複数の名前をもつ猫は、消防署や市役所を統括する「セレブ」に カナダ

複数の名前をもつ猫は、消防署や市役所を統括する「セレブ」に カナダ

カナダの小さな町の消防署に住み着いた猫は、地域を徘徊し、場所によって違う名前で呼ばれて人々に愛される存在です。高齢になりましたが、きょうも猫は自分の「コミュニティ」を巡回し、人々との交流を楽しんでいます。

消防署長に保護された子猫

消防士と猫

画像はイメージです

カナダのバンクーバー島にある小さな町メトコシンには、この14年間ずっと中心地周辺を仕切っている有名な猫がいます。しかもその猫は、訪れる場所によって「名前」を変えているというのです。

Stephanie Dunlop消防署長が保護したとき、子猫のCat(消防署ではそう呼ばれています)は、すぐに新しい環境に馴染みました。

「そのときから、この猫は町を牛耳ってしまいました」と話すのは、同署のJacob Lambさんです。

Catは消防署をメインの縄張りにしていますが、その周辺の敷地を自由に動き回っており、市役所や市議会、地域のイベントなどでは「かなり顔なじみ」の存在です。

「好奇心旺盛で、だれにでも挨拶したがるんです。人々もこの猫が大好きで、しょっちゅう地元の新聞にも記事が載ります。住民ならみんながこの猫のことを知っていますよ」とJacobさん。

この10年間消防署で働いている彼は、初めて猫を紹介されたときのことをよく覚えています。

「この猫は間違いなく消防署を管轄するトップです。階級でいえば署長のちょっと下かな。だって『ドアを開けて』『餌をちょうだい』といった指示しか出さず、もっとほかの命令ができる人間の署長のほうがえらいからです。でも消防ホースが消防車の大事な一部であるように、この猫は消防署の一部なのです」

市役所では別の名前で

オフィスにいる猫

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近くの市役所では、この猫はSparkyと呼ばれています。庁舎正面玄関には、うずくまる猫の写真とともに「Sparkyは消防署の猫ですが、ここも出入り自由です。社交的な猫なのでかわいがってあげてください」と書かれたポスターが掲示されています。

警備室には「施錠する前に建物内に猫がいないか確認すること」と書かれた注意書きも貼られており、この猫が施設内を自由に行き来して楽しんでいる状況を物語っています。

「市議会の議場の椅子にすっぽりと隠れていないか、いつも確認しなければなりません」と、Laura Whitmore-Guzauskas副財務官は話してくれました。

19年間市職員として働いているLauraさんは、Sparkyが初めて市役所に現れたときからの知り合いです。

「Sparkyのことが大好きです。もし消防署の猫じゃなかったら、何年も前に盗んでいたでしょうね」と彼女。実は数年前までこの猫がオスだと気づかなかったそうで、独特の「ミュー」というかわいい鳴き声から「Miss Mew」と呼んでいたそうです。

職員のストレス解消にも一役

おやつをもらう猫

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市役所でSparkyは庁舎内を巡回し、職員のようすを確認したり、都市計画担当官のオフィスに立ち寄ったり、市長を訪ねたりします。地域新聞社のオフィスや地元の喫茶店に出入りすることさえあるといいます。

人々は「愛嬌をふりまいて餌をもらい、1日に4、5食ほど食べているのではないか」と疑っています。たしかに体つきは「ぽっちゃり」していて、おやつをたっぷりもらっているようですよ。

Sparkyにおやつをこっそりあげすぎた犯人の1人が、昨年就任した市の最高財務責任者Geoffrey Kreekさんです。彼は執務室にあらゆる種類の猫用おやつを揃えたため、たちまちSparkyのお気に入りに「昇格」し、毎日立ち寄ってもらえるようになったのです。

「Sparkyがやって来るといつも、わたしのズボンをひどく引っ掻きます。いまや携帯電話に入っている写真は、Sparkyを写したものばかりですよ」と彼。

Geoffreyさんにとって、Sparkyはストレスを解消してくれる存在であり、この猫と過ごす時間はリラックスできる気分転換になります。

「彼は議論の多い市議会で本当に役立っています。議事が白熱するとこの猫がうろうろしてみんなの気持ちを紛らわせてくれるので、本当に助かります」というGeoffreyさんです。

若いころには無茶もしたけれど…

ハイティーのイメージ

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ところが消防署では、この猫は混乱を鎮めるよりもむしろ引き起こすことで知られています。

Jacobさんは「国際女性デー」に市役所の敷地で開催された盛大なイベントを思い出します。地域住民や地元の名士たちが記念碑の除幕式に集まったとき、どこからともなくCatが跳び込んできて、女性たちがお茶を楽しんでいる目の前に、獲物の小さな子ウサギを投げ込んだのです。その後の大騒ぎを想像してみてください。

でも好奇心旺盛なためにトラブルに巻き込まれたこともあります。首都圏管区の危険物処理車が訓練のために訪れたとき、Catはその車に乗ってしまい、遠くの町まで連れて行かれてしまいました。

「でもすぐに電話がかかってきて、『猫を迎えに来るように』いわれたんです。だれもがCatのことを知っていますからね」と話すJacobさんです。

高齢になった今では、Catの冒険は主に地元に限られています。

「最近は動きが鈍くなってきています。歳を重ねるにつれて、どんどん性格も丸くなっていますね。以前はよくネズミ捕りをしていましたが、最近は狩りにはあまり興味がなくなりました。まるでガーフィールドみたいなグウタラ猫なのです」とJacobさん。

でもCatは依然として人間に「これはダメ」といわれて命令されるのは大嫌いです。だからたとえテーブルの上にジャンプしても、だれも文句をいえないそうです。

みんなにやさしくされて、この伝説の猫はすっかり地域に定着しました。いくつもの名前で呼ばれながら、きょうも「縄張り」をゆっくり巡回していることでしょう。

出典:Purr-fectly in charge: Meet the cat who’s become top dog in a B.C. fire hall

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