1.動きがオモシロイ!
猫と人間の感覚はいろいろ違いがありますが、視覚もそのひとつです。猫の視力は0.1~0.2ぐらいで、解像度も不鮮明で、止まっているものも、ぼんやりとした映像にしか見えません。
ただし、動体視力は相当に優れています。端的に言うと、人間の約4倍です。たとえば、ネズミの敏捷な動きでさえ、猫にはコマ送りの映像のように見えています。瞬時に対象をとらえる能力は、狩りの現場では欠かせません。
実は、猫がテレビを興味深げに眺めるのも、高度な動体視力と関係しています。改めて説明すると、テレビの映像は、1秒間に約30枚もの静止画をつなぎ合わせたものです。
人間が認識できるのは、1秒間でせいぜい10枚程度なので、たとえ静止画の連続であっても、切れ目のないスムーズな映像として見えます。
一方で、人間の約4倍の動体視力を誇る猫は、1秒間で約40枚もの静止画を認識できます。そのため、人間にとってはなめらかな映像でも、猫の目には、非常にぎこちなく不自然な動きに映ります。
あくまで推測に過ぎませんが、映像の切れ目がヘンに目立ち、スローモーションのパラパラ漫画を見ているような感覚に近いかもしれません。
いくら飼い主さんが恋愛ドラマの主人公に夢中でも、愛猫からすれば、内容そっちのけで、映像間にあるチラチラのほうが気になってしょうがないわけです。
2.ハンターとしての血が騒ぐ!
根っからのハンターである猫は、本来、動くものが大好きです。さらに、好奇心旺盛な一面もあります。
テレビ画面上に次から次へと映し出される映像は、動きや展開もダイナミックで、音も刺激的です。しかも、いつもの窓辺の風景とは明らかに違います。猫が「ナンだナンだ?」と不思議に感じるのも当然でしょう。
特に熱心線を送りがちなのは、天気予報士さんの指し棒です。たとえば、チベット高気圧から太平洋高気圧、偏西風、さらにエルニーニョ現象へと、猛暑のメカニズムを説明する指し棒に向かって、猫パンチを連打します。まるで天気予報士さんに遠隔で遊んでもらっているみたいです。
変化に富んだ動きを繰り返すテレビ映像は、ハンター気質の強い子にとっては、格好の遊び相手なのかもしれません。
3.同じ仲間の声に興味津々!
視力は弱いながら、獲物を狩るため、猫の聴覚は非常に発達しています。人間の耳では感知できない音も聞き分けることが可能です。テレビからあふれてくる音もまた、猫の好奇心を刺激してやまないのでしょう。
猫は、天気予報だけでなく、動物やペットのテレビ番組もお気に入りです。さえずる鳥や遠吠えするオオカミ、水面をジャンプするイルカ、のっそりと歩く象、さらに獲物を追いかけるチーターなど、テレビではさまざまな動物たちが躍動します。
その中でも、とりわけ気になるのが、猫の番組です。画面上の猫を同じ仲間として認識できているかどうかはわかりません。ただ、他の猫が登場すると、テレビに見入ってしまう猫も多いはずです。
その場合、「縄張りを荒らされる!」という危機感よりも、「知らない猫だぞ!」と驚き、声の主がどこにいるのか、画面の向こうを注視している可能性があります。
繊細な聴覚を有する猫ですが、一方で、興味のない音は、雑音としてシャットアウトする離れ業も持ち合わせています。日々、いろいろとノイズに悩まされがちな人にとっては、うらやましい能力にちがいありません。
まとめ
私たちにとってテレビは当たり前の家電製品ですが、猫からすれば、光と音のあふれる不思議な物体です。
今回の記事では、テレビファン(?)な猫の心理について、3つの可能性を探りました。もちろん、本当のところ、どう認識しているかは、はっきり特定できません。
ただ、主に視覚の面から言っても、人間と違う感覚でとらえていることだけは、どうも間違いないようです。