猫の心筋症とは?静かに進行する病気の正体

猫の心筋症は、心臓の筋肉に異常が生じる病気の総称です。主に、心臓の壁が厚くなる「肥大型心筋症(HCM)」、心臓の壁が硬くなる「拘束型心筋症(RCM)」、そして心臓の壁が薄く拡張する「拡張型心筋症(DCM)」などのタイプに分類されます。
このうち、最も多く見られるのが肥大型心筋症(HCM)です。これらの病気は、特に原因が不明な場合が多く、見た目には健康そうな猫でも静かに進行することがあります。
心筋症が進行すると、一部の猫ではうっ血性心不全、動脈血栓塞栓症(いわゆる血栓症、血の塊が血管につまってしまう病気)、または突然死につながることがあります。しかし、すべての猫でこれらの重篤な症状が出るわけではなく、中には通常の寿命を全うする猫もいます。
早期発見の鍵!猫の心筋症に気づくためのポイント

猫の心筋症は「静かに進行する病気」と言われるように、初期段階では目立った症状が見られないことがほとんどです。しかし、飼い主さんが日頃から愛猫の様子をよく観察することで、異変に気づける可能性があります。
心筋症を持つ猫の多くは、呼吸が速い、苦しそうに呼吸をする、食欲がない、隠れてじっとしているなどの非特異的なサインを示すことがあります。特に呼吸が速い、苦しそうなどの呼吸器症状は、心不全の最も一般的なサインです。また、血栓症を発症すると、後ろ足が麻痺したり、力が入らなくなったりすることがあります。
獣医師の診察では、聴診器で心臓の雑音や不整脈が確認されることがあります。しかし、心雑音がない場合も多いため、心雑音の有無だけで病気を判断することはできない点に留意する必要があります。早期発見には、健康診断時のエコー検査や血液検査(心臓マーカーなど)も有効な手段です。
診断と管理:獣医師との連携が重要

猫の心筋症を正確に診断するためには、心臓超音波検査(心エコー検査)が最も正確な検査方法とされています。この検査によって心臓の壁の厚さや機能、心臓の拡大などを詳しく調べることができます。
さらに、猫の心筋症には「ステージ分類」というものがあり、病気の進行度によってA、B1、B2、C、Dの5つの段階に分けられます。
<ステージ分類の概要>
- ステージA: 心筋症を発症しやすい猫(例:メインクーンやラグドールなどの特定の猫種)が該当しますが、まだ心筋症の兆候はありません。
- ステージB: 心筋症はあるものの、まだ臨床的な症状が出ていない段階です。心房の拡大の程度によって、さらにB1(低リスク)とB2(高リスク)に細かく分けられます。
- ステージC: うっ血性心不全や血栓症などの臨床症状が出ている段階です。
- ステージD: 治療に反応しない、難治性の心不全の段階です。
愛猫がどのステージにあるかを把握することは、予後予測(あとどれくらい生きることができるかなど)や治療計画を立てる上で非常に重要です。
また、甲状腺機能亢進症や全身性高血圧など、心筋症の引き金となる可能性のある基礎疾患を特定するための検査も推奨されます。
まとめ

猫の心筋症は早期発見が難しく、静かに進行します。しかし、日々の観察と定期的な健康診断、そして異変に気づいた際の迅速な獣医師の受診によって、愛猫がより長く、快適に過ごせるようにサポートすることが可能です。
(参考文献:J Vet Intern Med. 2020 May;34(3):1062-1077.)