子猫の『8週齢規制』を知っていますか?その内容や、なぜこの規制が必要なのかを解説

子猫の『8週齢規制』を知っていますか?その内容や、なぜこの規制が必要なのかを解説

4度目の動物愛護法の改正で、「8週齢規制」が施行されました。この変化にはいったいどんな目的があるのでしょうか?移行の背景にも注目しながら、その必要性を解説します。猫に対する理解を深めるためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

子猫の「8周齢規制」とは?

横たわる子猫

「8周齢規制」とは、生後8週(56日)に満たない子猫(子犬)の販売引き渡しや販売目的での展示を禁じる規定のことです。2019年6月の動物愛護法の改正時(4度目)に公布され、2年の猶予期間を経て、2021年6月に施行、そして現在に至っています。

改正以前まで「7週齢規制」が続いていたのは、ペット関連業界の根強い要望が背景にあったと考えられています。ペット関連業界の観点で見ると、より幼く、かわいい状態のペットを販売したほうが売れやすく、管理コストも抑制できるからです。

日々、成長が著しい子猫(子犬)にとって一週間は、性格形成や健康面、のちの行動面においても非常に大切な時間です。「7週齢規制」から「8週齢規制」への移行は、単に一週間延長になっただけでなく、子猫(子犬)の一生をも左右する大きな変化と言えます。

次のトピックでは、なぜ一週間も延びて「8週齢規制」に変わる必要があったのか、子猫のケースに絞って、詳しく解説します。

母猫の母乳は子猫の強い身体をつくる

授乳中の猫ファミリー

母猫の母乳は、高タンパク、高脂肪の完全栄養食であり、子猫の健やかな成長のためには欠かせません。特に大事なのは、母乳の「初乳」です。移行抗体(免疫物質)が含まれた「初乳」には、細菌やウィルスの侵入を防ぐ役割があります。

生後4~8週間の「離乳期」まで、栄養たっぷりの母乳を飲み続ければ、子猫の身体も大きく成長し、なおかつ、病気に負けない身体をつくれます。子猫期に培う健康な身体は、成猫になって以降も元気に暮らすための重要な基礎です。

もしあまりにも早過ぎるタイミングで母猫と離れてしまうと、必要な授乳量を満たせず、栄養や免疫力不足に陥り、感染症や病気にかかりやすくなる恐れが出てきます。

そういった深刻な事態を避けるためにも、万全を期して、「8週齢規制」へと移行した経緯があります。

早過ぎる親離れは問題行動の原因に

じゃれ合う子猫たち

個体差や猫種の違いはありますが、生後2~8週齢頃の期間を子猫の「社会化期」と呼んでいます。「社会化期」は、子猫が、人を含めたまわりの世界を理解し、母猫、兄弟猫との関わりを通じて、社会性やルール、猫としての適切なふるまいを学ぶ大切な時期です。

具体的には、兄弟猫とじゃれ合うことで、猫同士のコミュニケーション術を身につけ、相手の反応を見極めながら、力加減などを学習します。ただ戯れ合っているように見えますが、子猫同士の遊びは、いわば、猫になるためのレッスンです。また、親猫の愛情を受けること、狩りの方法を学ぶこと、イタズラをして怒られることも重要な社会化要素です。

仮に、この「社会化期」前に、母猫や兄弟猫から離れ離れになってしまうと、未熟な社会性を抱えたまま成長し、他の猫との遊び方がわからなかったり、人に対しても過剰な警戒心を持つ猫になる可能性があります。

さらに、厄介なのは、「社会化期」の経験不足のために、おうちに迎え入れた後、飼い主さんを噛んだり、引っ掻いたりする問題行動が多い子になってしまうケースがあることです。

「8週齢規制」の目的には、子猫の健康促進のほかにも、問題行動の芽を未然に摘む側面も含まれています。

子猫にとって一週間は、身体だけでなく、精神面での成長を促す意味でも、計り知れない重要性を持っています。その間に身につけた猫としての心得は、成猫になってからも大いに役に立つはずです。

まとめ

集まる子猫たち

今回は、子猫に関する「8週齢規制」について解説しました。結論から言うと、「8週齢規制」は、社会性欠如による問題行動を防ぎ、感染症などのリスクから子猫を守る狙いがあります。

本文でも紹介したように、子猫の「社会化期」は、今後の一生を決めかねない大事な時期です。この間に多くの人と関わり、母猫や兄弟猫とたっぷり遊んだ子猫は、精神的にも安定した成猫として育ちます。

愛猫のことだけでなく、猫全般についても理解を深め、猫たちが幸せに生きるための環境をみなさんでつくっていきましょう。

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