猫の『突然死』はなぜ起きてしまう?4つの恐ろしい原因 何か予兆はある?

猫の『突然死』はなぜ起きてしまう?4つの恐ろしい原因 何か予兆はある?

愛猫との生活を送る中で、恐ろしい出来事の一つが「突然死」です。朝起きたら動かなくなっていた、あるいは数時間前まで元気だったのに急に容態が悪化して亡くなってしまった——このような状況に直面すると、飼い主は深い悲しみだけでなく「なぜ?」という疑問を抱えることでしょう。猫の突然死は予測できないからこそ心の準備ができず、その衝撃は計り知れません。そこで今回は猫の突然死がなぜ起こるのか、その主な原因と予兆について解説します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫の『突然死』はなぜ起きてしまう?4つの恐ろしい原因

愛猫の遺骨と遺影

1.心疾患

猫の突然死の主な原因の一つが、心疾患です。

なかでも肥大型心筋症は猫に多い病気であり、心臓の筋肉が異常に厚くなることで血液の循環が妨げられ、突然死を起こす原因になりかねない病気です。

この病気の怖いところは、実際に心筋症をもっていたとしても、猫に明らかな異常が確認できずに飼い主が気づかないこと。

いわば「隠れ心筋症」の猫も多く、これが「健康そうに見えていた猫が、ある日突然亡くなった」という悲しい事態につながります。

予防策として、とくに7歳以上の猫では、健康診断と心臓超音波検査(エコー検査)がおすすめです。エコー検査によって、目に見える症状があらわれる前に心臓の異常を発見できる可能性があります。

2.血栓症(動脈血栓塞栓症)

猫の突然死の要因となる血栓症、特に動脈血栓塞栓症は、心臓内で形成された血のかたまりが動脈を塞ぎ、深刻な事態を引き起こす病気です。

多くの場合、基礎疾患として肥大型心筋症が存在し、心臓の機能低下によって血流が悪化し、血栓ができやすくなります。

そしてこの血栓が詰まりやすいのは、後肢の付け根にある大動脈の分岐部です。

もし血栓が詰まると、突然の後ろ足の麻痺や激しい痛みを引き起こし、血流が途絶えた足は冷たくなり、肉球の色が悪くなることもあります。非常に致死率が高く、緊急を要す状態です。

血栓症の予防に関して、完全に予防することは難しいですが、心臓病の持病を把握しておくことや、適切な管理を行いリスクを軽減させることはできます。

3.フィラリア症

猫の突然死の原因の一つとして、「猫のフィラリア症」も考えられます。

犬のフィラリア症はよく知られていますが、猫もフィラリアに感染することがあり、犬とは異なる形で重篤な症状を引き起こすことがあります。

猫のフィラリア症は、犬のように心臓に多数の成虫が寄生することは比較的少ないものの、幼虫が肺や血管に移行する際に炎症を引き起こし、呼吸器系の病気を引き起こすことがあるのです。

また成虫の死骸が血管に詰まると、血栓塞栓症を引き起こし、突然死の原因にもなりかねます。

犬の場合は簡易的なフィラリア検査などがありますが、猫のフィラリア症は、犬に比べて診断が難しいとされ、そのため予防(フィラリア予防薬)が非常に重要なのです。

4.ストレス

ストレスは直接的な死因となることは稀であるものの、免疫力の低下や体調不良を引き起こし、結果としてさまざまな病気を誘発して、それが突然死につながる可能性があります。

とくに猫は環境の変化に敏感な動物であり、引っ越し、新しい家族(人間や動物)が増える、騒音、過度な構いすぎなど、些細なことでもストレスの原因となります。

また多頭飼育における相性の悪さや、飼い主とのコミュニケーションが少ない生活もストレスとなるでしょう。

こうしたストレス状態が長期間続くと、食欲不振、嘔吐、下痢、泌尿器系の問題、免疫力の低下などを引き起こし、基礎疾患を悪化させ、突然死のリスクを高めます。

「突然死」には予兆がある?

聴診される猫

猫の「突然死」とは、これまで元気に過ごしていた猫が、外的要因(事故や中毒など)を除き、明らかな前兆なく急激に体調を崩し、24時間以内に死亡する現象を指します。

つまりこの定義からも分かるように、突然死に「明らかな予兆」はない、あるいは非常に分かりにくいものと分かります。

しかし注意深く観察することで、わずかながらも異変に気づける可能性はあります。

たとえば以前よりも活動量が減った、疲れやすい様子が見られる、咳や呼吸が少し荒い気がする、失禁といった変化は、何らかの病気が進行しているサインかもしれません。

また食欲不振や嘔吐が続く場合も、体調不良の兆候です。これらの症状は、必ずしも突然死に直結するわけではありませんが、見過ごしてしまうと、病気が進行し、結果的に突然死につながることもあります。

そのため「いつもと違う」と感じたら、自己判断せずに早めに獣医師に相談することが、予期せぬ事態を防ぐためにできることと言えるでしょう。

また人間同様、定期的な健康診断も、隠れた病気を早期に発見する上で非常に重要です。

まとめ

猫と向き合う女性

猫の突然死は、飼い主にとって計り知れない悲しみをもたらしますが、できることは決して少なくありません。

定期的な健康診断、適切な飼育環境の整備、日々の注意深い観察、そして万が一の事態に備えた知識を持つことが、愛猫の健康と長寿につながるでしょう。

ただし予防策を講じていても、残念ながら突然死を完全に防ぐことはできない場合もあります。そのような場合でも自身が最善を尽くしたと言えるように、しっかり備えておくのも大切です。

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