猫にも起こる皮膚リンパ管奇形とは

皮膚リンパ管奇形とは、生まれつきリンパ管が異常に広がってしまう病気です。人では比較的よく知られていますが、猫での報告はとても少なく、診断が難しい病気のひとつです。
リンパ管は体の中で水分を回収する役割を持っており、これが異常に広がると皮膚の下に小さな嚢胞ができ、時に破れて出血してしまいます。
今回報告されたのは、生後7か月の若い猫でした。4か月ほど前から左後ろ足の裏に腫れと出血が続き、歩くと跛行したり、患部をしきりになめたりする症状が見られました。
初めは感染症や炎症を疑って薬を使いましたが改善せず、詳しい検査で血管の異常が関わっている可能性が浮かび上がりました。皮膚リンパ管奇形は猫ではとても珍しく、過去にも数例しか報告がありません。そのため、診断と治療の選択が特に難しい病気といえます。
出血を繰り返した猫の診断と治療の経過

この猫はまず足の皮膚を一部切り取って調べる「パンチ生検」を受けました。その結果、血管の異常が疑われましたが、生検の跡から出血が止まらず、電気メスで焼灼して止血を行う必要がありました。その後も出血は改善と再発を繰り返しました。
30日目に造影CTを行ったところ、足の周囲に新しい血管が増え、異常に広がっている様子が確認されました。根本的な治療のため、第37日目に左後ろ足の第4指と第5指を切除する手術が行われました。切除した組織を詳しく調べたところ、最終的に皮膚リンパ管奇形と診断されました。
手術後1か月では皮膚表面に小さな嚢胞が残っていましたが、その後20か月の経過で出血は起こらず、猫は普通に歩いたり生活を送ったりできるようになりました。完全に取り切れなかった可能性はあるものの、猫の生活の質を大きく損なうことなく症状が抑えられた点は大きな成果といえます。
飼い主が知っておきたい皮膚リンパ管奇形の特徴

皮膚リンパ管奇形は猫では稀な病気ですが、若い時期に発症しやすい可能性があります。足先や足裏に小さな赤い嚢胞ができたり、繰り返す出血が見られたりすることが特徴です。感染症や外傷と間違われやすく、通常の治療ではなかなか改善しません。
診断には病理組織検査やCT検査が必要となり、血管とリンパ管を区別するために特殊な免疫染色も行われます。治療の基本は外科的に切除することですが、猫の場合は生活の質を守るために手術の範囲を調整することもあります。今回のように指を一部切除しても、猫は歩行に大きな支障なく生活できることがわかっています。
この病気は非常に珍しいため、すべての獣医師がすぐに診断できるわけではありません。しかし、出血を繰り返す、皮膚に小さな嚢胞がいくつも出るといった症状がある場合、皮膚リンパ管奇形の可能性を考え、専門的な診断を受けることが重要です。
早期に正しく診断されれば、適切な治療によって症状を抑え、猫の快適な生活を守ることができます。
まとめ

猫の皮膚リンパ管奇形は稀ですが、若い猫で繰り返す出血を引き起こすことがあります。早期の診断と適切な外科治療で、猫は元気な生活を取り戻すことが可能です。
(参考文献:獣医臨床皮膚科 28 (1): 3–9, 2022)