8週齢規制とは何か?

8週齢規制とは、生後8週間(56日)に満たない犬や猫の販売を禁止する法的な規制です。
日本だけでなく欧米諸国でも同じような規制があり、動物の福祉向上を目的とした国際的な潮流の一部となっています。
なぜこのような規制があるのかというと、あまりにも幼い時期に母猫から引き離された子猫たちが、様々な問題を抱えるケースが多いという事実があるからです。
実はこの期間には子猫が学ぶべきことや身につけるべき能力があり、それがその猫の一生を左右する重要な基盤ともなります。
なおこれは動物愛護管理法に基づいて定められており、ペットショップやブリーダーなどの第一種動物取扱業者に適用される法律です。
つまり規制の対象となるのは商業的な販売のみで、個人間での譲渡については直接的な規制はありません。
とはいえ子猫の健康と幸福を考えれば、どのような経路で猫を迎える場合でも、8週齢を目安とするべきといえるでしょう。
猫の「8週齢規制」なぜ必要?知っておきたい2つの話

1.十分な免疫を得られない
生後8週齢までの期間は、子猫にとって母親から生きるための力を直接受け取る、非常に重要な時期です。
この時期の子猫は母乳、特に「初乳」から、移行抗体と呼ばれる病気と戦うための重要な成分を受け取ります。
この抗体のおかげで、子猫はまだ自力で免疫を十分に作れない時期でも、感染症から身を守ることができます。
初乳だけでなく、母乳は子猫に必要な栄養や免疫がたくさん含まれているもの。そのため離乳の時期までは子猫はしっかり母乳を飲むべきなのです。
しかし早期に母猫から離された子猫は、母乳が飲めず、免疫力が不十分な状態で新しい環境のストレスにさらされ、猫風邪などの感染症にかかるリスクが飛躍的に高まってしまいます。
そのようなケースを防ぐためにも、8週齢までは子猫を母猫の元から引き離してはいけないのです。
2.問題行動を起こしやすくなる
生まれてまもなく親兄弟から引き離された子猫は、心の成長においても問題が生じます。
まず猫の社会化期(周囲の環境に慣れたり、猫としての社会性を身につける期間)ですが、一般的に生後2〜9週齢頃です。
そしてこの間に子猫は母猫や兄弟猫と一緒に過ごすことで、猫としての基本的な行動やコミュニケーション能力を学びます。
たとえば遊びを通して噛む力の加減を覚えたり、他の猫との適切な距離感を学んだり、人のいる環境に慣れたりします。
ここでの経験は子猫が将来、人間や他の動物と穏やかに暮らすための基礎となるのです。
しかしこの重要な時期に母猫や兄弟から引き離されてしまうと、人間社会に馴染めず、過度に臆病になったり、攻撃的になったり、噛み癖や問題行動を抱えやすくなる可能性が高くなります。
つまり猫の健全な心の成長と社会性を育むためにも、8週齢までは親元での生活が欠かせないのです。
まとめ

8週齢規制は、猫の健康と幸福を守るための大切な制度です。
この期間は子猫にとって人生の基盤を築く大切な時間であり、この期間を母猫や兄弟猫と過ごすことで得られる免疫力、社会性、精神的安定は、代替不可能な価値があります。
そしてこうした猫の幸福を守るためにも、迎える側の人間にもできることはあるでしょう。
人間がこの規制の重要性を理解し、責任ある行動をとることが、猫が幸せに暮らせる社会の実現に近づくのです。