1.空間の幅を測るセンサー

猫のヒゲの長さは、体の幅とほぼ同じになるような生え方をしています。実はヒゲは猫の空間認識のための大切な器官なのです。
よく猫の顔は、その猫が通れるか通れないかの指標になるといわれていますが、その判断に役立っているのがヒゲです。狭い場所に入れるかどうか、体を突っ込む前にヒゲで幅を確認しています。
ダンボールや柵の隙間など、猫が顔を突っ込んでいるときは、実は「測定中」というわけなのです。
2.平衡感覚を司るセンサー

猫のヒゲは、自分の体の幅だけでなく、バランス感覚にも重要な役割を果たしています。なぜなら猫のヒゲは、障害物はもちろん、周囲の空気の動きまで敏感に感知することができるからです。
高い場所や足場が細い場所でも、ふらつくことなくスムーズに移動することができたり、ジャンプするときも、ひげのセンサーが周囲の状況を把握するのに役立っています。
なお、高い場所から飛び降りたり、ウッカリ落下してしまったりしたときもヒゲから伝わる感覚情報によって、体を回転させて着地するといった働きもあります。
3.感情をあらわす「心のメーター」

猫は、姿勢や目、耳など、あらゆる器官に、感情が表われます。ヒゲも、猫の気持ちを表わす部位のひとつです。前向きなら興奮していたり警戒していたり、ゆったりとナチュラルなときはリラックスモード。集中しているときはピーンと張ったりします。
猫は人間のような「言葉」が使えないかわりに、自分の今の状況や気持ちを体のツールで表わすことができます。嬉しいことや嫌なことなどはストレートに表現されるので、人間と違って『嘘』はつけないでしょう。
なお、ヒゲは猫同士のコミュニケーションツールにもなります。ヒゲの位置や動きで、友好的なのか、敵意があるのか、などもくみ取ることができるのです。
猫同士が顔を近づけると、ヒゲとヒゲが軽くふれることがありますが、これは挨拶のようなもの。猫はヒゲで『空気を読む』ことがあるのです。
猫のヒゲのちょっとした秘密

猫のヒゲは、正式には「感覚毛」と呼ばれています。また猫のヒゲというと、鼻の横にあるものばかりだと思われがちですが、実は鼻の周りのほか、目の上や口角、あごなどにもあります。
他にも前肢の手首の付近の裏側にも触毛があり、他の毛よりもちょっぴり長くてしっかりした毛がそれです。ケラチンというタンパク質でできています。これは爪の鞘と同じなので、丈夫なのが特徴です。
ちなみに、猫のヒゲも人間の髪の毛と同じで、自然なサイクルで抜けます。お部屋をお掃除中に猫のヒゲを見つけたら「ラッキー」という説もあるので、中にはお宝発見!という感じで、抜けたヒゲを宝箱に集めている飼い主さんもいます。
切ってはいけない理由

猫のヒゲを見ていると、「ちょっと長くてジャマそう」「左右のバランスが気になる」と思うことがあるかもしれません。しかし、ヒゲは容姿を飾るものではなく、猫の命を守る“感覚器官”。決して切ってはいけない大切な理由があります。
先述したように、猫のヒゲは空間の幅や空気の流れを感じ取るセンサーの役割があります。 そのため、ヒゲを失うと距離感がわからなくなり、家具にぶつかったり、ジャンプの着地に失敗したりすることもあるのです。
普段なら軽やかに登れる高さでもちゅうちょしたり、登るのを戸惑ったり、動きがぎこちなくなるなどの変化が起きる可能性があります。 人間でいえば、突然目隠しをされたような状態になることを覚えておきましょう。
まとめ

猫のヒゲは、見た目以上に多くの役割を担う“生命のセンサー”。 空間を測り、空気を読み、感情まで表します。
したがって、切るのは当然NGですし、ヒゲはもちろん、ヒゲが生えているヒゲ袋にもたくさんの神経や血液が集中しています。ヒゲ袋は顔にあるので、猫が触られて喜ぶ場所と勘違いされやすいですが、多くの猫は不快に感じます。嫌がる素振りを見せたら、ひげ袋を触るのはやめましょう。
猫のヒゲは、敏感な精密機器のようなものです。むやみに引っ張ったり、手荒に扱うことのないよう注意してください。