猫は液体って、本当なの?
よく「猫は液体」といわれます。ドアの下や花瓶の中など、不可能なほど狭い隙間に潜り込むからです。では猫はどうやって「自分が入り込める空間か否か」を判断するのでしょうか。
生物学者のPéter Pongrácz氏が2024年9月17日に「iScience」で発表した実験結果によると「猫は幅の狭い隙間は苦もなく移動するものの、極端に背の低い穴に近づくと通り抜けるのをためらう」ことがわかりました。
つまり、猫は自分の体の大きさを正確に認識し、頭に描いているらしいのです。
ハンガリーのブダペストにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学で研究する彼は、2019年に犬で実験した結果、「犬は狭い隙間を走り抜ける前に、速度を落としてためらう。意思決定に際して自分の体の大きさを考えていることがわかる」としています。
猫の自宅を訪ねて実験
では猫はどうでしょうか。実は猫は犬よりも実験を行うのが困難です。慣れた環境を好む猫は研究室では大きなストレスを受けてしまい、よいデータが得られないからです。そこでPongrácz氏は同僚とともに「出前実験」をすることにしました。
ブダペスト市内の飼い猫の自宅29軒を訪ね、それぞれの家でドア枠に大きな段ボール板を2つ取り付けました。ひとつには「高さは同じで幅が徐々に小さくなる5つの穴」があけてあり、もうひとつには「幅が同じで高さが変化する5つの穴」が設けられています。
飼い主が片側に、猫と実験者が反対側に立ち、猫が穴を通り抜ける様子を撮影しました。
といっても、猫にこちらの思うような行動をさせるのは大変なことです。うまく穴を潜り抜けたあと飼い主は猫を捕まえて元の位置に戻し、ふたたび実験を始めなければならないのですが、触られるのが嫌いな猫がいたり、断固として逃げ回ったりする猫もいて、難しい実験になりました。
結局、38匹のうちうまく実験に参加できたのは、30匹だけでした。
愉快な飼い主の反応
記録を分析したところ、「高さが最小の穴」に対しては22匹の猫が通り抜けるのをためらいました。一方、「幅が最小の穴」の前で立ち止まった猫は、わずか8匹でした。
猫は慣れた自宅にいて、段ボールの向こう側に危険がないことを知っているため、穴の前で立ち止まるのは未知のものへの警戒ではなく「自分の体の大きさを正確に認識している」ことを示すものと考えられます。
ちなみにPongrácz氏は「この実験で一番おもしろかったのは、飼い主の反応でした」と話しています。というのも「うちの猫は天才だ」と思っている飼い主ほど、愛猫が実験に苦戦するのを苦々しく見ていたそうです。
逆に「うちの猫はおバカさんだ」と感じている飼い主が、見事に実験をこなす愛猫を見てびっくりする例もあったそうです。
さて、あなたの猫はどこまで狭い空間に入り込めますか?