猫の『おしっこ』が強烈にくさい理由

思わず鼻をつまみたくなるほどくさ〜い猫のおしっこ。なぜ、これ程までににおいが強烈なのでしょうか。
おしっこの成分によるもの
猫の尿にはアミノ酸の一種である「フェリニン」という物質が含まれています。これは猫の尿にのみ存在する化合物で、フェロモンの素とされています。
猫がフェロモンを散布するといえば、そういわゆるマーキング。スプレー行為と呼ばれるものです。通常の尿にもこの成分は含まれているため、猫の尿臭は必然的に強くなるのです。
未去勢のオスは特にくさい
スプレー行為自体は性別を問わず起こる現象ですが、とりわけ未去勢のまま成猫になったオス猫の尿は強烈なにおいを放ちます。
ここでもやはりフェリニンが関与しており、この条件が揃った猫はより濃度が増します。よって未避妊のメス猫と比べ、未去勢のオス猫のほうが尿臭が目立つのです。
尿を作るメカニズムによるもの
性別を問わず、尿を作り出すメカニズムそのものにも原因があります。
元々イエネコの祖先は砂漠で暮らしていた動物なので、あまり水を飲まずとも循環を保てるよう、少量の尿で生活ができる体へと進化しました。
その結果濃縮された尿を生成、排出することになったのです。これは現代を生きるイエネコの体質にも引き継がれています。つまり、猫そのものの習性があの悪臭を作り出したというわけです。
いつもと違う悪臭はトラブルサイン

猫のおしっこがくさいのは、いわば当たり前のこと。しかし、通常のにおいとは明らかに異なる悪臭は、体からのSOSの可能性があります。
ここからは、注意すべきにおいの特徴と関連する病気についてご紹介いたします。
1.ツーンと鼻に刺さる悪臭
いつも以上にツーンと鼻に刺さるような強烈なにおいは、細菌性膀胱炎のサインかもしれません。
ウレアーゼ産生菌を原因とする細菌性膀胱炎では、悪化した際にアンモニアが生成されるため、特徴的なにおいを放つのです。
さらに二次的弊害として、尿石症を引き起こす恐れがあります。
感染した細菌の種類によって匂いは異なりますし、匂いに特徴が出ない場合もありますが、悪臭がまる1日続く、血尿や頻尿が見られるようであれば、診察を受けましょう。
2.甘酸っぱい独特の悪臭
おしっこから甘酸っぱいような独特のにおいを感じたら、糖尿病を疑いましょう。
このにおいの正体はケトン体という物質で、糖尿病を発症すると尿中に流れ出てきます。ケトン体が関与した尿臭であることから、「ケトン臭」と呼ばれています。
猫が糖尿病になるきっかけは、加齢・肥満・投薬治療の副作用・遺伝など多岐にわたります。
ケトン臭は、ある意味膀胱炎のサインよりも気づきやすいにおいです。異変を捉えたら獣医さんに相談してください。
無臭も手放しでは喜べない

余談にはなりますが、全くにおわない尿もまた正常とは言い難い状態です。
なぜかというと、猫の宿敵である『慢性腎不全』のサインだからです。
冒頭でも紹介したように、猫のおしっこが作られる仕組みは特殊です。この特異体質は生きるうえで必須な反面、腎臓に負荷をかけるというデメリットがあります。
猫が往々にして腎臓を患いやすいのはこのためで、老廃物をろ過する機能が低下した腎臓からは薄い尿しか排出されなくなってしまいます。
その結果、本来であれば感じ取れるはずのアンモニア臭やフェリニンのにおいが消えてしまうのです。
最近愛猫の尿が全くにおわなくなったという場合は、一度詳しく診てもらってください。
まとめ

猫は砂漠という環境に適応するために特異体質を備え、ここまで生き延びて来ました。
猫のおしっこがくさいのは、そもそものメカニズムと、フェリニンという猫のみが持つ特殊な成分が原因です。これ自体は猫の体質によるものなので、特に心配しなくても大丈夫です。
問題は強烈な悪臭を放つケースと甘酸っぱい独特のにおいを示すケース、更には無臭という矛盾に似たケースです。
日頃から新鮮な水が飲める環境を整えて水分補給を促し、こまめにトイレを掃除してあげてください。それでも異変が現れた場合は遅くとも翌朝には診察を受けるようにしましょう。
早期発見・早期治療は猫の健康寿命を確実に伸ばします。些細なことですが、おしっこのニオイを気にする習慣をつけておくと安心です。