1.「喧嘩後の爪とぎ」は反撃準備ではなく『転位行動』
多頭飼いにおいて、同居猫に攻撃された猫が、イライラ顔で爪を研いでいる光景を見たことはないでしょうか。まるで反撃のために準備をしているようですが、実はこれは「転位行動」と呼ばれるものです。
転位行動とは、不安や恐怖、困惑などの気持ちを、まったく無関係の行動によって鎮めようとする行動のこと。野生の猫では、敵対する猫に遭遇して対応を迷っているときに、突然毛づくろいを始めるといった仕草が見られます。喧嘩中の爪とぎも、突発的なストレスを解消しようとした結果と考えられます。
他にも、ジャンプに失敗して脇を舐めたり、怒られたときにあくびをしたり、さまざまな転位行動が確認されています。ちなみに、猫だけでなく他の多くの哺乳類にも同じような行動が見られるそうです。
2.「留守中のいたずら」は嫌がらせではなく『冒険』
猫を留守番させている間、植木鉢を倒されたり、キッチンを荒らされたりしたことがある方も多いことでしょう。誇らしげな顔でイタズラを報告してこられると、嫌がらせなのではと思ってしまうかもしれません。しかし猫には「嫌がらせ」という感覚はありません。
まず考えられるのは、単に楽しんでいるというパターンです。留守番中は何をやっても怒られないので、今までやってみたかった遊びを試しているのでしょう。猫にとってはワクワクする冒険であり、飼い主さんを困らせようという意図はないと考えられます。
対して、不安やストレスでイタズラをするパターンもあります。留守番の時間が長くなった、新入り猫が来たなど…。「さみしいよ!」という愛猫からのSOSかもしれないため、イタズラが続くときは注意して見てあげましょう。
3.「飲水中の尻尾ユラユラ」は満足ではなく『警戒』
リラックスしているときに尻尾をユラユラ揺らす、というのは有名な猫の仕草です。しかし、尻尾をユラユラさせているからといって必ずリラックスしているというわけではありません。例えば、水を飲みながら耳をピクピク動かし、尻尾をゆっくり揺らしているのは警戒だと言われています。
水を飲んでいるときやご飯を食べているときは、猫にとって非常に無防備な状態です。背後から外敵が来て、ご飯を獲られてしまうかもしれません。警戒心の強い猫は、どんなときでも周囲への警戒を怠らないのです。
ちなみに、「ユラユラ」ではなく「バンバン」と床に打ち付けているのは、怒っているサイン。犬なら大喜びを表す仕草も、猫の場合は真逆の意味になってしまうのですね。
4.「なでなで中の耳ペタン」は警戒ではなく『リラックス』
猫が怒っているときに見せる仕草として、通称『イカ耳』と呼ばれるものもあります。これは、両耳を後ろにペターっとそらせるものです。苦手な相手と遭遇したときや、怖いことがあったときにこのような行動を示します。
しかし実は、リラックスしているときにも同じような仕草を見せるのです。それは例えば、飼い主さんに撫でられているとき。緊張して筋肉をこわばらせるのが怒りのサインですが、嬉しいときは「思わず緩んでしまった」といった状態です。
イカ耳のときの本音を知るには、表情を確認するのがおすすめ。警戒態勢のときは当然ながら鋭い目をして「シャー」と鳴いたりしますが、リラックスしているときは目が閉じて気持ちよさそうにしています。
まとめ
猫はとても賢い動物なので、同じような仕草でもまったく異なる気持ちが隠れていることがあります。しかしよく観察してみると、細やかな違いが分かるはず。今回ご紹介した事例以外にも、愛猫ならではの仕草もあるかもしれません。
猫の気持ちを読み取るコツは、パーツ単体ではなく全体の仕草を総合的に見ることです。何を伝えたいか分かるようになると、猫との暮らしも更にいいものになるのではないでしょうか。