『猫白血病ウイルス感染症(FelV)』症状や予防法など、知っておきたい4つのこと

『猫白血病ウイルス感染症(FelV)』症状や予防法など、知っておきたい4つのこと

新しく猫を迎え入れる際に「猫白血病ウイルス」について知っておくことは重要です。この記事では、この病気の感染経路や症状、検査、予防方法についてご紹介します。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

︎1.感染経路

母猫と子猫

猫白血病ウイルスは感染している猫から、感染していない猫へ感染する「水平感染」と、感染した母親から胎児へ感染する「垂直感染」の、いずれかで感染が成立します。

「水平感染」では、感染している猫の唾液、鼻水、便、尿、母乳に含まれる大量のウイルスが、猫同士の毛づくろいや喧嘩、トイレや食器の共有などで広がり、感染します。

「垂直感染」では、胎盤を通してウイルスが胎児に感染しますが、多くは流産や死産で亡くなってしまいます。生存できたとしても、ほぼ全ての子猫でウイルスが感染した状態で産まれてきます。

また、母乳を介して母猫から子猫にウイルスの感染が起こることもあります。

︎2.症状

聴診器を当てられる猫

感染後およそ2〜4週間に症状があらわれる「急性期」では、発熱、元気消失、リンパ節の腫れ、自血球減少症、血小板減少症、貧血などが約1週間〜数週間ほど続きます。

1歳以上の成猫では、急性期に免疫が働き、ウイルスを体内から排除できることも多いです。

しかし、子猫や免疫力が落ちている猫、老猫や病気の猫では、「急性期」にウイルスを体から排除しきれず、症状はなくなっても骨髄などの細胞内にウイルスが残ってしまうことがあり、これを「持続感染」と言います。

残念ながら「持続感染」になると、数ヵ月から数年は無症状の状態が続きますが、多くは3年以内に再び発症し、死亡してしまいます。

「持続感染」の状態では免疫不全も起こしやすく、普段なら感染しない病気や感染症に罹患しやすく、鼻炎や皮膚病、下痢、口内炎や歯肉炎などが治らず悪化することがあります。

また、「リンパ腫」や「白血病」などの腫瘍が発生しやすくなり、それによる貧血や発熱、出血傾向などの症状があらわれると、全身状態は一気に悪化してしまいます。

︎3.検査方法

血液検査

「猫白血病ウイルス」に感染しているかどうかは、動物病院で血液検査をすると分かります。

しかし、「陽性」と出るのは感染してから4〜6週間後以降なので、感染してすぐに検査をすると「陰性」と出てしまうことがあります。

症状があるのに、「陰性」と出てしまった場合には4週間後に再検査を行うのが望ましいです。

また、「持続感染」に移行していないかを確かめるには、2ヵ月後以降に再検査を行い、「陰性」であれば持続感染に移行せず、体内からウイルスを完全に排除できたと考えられます。

ただし持続感染期に入ると、骨髄などの細胞内に潜伏感染し血中にウイルスが排出されないことがあります。この場合、院内で行われる一般的な検査では結果が「偽陰性」となることもあるのです。

FeLV感染猫から出生した、または濃厚接触があったなど、偽陰性が疑われる場合は「PCR検査」による再検査も検討されます。

︎4.予防方法

注射される猫

猫白血病ウイルスを予防するために、まずは感染している猫と接触させないことが重要です。

不特定多数の猫と接触しない、完全屋内飼いが望ましいです。

また、新しく猫を迎え入れる場合には、すでに飼っている猫と対面させる前に検査が済んでいるかを確認しましょう。

検査がまだの場合、検査をして陰性を確認した4週間後に再び検査を行い、2回の陰性が確認できるまでは、対面させずに隔離するのが理想的です。

陽性だった場合には、感染していない猫と感染している猫を完全に隔離することが必要です。別々の部屋で飼育をし、脱走や食器の共有がないように、また食器洗いやトイレ掃除も非感染猫から行うよう十分注意しましょう。

そして、猫白血病ウイルスにはワクチンが存在します。今後、FeLV陽性猫を飼う予定がある家では、先住猫へのワクチン接種をおすすめします。

猫白血病ウイルスは3種混合ワクチンには含まれていないので、「4種」または「5種」のワクチンを接種するように注意しましょう。

︎まとめ

手を繋ぐ猫

猫白血病ウイルスは残念ながら特効薬がなく、感染が成立すると多くが3〜4年以内に亡くなってしまう、とても恐ろしい病気です。

感染をさせない為にも、正しい知識をつけて予防を徹底するようにしましょう。

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