猫のヒゲを切ってはいけない理由

猫のヒゲは、空間の広がりや障害物との距離、風の動きなどをとらえる「触覚センサー」のような働きをしています。暗いところでの移動やジャンプ、狩りの際の反応などに欠かせない繊細な感覚器官です。
たとえるなら、スマホのセンサーのようなもの。顔が近づくと画面が消えたり、傾きを感知したりするあの仕組みと似ています。
そんな大切なヒゲを切ってはいけない理由は、次の通り3つです。
1.空間の認識ができなくなってしまう
猫のヒゲの主な役目は、周囲の空間を立体的につかむこと。ヒゲの先端で空気の微妙な動きや物との距離を感じ取り、自分を中心とした奥行きや幅の感覚を3Dで把握しています。
ヒゲは、猫が狭い場所にスルッと出入りするために欠かせない体の一部です。そんなヒゲを切ってしまうと、猫は行動を正しく行えなくなることがあるのです。
また、猫は暗い場所でもヒゲを使って周囲の様子を探ることができます。そのため、ヒゲは薄暗い時間に活動する猫にとって、とても重要な感覚器でもあるのです。
2.バランス感覚の維持
空間の認識は、身体のバランス感覚の維持にも関係してきます。
ヒゲには、空間の広がりや周囲との距離感をつかむ役割があるため、それを切ってしまうとこうした感覚がうまく働かなくなり、足場を見誤ってしまったり、高い場所に対して不安を感じたりすることがあります。
猫は、体長の何倍もあるような高い場所からジャンプするとき、着地点を見極め、空中で瞬時に体の向きを変えるといった動作をすることがあります。このようなバランス感覚を保つうえでも、ヒゲは重要な役割を担っているのです。
3.獲物や物体の動きを感知
猫のヒゲは、目の前の獲物や物の動きを正確にとらえるためにも役立っています。
遊ぶとき、おもちゃの方向にヒゲが向いていることに気づいた方もいるかもしれません。また、食事中にお皿の位置を確認するようなときにも、ヒゲが活躍しています。
一般的に猫は動体視力が優れているといわれますが、至近距離での動きや、暗い場所での物体の動きなど、目ではとらえにくい状況でもヒゲが大きく貢献しているのです。
この感覚が失われると、狩猟本能や遊びへの関心の低下や物との距離感をつかみにくくなることから警戒心が強まる場合もあります。
猫のヒゲを切ったらこんなトラブルが!

小さなお子さんの出来心やトリミングの失敗などで、意図せず猫のヒゲを切ってしまう事故が起きるかもしれません。
すると猫は、これまで通れた狭い場所を通ろうとしても、すんなり通れなくなるかもしれません。通りたくてもそのサイズがわからないため入れない、あるいは頭をムリに突っ込んで引っかかってしまうなんてことになります。ドーム型トイレを使えなくなることも考えられます。
また、段差からの着地に失敗することもありますので、階段の上り下り、特にキャットタワーは非常に危険です。猫自身も怖がって上らなくなるかもしれません。
猫のヒゲが元通りに伸びるまでは、こうしたストレスがずっと継続するため、食欲の低下や体調不良といった精神的負担にもつながることがあります。猫にとって「感覚のアンテナ」であるヒゲを失ってしまうと、日常の行動全般に支障が出やすくなってしまうのです。
まとめ

猫のヒゲは、触覚・空間把握・バランス感覚などを担う、非常に重要な感覚器官です。一時的に切ってしまっただけでも、行動の不安定やストレスなど、猫の生活に大きな影響を与える可能性があります。
元の長さに伸びるまでに2〜3ヵ月、すべてのヒゲが完全に生えそろうには半年ほどかかることもあるため、飼い主としては注意が必要です。
猫のヒゲは私たちが思っているよりも繊細な部分ですので、絶対に切ったり、引っ張ったりしないようにしてあげましょう。