの難しさを訴えておりました。
これを踏まえると、1歳を迎えるまでは気が抜けないというわけです。今回紹介いたしました内容が、少しでも皆様の"猫育て"のお役に立てれば嬉しいです。
尚、今回は"身体の成長"に重きを置いた内容になりましたが、実際には"心の成長"も重要な側面となります。特に『社会化期』と呼ばれる期間は心の発達に大きな意味を成すので、興味が湧いた方は調べてみてください。