猫が攻撃的になる『激怒症候群』の原因5つ 見分ける方法から飼い主にできることまで

猫が攻撃的になる『激怒症候群』の原因5つ 見分ける方法から飼い主にできることまで

普段は穏やかな愛猫が、ある日突然うなったり、噛みついたり――。「どうして急に怒るの?」「私の育て方が悪いの?」と戸惑う飼い主さんも多いのではないでしょうか。実は、そのような突然の攻撃行動の裏には『激怒症候群』という神経性の異常が隠れている場合があります。この症状は性格の問題ではなく、脳や神経の働きに一時的な異常が起きることで、猫自身もコントロールできずに起こしてしまう発作的な行動です。この記事では、「激怒症候群とは何か」をわかりやすく解説し、その原因・見分け方・飼い主ができる対処法を詳しく紹介します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫の『激怒症候群』とは?主な原因5つを解説

かみつく猫

「激怒症候群」とは、猫が突然攻撃的な行動を起こす神経性の異常行動のことです。普段は穏やかな猫が、何の前触れもなく威嚇したり、噛みついたりするのが特徴です。

外的な刺激に反応して怒っているように見えますが、実際には脳や神経の異常が関係している場合があるのです。性格の問題ではなく、医学的に“発作”や“神経伝達の乱れ”として起きているケースも報告されています。

激怒症候群の原因はひとつではなく、いくつかの要因が複雑に関係しています。代表的な原因を見ていきましょう。

1.てんかん性発作

脳から全身へ伝わる信号の異常により、突然の発作として現れます。この発作が「怒り」のような攻撃行動に見えることがあり、飼い主が触れた瞬間や何気ない刺激でスイッチが入ることもあります。

2.脳腫瘍などの脳疾患

髄膜腫などの脳腫瘍や炎症性の脳疾患が、猫の感情や行動を制御する領域に影響を与え、攻撃的な変化を引き起こすことがあります。特に高齢猫では、脳の老化や血流障害が関係するケースも。

3.神経伝達物質の異常

脳内で感情や衝動をコントロールするセロトニンやドーパミンのバランスが崩れると、興奮や攻撃性が強まることがあります。この神経伝達の異常は、ストレスや遺伝、栄養バランスなどさまざまな要因で起こるとされています。

4.感覚過敏や身体疾患

痛み、炎症、皮膚疾患、聴覚・触覚の過敏反応などが、猫を過度に刺激し、攻撃的な反応を引き起こすことがあります。一見「怒っている」ように見えても、実際は痛みや不快感の防御反応である場合が少なくありません。

5.遺伝的素因

ごく一部ではありますが、特定の遺伝子変異が神経の過剰興奮に関与している可能性も指摘されています。特定の猫種(例:アビシニアンやシャムなど)で発症傾向がみられるとの報告もありますが、まだ研究段階です。

激怒症候群の見分け方

怒り顔の猫

激怒症候群の最大の特徴は、「前触れがなく突然攻撃的になる」という点です。性格が穏やかな猫でも発症することがあり、普段の生活では予測が難しいのがこの症状の怖いところです。

以下のような行動パターンが見られる場合、激怒症候群の可能性が考えられます。

前触れやきっかけがなく突然攻撃行動が始まる

普段は落ち着いている猫が、何の刺激もないのに急に襲いかかることがあります。飼い主がただ通り過ぎただけ、撫でていた手を止めただけなど、明確な原因が見つからないのが特徴です。

威嚇行動がほとんど見られない

通常の攻撃行動では「シャー」「フーッ」といった威嚇や尻尾の膨らみなどの前兆がありますが、激怒症候群ではそれがほぼありません。まるでスイッチが入ったように、突然噛みつく・引っかくといった激しい行動に出ます。

また、発作は脳の興奮が抑えきれなくなる睡眠中や浅い眠りの状態で起きやすく、てんかん発作との関連も指摘されています。

発作後はすぐに穏やかな状態に戻る

発作的な攻撃が収まると、猫は何事もなかったかのように落ち着きを取り戻します。中には、飼い主に甘えるような仕草を見せることもあり、猫自身も“なぜ攻撃したのか”認識していないケースが多いです。

飼い主にできること・正しい接し方

スマホで撮影

激怒症候群の猫に対しては、「叱る」「無理に触れる」などの対応は逆効果です。この症状は性格ではなく、神経や脳の異常によって起きるため、しつけで解決することはできません。

まずは「猫自身もコントロールできない発作である」という理解を持つことが、飼い主としての第一歩です。

攻撃のきっかけを減らす環境づくり

猫が落ち着いて過ごせる静かな空間を確保しましょう。テレビや掃除機など大きな音を避け、他の動物や人の出入りもできるだけ制限します。

特に眠っているときやウトウトしているときは、刺激を与えないことが重要です。

叱らない・刺激しない接し方を徹底する

攻撃行動があったとしても、叱ったり、近づいて制止しようとするのは危険です。発作が起きている間は、目を合わせずにその場を離れ、猫が落ち着くまで待ちましょう。

猫の体調が戻ったあとも、しばらくは優しく声をかける程度に留めてください。

記録をつけて獣医師に相談する

攻撃行動が起きた日時・状況・猫の様子をメモしておくことで、診察時の判断材料になります。できればスマートフォンで動画を撮影できると、発作か行動問題かを見分けるヒントになります。

動物病院では、神経学的検査や血液検査、CT・MRIなどによって、脳や神経の異常がないかを確認します。

まとめ

寝室でくつろぐ猫と飼い主

激怒症候群は、猫の性格ではなく脳や神経の異常によって起こる発作的な行動です。突然の攻撃に驚くかもしれませんが、猫自身も無意識に反応しており、苦しんでいる状態です。

大切なのは叱ることではなく、原因を理解して冷静に対応すること。刺激を避け、静かな環境を整え、発作の様子を記録して獣医師に相談しましょう。

攻撃の後に穏やかな状態を取り戻すのは、猫が本来の性格に戻った証拠です。「怒っている」ではなく「助けを求めている」――そう受け止めることで、再び安心できる関係を築くことができます。

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