猫の突然死の原因になる『心筋症』3つのタイプ別に解説 予防法はある?

猫の突然死の原因になる『心筋症』3つのタイプ別に解説 予防法はある?

猫の飼い主として、愛猫の健康を守るために知っておきたい重要な病気があります。それが「心筋症」です。心筋症は猫によく見られる病気で、突然死の原因にもなります。そして愛猫と「突然の別れ」をしないためにも、飼い主はまずこの病気について知ることが大切です。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫の「心筋症」とは?

人と猫の手でつくったハート

猫の心筋症は心臓の筋肉(心筋)に異常が生じる病気で、突然死の原因のひとつです。

徐々に心臓の機能が低下していくため、初期段階では気づかないケースが珍しくありません。

明確な原因は不明ですが、猫の年齢に関係なく発症するとされ、どんな猫でも起こり得る怖い病気です。

そして心筋症には主に「肥大型心筋症」「拘束型心筋症」「拡張型心筋症」の3つのタイプがあり、それぞれに特徴や治療方法が異なります。

猫の『心筋症』3つのタイプ別に解説

ハートを抱える手

1.肥大型心筋症

肥大心筋症(HCM)は心筋症のなかでも一般的で、なんらかの原因で壁が厚くなり心臓が正常に機能できなくなる病気です。

どの年齢でも発症する可能性があり、見た目上健康な猫でも約15%が肥大型心筋症であるという報告があります。

そしてこの病気のやっかいな点は、初期段階では症状がほとんどあらわれないことです。

多くの猫は病気が進行するまで元気でいることが多く、呼吸困難や活動量の低下、食欲不振のような症状があらわれた段階では、病状がかなり進んでいるケースが少なくありません。

肥大型心筋症に気づかずに病気が進行すると、やがて心臓が十分に血液を送り出せなくなって、開口呼吸をしたり動かなくなったり、ほかには突然死を招く恐れもあります。

予防や完治をすることが難しいため、早期発見・早期治療が非常に大切です。

2.拡張型心筋症

猫の拡張型心筋症(DCM)は、心臓の筋肉が薄くなり「収縮する力」が弱くなってしまう病気です。

心臓は体中に血液を送るポンプのような働きをしていますが、収縮する力が弱くなると、全身に十分な酸素や栄養が行き届けられなくなってしまいます。

すると、呼吸困難・食欲不振・少し動いただけで疲れてしまう・いつも通りの遊びをしないといった症状がみられるように…。

さらに進行すると、肺水腫・胸水・腹水とった非常に危険な状態を招く恐れもあります。

拡張型心筋症の原因は主にタウリンの不足といわれていますが、現在のキャットフードには十分にタウリンが含まれているため、昔と比較すると発症する猫の数は減っているようです。

ただしリスクがゼロになっているわけでもなく、残念ながら不治の病とされ、根本的な治療法はまだ確立されていません。

そのため予防としてタウリンを適切な量摂取したり、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診するといった対策が大切です。

3.拘束型心筋症

猫の拘束型心筋症は心臓の筋肉が硬くなり、心臓がうまく収縮できなくなる病気です。

ほかの心筋症と同じように初期症状が分かりにくく、呼吸困難・むくみ・後ろ足のまひなどの症状がみられた時には、すでに進行してしまっているケースが珍しくありません。

拘束型心筋症の原因も、まだ完全には解明されていませんが、感染症との関連性が指摘されています。

ただはっきりとした原因は分かっておらず、多くの場合特発性(原因不明)と診断されます。

治療法としては利尿剤や血管拡張剤の投与、胸水抜去など、心臓への負担を減らすための治療が中心となり、根本的な治療法は残念ながらまだ確立されていません。

拘束型心筋症は、他の種類の心筋症に比べて比較的珍しい反面、一度発症してしまうと進行が早く、重症化しやすい病気です。

明確な予防法はありませんが、愛猫の健康を守るためにも定期的な健康診断を受け、少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。

まとめ

ハートを抱える猫

猫の心筋症は、突然死の原因となる深刻な病気です。種類によっては猫によく見られるうえに、明確な予防法や治療法が確立されていないため、非常に厄介な病気と言えるでしょう。

しかし早期発見と適切な管理によって、猫のQOLを守ることが可能となります。

そのため飼い主は猫の心筋症に対する理解を深め、適切な対応をできるように日頃から愛猫の健康状態に注意を払いましょう。

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