猫の健康を支える『必須脂肪酸』とは?働きや不足した場合のトラブルなど

猫の健康を支える『必須脂肪酸』とは?働きや不足した場合のトラブルなど

「最近、うちの猫の毛並みがパサパサ…」そんな悩み、ありませんか?実はそれ、必須脂肪酸の不足かもしれません。この記事では、猫の健康を支える重要な栄養素「必須脂肪酸」について、その働きや不足による症状、適切な補い方まで、わかりやすく解説します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

必須脂肪酸は猫の健康維持に欠かせない

猫と魚

猫の健康を保つうえで、日々の食事に含まれる栄養素はとても重要です。その中でも「必須脂肪酸」は、猫の体内で合成できないため、毎日の食事からしっかりと摂取する必要があります。

必須脂肪酸の種類

猫にとって特に重要な脂肪酸は、次のように分類されます。

【オメガ3系脂肪酸】

  • DHA(ドコサヘキサエン酸):脳や神経の働きを支える
  • EPA(エイコサペンタエン酸):炎症を抑える働きや、免疫バランスの維持にも関与

【オメガ6系脂肪酸】

  • リノール酸:皮膚のバリア機能や被毛の艶を保つ
  • アラキドン酸:ホルモンの合成や免疫反応に必要とされる

必須脂肪酸の働き

必須脂肪酸は、体内で直接的・間接的にさまざまな作用をもたらしています。特に注目されているのが、以下のような働きです。

  • 細胞膜の柔軟性を保ち、情報伝達をスムーズにする
  • 皮膚のバリア機能を正常に保つことで、外部刺激から守る
  • 炎症反応を調整し、慢性トラブルの進行を抑える
  • 神経や脳の健康をサポートし、行動の安定に寄与する
  • ホルモンや免疫物質の原料となり、全身の健康維持に貢献する

このように、必須脂肪酸は単なる「栄養素」の枠を超え、猫の身体全体のバランスを整えるための要として機能しています。毎日の食事から十分に、かつ偏りなく摂ることが健康維持の基本となります。

必須脂肪酸が不足すると、猫の体に何が起こる?

毛づくろいをする子猫

猫の体は、必須脂肪酸の恩恵を受けながら日々健康を維持しています。ところが、この脂肪酸が不足すると、体のあちこちに不調があらわれてくることがあります。初期には見過ごされがちなサインも多いため、日頃からの観察と知識がとても大切です。

不足によってあらわれる主な症状

必須脂肪酸の不足が続くと、次のような変化が見られることがあります。

  • 被毛の艶がなくなり、パサついた毛並みになる
  • 皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみや炎症が起こる
  • フケや脱毛が目立つようになる
  • 外部からの刺激に弱くなり、傷が治りにくくなる

これらは特にオメガ6系脂肪酸が不足した場合に見られやすく、皮膚のバリア機能が低下していることが原因とされています。外部からの刺激やアレルゲンに敏感になり、繰り返し引っかいたり舐めたりする様子が見られたら、栄養の見直しが必要かもしれません。

また、オメガ3系脂肪酸が不足している場合には、炎症反応がうまく抑えられなくなり、関節痛や慢性のかゆみ、さらには行動面での変化(落ち着きがなくなる、睡眠の質が下がるなど)も指摘されています。

慢性的な不足が引き起こす健康リスク

脂肪酸の不足が長期間続くと、目に見える症状だけでなく、身体の内側でもトラブルが進行している可能性があります。

  • 免疫機能の低下による病気への抵抗力の低下
  • ホルモンバランスの乱れによる内臓機能の不調
  • 高齢猫における認知機能の低下や行動異常
  • 炎症が慢性化し、腸や関節などへの負担が増す

こうした変化はすぐには表に出ないことも多く、定期的な健康診断で早めに気づくことが大切です。

必須脂肪酸を効果的に補う方法

ご飯を食べる猫

必須脂肪酸は、猫の体にとって重要な栄養素ですが、体内でつくることができないため、日々の食事から意識的に取り入れることが必要です。特に毛並みや皮膚のトラブル、免疫機能の低下が見られる場合は、脂肪酸の摂取状況を見直すことで改善につながることもあります。

キャットフードに含まれる脂肪酸のチェックポイント

市販のキャットフードには、脂肪酸がすでに配合されているものもあります。ただし、すべてのフードに十分な量やバランスで含まれているとは限りません。以下の点に注意して選ぶことが大切です。

  • 原材料に「魚油」「鶏脂」「亜麻仁油」などの脂肪酸源が記載されているか
  • DHA、EPA、リノール酸などの表記が明確にあるか
  • 製造日や保存状態が明記されており、酸化対策がされているか
  • 添加物が少なく、無香料無着色であること

脂肪酸は酸化しやすい性質を持つため、品質の劣化を防ぐ保存方法や、パッケージの工夫にも注目してみましょう。

また、「自然派」や「グレインフリー」「アレルギー対策」といった表示にこだわる方も多いですが、脂肪酸の種類や含有量についても併せて確認することが、健康維持には欠かせません。

サプリメントで脂肪酸を補うという選択肢

必要に応じて、キャットフードに加えて脂肪酸サプリメントを利用する方法もあります。次のような製品がよく使われています。

  • 魚由来のDHAEPAサプリメント(カプセルや液体タイプ)
  • MCTオイル(中鎖脂肪酸)、亜麻仁油など植物由来の脂肪酸オイル
  • 総合栄養バランスをサポートするプレミックスタイプ

サプリメントは、使用量を誤ると下痢や吐き気などの副作用が出ることもあるため、必ず表示に従うか、事前に獣医師に相談することが安心です。

まとめ

サプリをかじる猫

必須脂肪酸は、猫の体の中でさまざまな働きを担う、非常に重要な栄養素です。毛並みや皮膚の状態、免疫機能、脳や神経の健康にまで関わっており、不足すれば目に見える変化だけでなく、体の内側にも影響が及びます。

猫はこれらの脂肪酸を自分で合成できないため、毎日の食事からしっかりと補うことが欠かせません。キャットフードやサプリメントを上手に活用しながら、栄養バランスを整えていくことが、健康で穏やかな日々につながります。

猫が健やかに年齢を重ねていけるように、まずは「今の食生活を見直すこと」からはじめてみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、大きな安心へとつながります。

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