猫との『キス』でうつるかもしれない病気3選 知っておくべき感染の危険性も解説

猫との『キス』でうつるかもしれない病気3選 知っておくべき感染の危険性も解説

「キス」は愛情表現のひとつですが、相手が猫の場合、病気の危険性もあるため、注意が必要です。今回は、猫と「キス」を交わすと、どんな感染症にかかる可能性があるのか、3つの具体例を紹介します。今後の参考にしてみてください。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

1.基礎疾患のある人は要注意!パスツレラ症

口を大きく開く猫

まず、紹介したいのは、「パスツレラ症」です。

「パスツレラ症」は、「人獣共通感染症(ズーノーシス)」と呼ばれ、ほぼ100%の猫の口の中や爪に存在する常在菌・パスツレラ菌によって引き起こされる病気です。

主な感染経路としては、「引っ掻かれる」、「噛まれる」といったものが挙げられますが、「キス」もまた感染のきっかけになり得ます。

たとえば、「パスツレラ症」の猫に噛まれると、数時間後に患部が赤く腫れ、激しい痛みを伴うことがあります。また、リンパの腫れや発熱も典型的な症状のひとつです

健康的な人であれば、症状が出ることは少ないですが、高齢者をはじめ、免疫不全や糖尿病などの基礎疾患のある人は、「パスツレラ症」に感染する確率が高く、場合によっては、敗血症や髄膜炎などの重篤な症状に悪化するリスクもあります(死亡例もあり)。

「キス」や口移しは、「パスツレラ症」の危険性が高い行為です。極力、避けたほうが賢明でしょう。特に体調不良時は要注意です。

なお、愛猫に引っかかれたら、傷口をただちに消毒して、最寄りの医療機関で診てもらってください。

2.妊婦の方はトキソプラズマ症に気をつけて

毛づくろい中のメインクーン

2つ目は、「トキソプラズマ症」です。

「トキソプラズマ症」は、トキソプラズマ原虫(寄生虫の一種)によってうつる感染症のことで、主な感染経路は、加熱が不十分な肉の摂取、猫の糞便を媒介にした経口感染、の2つに分類されます。

経口感染で問題となるのは、肛門付近の毛づくろい時に口のまわりに付着した糞便です。愛猫との「キス」を通じて間接的に感染するケースがあります。

「パスツレラ症」と同様に、健康に問題がなければ、ほとんど無症状か、軽度の症状で済みます。ただし、妊婦さんが初めて「トキソプラズマ症」に感染すると、流産の恐れがあるほか、新生児が「先天性トキソプラズマ症」になってしまう危険性が生じます。

「先天性トキソプラズマ症」にかかった赤ちゃんは、小頭症や黄疸、失明につながる脈絡網膜炎などの障害が出る可能性もあります。ちなみに、「先天性トキソプラズマ症」の発症率は約10~15%とされています。

予防対策としては、経口感染を避けるため、猫のトイレ掃除は、妊婦さん以外の人が担当することが非常に大切です。トイレ掃除後は、徹底した手洗い消毒を心がけてください。

3.カプノサイトファーガ感染症の可能性もあり

子犬とキスする子猫

最後の3つ目は、「カプノサイトファーガ感染症」です。

「カプノサイトファーガ感染症」とは、猫(犬)の口腔内の常在菌、カプノサイトファーガ・カニモルサスが原因で起こる病気です。

引っ掻かれたり、噛まれたりなどが主な感染経路で、犬の場合では、火傷の傷口を舐められた女性が、「カプノサイトファーガ感染症」にかかった例も海外で報告されています。猫(犬)の唾液を介した感染には十分な注意が必要です。

今のところ感染例は少数ですが、「カプノサイトファーガ感染症」に感染すると、発熱や倦怠感、腹痛、吐き気などの症状が起こります。深刻化すると、敗血症や髄膜炎、出血しやすくなる播種性血管内凝固症候群(DIC)、さらに多臓器不全に陥ることもあります。

「パスツレラ症」と同じく、基礎疾患のある方や高齢者の方は、重症化のリスクもあるので、愛猫との「キス」や口移しは絶対に避けるようにしましょう。

まとめ

女性からキスされそうな白猫

今回は、愛猫との「キス」でどのような病気にかかりやすくなるか、3つの人獣共通感染症を例に解説しました。

結論から言うと、飼い主さんの健康上、愛猫との「キス」は控えたほうが無難です。「パスツレラ症」のように、たとえ飼い猫であっても、口腔内の常在菌が感染症の要因になる場合があります。

特に、妊婦さんのいるおうちでは、生まれてくる赤ちゃんのためにも、愛猫のトイレ当番は、他の家族のみなさんが担当するように努めてください。

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